化学の基礎 II(G) (旧カリキュラム)

21世紀教育 (基礎教育科目),
対象: 理工学部物質創成化学科の 2 年生以上 (必修, 旧カリキュラム), 他の学部・学科の学生等も履修可 (修得した単位の扱いについては学務係に聞いて下さい)
担当: 宮本量 (理工学研究科, 理工部物質創成化学科)
後期, 火曜日, 9.10 時限

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もくじ

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授業の概要

この講義は, 物理化学分野の入門として開講されます. 旧カリキュラムの理工学部物質創成化学科の 2 年生以上の学生を対象とする必修科目です. しかしもちろん, 他の学部・学科の学生の受講を妨げるものではありません.

物理化学は, 化学の原理・法則・理論を記述する分野であり, 個別の分子というミクロな視点から物質を見る「量子化学」と, 原子や分子の集団としての物質というマクロな視点を持つ「化学熱力学」の, 大きな二つの柱があります.

この講義では, 物理化学の二本柱である量子化学と化学熱力学の概要を学びます. 分子を構成する原子の原子核と電子の振る舞いを, ミクロな視点から記述する 量子力学を基盤とした量子化学により, 物質を構成している分子の構造や性質を, 定性的にも定量的にも理論的に精密に議論することが可能になります. また主にマクロな物質によるエネルギー (熱) の授受という視点から 原子や分子の集団としての振る舞いを記述する熱力学を基盤にした化学熱力学により, 物質を構成している個々の粒子 (原子や分子) の性質を離れて, 化学反応や化学平衡といった一般的な化学的現象の背後に潜む法則を 理解することができます.

本講義は, 専門科目の「構造物理化学 I, II」, 「反応物理化学 I, II」, 「構造物理化学演習」, 「反応物理化学演習」へ直接つながります. さらに, 物理化学は, 「有機化学」「無機化学」「分析化学」などの, 化学の各分野を 深く理解するための基盤を成すものであることは, いくら強調しても, しすぎることはないでしょう.

物理化学分野に限らず, 自然科学一般を理解し, 精密に議論を進めるためには, ある程度の数学的な素養および物理学的な素養が必要です. 高等学校で習得しているレベルを想定してはいますが, 必要な事項や重要な事項については適宜解説されます. しかし, 21 世紀教育科目の「数学の基礎」や「物理学の基礎」を履修し, その知識を使えるようにしておくなど, 自らの努力も欠かせません.

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授業の目的・目標

本講義の具体的な到達目標は, 以下の通りです.

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準備学習 (予習・復習) 等の内容

予習: 各回の講義時間の前に, あらかじめ教科書の全体に目を通し, 「物理化学」の大まかな全体像を把握する (思い出す). 始めは漠然としていても, 講義を受けつつ 15 回繰り返せば, 自分の頭の中に地図が構築されるはず.

復習: 講義で取り上げられたトピックが, 全体像のどこに位置し, 他のトピックとの関係がどうなっているかを, 自分の中の地図にとらえ直す. 教科書の例題および講義で示された数式の展開, 講義で省略された数式の展開を, 自分の手でやってみる (答え等を写すのではない). 例題や章末問題を解いてみる (解答を写すのではない).

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教科書・参考書

教科書は次のものです. 物質創成化学科の 2 年生以上の専門課程では, より詳細な物理化学の教科書として を使用していますので, これを参考文献とします. また下記のアトキンスの本は, カラーで見やすいし一冊にまとまって手頃だし, ということで 推薦しておきます. 同様のレベルというよりも分野によってはより詳しく記載された教科書が最近出版されました. そういう意味では少し癖があると言えるが, これも推薦してみます.

念のため, ``物理化学'' と書籍の題目に明示されていない ``化学 (基礎化学, 一般化学, 物質科学 などの書名のこともある)'' でも, 内容を見れば明らかに物理化学に重きをおいた作りになっているモノも多いです. 例えば 化学の基礎II(E) (および II(A)) のテキストであった

は, 全 10 章のうちの 3-8 章と全体の 6 割が物理化学的内容になっています。

以下に, 今回の教科書とほぼ同レベル(?)のものから少し進んだもの (といっても, 専門課程の教科書レベルまでですが) を, 参考書として示します. 特にどれを推薦するというわけではありませんが, 個人の嗜好に応じて併読すると, 理解が深まるかもしれません.

これらの本を見ればわかるように, 物理化学は大きく分けて「量子化学」と「化学熱力学」の二つの分野があります。 それぞれの分野に内容をしぼった参考書も多数あります. これらのうちから入門的なレベルのものを参照してもよいでしょう. (特に区別せずにリストアップします. どちらの分野かは, 書名または中身を見てご判断ください.) また, 物理化学でよく使われる数学的事項を解説した物理数学の参考書として, 以下の物が定番的に勧められているようです. 前述の マッカーリ&サイモン あるいは アトキンス の教科書には, 数学や物理学の初歩的な内容をまとめた章もあり, 参考になります.
また以下は上述の マッカーリ&サイモン の マッカーリ による数学の本です. 最後に, 上記とはまったく独立に, 少し異なる系統・毛色の参考書を示しておきます. 物理化学を学習する前に, その雰囲気を感じてみたい場合には, こんなものもあります.

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日程と内容(予定)

下記の日程と内容は昨年度 (2015 年度) のものに沿っていますが, 今年度は少し変えてみようかなぁと思案中 (20160404 記)

本講義は, 物理化学の全体像を概観することを主たる目的としている. 細かいことにはコダワラズに (できるのか?), とりあえず全体を俯瞰したい. そのため, 個別の内容の詳細まで理解することは, 現段階では各個人の 興味と意欲にゆだねられていると言える. したがって各回の講義において, 以下に示す各項目の説明が不充分で あったとしても, 続きを次回に持ち越すことは, 原則として行わない. 各自が自宅学習で補うなどしてほしい. (予習・復習の項も参照のこと)

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評価について

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質問について

質問は, 随時受け付けます. オフィスアワーを活用しても良いですね. (まあ, 当たり前なんですけど。)

ということで,

質問すること, 疑問を持つことは, それ自体で価値があります.
大学以上のレベルでは, 問うことと答えることとは非常に近い関係にあると知りましょう.

すなわち,

何が分からないかが分かれば, ほとんど解けたと同じ.

みなさんはこれまでの初等中等教育において, 与えられた問いに正しく答えることが 求められてきたといっても過言ではないでしょう. しかし, 研究の先端や実社会で出会うであろう問題は, あらかじめ解答が用意されて いるものではありません. そもそも問題点が何であるかすら明確でない問題を解決しなければいけない場合も 多くあります. そこで正しく問うことが出来れば, 答えはそのすぐ先にありますが, 問い方が悪いとなかなか答えにたどり着けないばかりか, 誤ったゴールに到達してしまうかもしれません. また良い問いとは, 単にその答えが得られるだけでなく, その問いをきっかけにして 新たな視野が開けたり, 新たなより深い問いを生んだりするものです. そうであるならば, 問いに答えるということも, 単に暗記しておいた既存の知識を 思い出すコトではありませんし, ましてや誰かが既に解いている答えを探すことでもありません. それで終わらせてはいけません. 問いと答えとの間を絶えず行き来し, 思索を深めていくような, そういう知の営みを身につけることこそが, 大学で勉強することの価値だと思います.

そこで本講義では, 質問を発する訓練をしましょう. 毎回の講義の出欠調べを兼ねて, 紙片に質問を記入して講義時間の おわりに提出してください (質問カード; 紙片は, A4 の 1/8 が適当です (A7 相当)). 受け取った質問は, プリントにまとめて次回の講義時に配布するとともに, すべてサポート Web ページ (ここ) に掲載します. 出席とカウントされているかどうかの確認だけでなく, 他人の質問を見て, 良い質問のしかたを考えてみましょう.

という訳ですから, 質問の内容は評価の対象です.

一応, 質問は講義内容に関するもの, としておきます. しかし, それに従わない権利は常にあります (もちろんその結果は質問者が負うわけだが). テストで白紙答案を提出する権利とか, 愚行権とも言うが.

以下の日付をクリックすると, その回の「質問とコメント」に飛びます.

コメントは, 期待されている答えとは, おそらく異なるでしょう. そのために, 質問者(学生)をバカにしていると感じる人も, 一定数いることが予想されます. 最初から質問者をバカにするつもりはないことを, ここで強調しておきます. しかしむしろ積極的に, あえて直接の答えではない回答を コメントとしてつけています. つまりそれは, 安直に与えられた物を暗記して済ませるのではなく, 質問についてより深く考えてみることや, 思考を深めたり知識を広げたりするための方向性を, コメントとして示唆するようにしているということです. そうすることによって, 質問をきっかけとして学生自身に考えてもらい, 知識や学問の体系に関する新たな視点が開けてくることを期待します. 繰り返しますが, 安易に解答 (らしきもの) を暗記することは大学での勉強ではないと. 毎回質問を書いてもらうことは, そういった豆知識を覚えてもらうためではありません.

最近は受講学生数が多いので, 配布プリントではコメントの文字数を節約し, また上下の行のすき間を活用する等, 密に充填されている傾向にあります. ぶっきらぼうな回答もまた, 反感を買う要素ではあります. しかし見掛けに騙されずに, 本質を読み取る能力を養いましょう :-)

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読書感想文 (仮称) について

学生のみなさんには, 化学/科学に関する興味を養ってもらいたいと思います.

科学・技術が十分に発達してしまった現代では, まるで魔法のようなことが 当り前のようにできてしまいます. しかしそれを当り前と思ってしまい, ブラックボックスをブラックボックスのまま 鵜呑みにして済ませてしまうという態度は, ある種の思考停止であり, 高等教育を受けよう (大学で勉強しよう) という志とは相容れない態度と 言えるのではないでしょうか. そして日常的にも, 拙速な「結果」を求めるあまり, 「メカニズムとプロセスに 対する関心」を失ってしまっているのではないでしょうか. 自然のメカニズムとプロセスを解明することが, 本来の自然科学の在りよう だったと思われます. 大学で勉強し, その後に社会に出て活躍することを欲する学生のみなさんには, そしてそのことが期待されているみなさんには, ぜひとも「メカニズムとプロセスに 対する関心」を育んでいただきたいと思います.

そこでこの講義では, 読書感想文の課題を課します; 物質科学・物理学・化学など (関連分野や派生事項を含む) に関する 一般向け解説・啓蒙書を一冊以上読み, その読書感想・評論・調査報告などを まとめてレポートとして提出してください. レポートは A4 版の用紙 2 枚以上の分量であることとします. 「おもしろかった」などというヒトコトしか書かないようなものはダメです. この課題の提出期限は, 11月 22日 (火) の講義時間終了時 (17:30 JST) とします.

対象とする書籍は例をあげると, 講談社のブルーバックス・岩波新書・岩波文庫・ 岩波同時代ライブラリ・中公新書などの物理・化学・科学に関するものや, 科学者の伝記的なものが考えられます. また単行本でももちろん良くて, たとえば、``ハインズ博士「超科学」をきる''とか, みすず書房のハイゼンベルク・シュレディンガー・プリゴジン・朝永らの著作など でも結構です.

しかし残念ながら, 避けることが望ましい書籍をあげざるをえません. それはまず, 見開き二ページないし数ページである一つの事柄を説明したものの 集積になっている, いわゆる「豆知識本」です. 具体的な書名をあげて 著者・編者には申し訳ありませんが, 「図解雑学 〜」に類するものです. 系統的に専門的な学問の体系を身につけようという大学生に, ふさわしい書物とは思えません. また内容のレベルについても, 小中学生レベルの本では, ハッキリ言って 恥ずかしいですよ. みなさんは大学生なのですから. さらにオカルト本・ニセ科学本を, そうとはわからずに本物の科学と 信じてしまった論評は, 困りものです。論理的科学的思考力が疑われます. しかし取り上げ方によっては, これらの本でもいいかもしれません. あくまでも内容で評価しますから.

残念ながらもうひとつ, 重要な注意をする必要があります. それは **二重投稿は禁止** あるいは **自己レポの再利用は禁止** ということです. すなわち, 同学期の別の講義あるいは以前の学期で受講した講義で, 自分がレポートとして提出した読書感想文(仮)でとりあげた書籍と同じものを, ここで再びとりあげるのは禁止します. その理由は, コピペ はダメ[*注]ということと, 学生さんにはなるべく多くの書籍を読んでほしいということです. もちろん, 自分が以前に読んだ本をくりかし読むことは 全然悪いことではありません. 自主的にいくらでも読み返してください. しかしこの課題では, その都度, 別の本を読んでくださいということです.

[*注] 過去の書籍リストは, この Web 上にあります. 本文まですっかりコピペしたのか (過去に事例あり(!)), それとも同一書籍で別文章なのかの区別はつけられませんので, 本課題の趣旨を考慮して, 同一学生の同一書籍の複数回使用を禁止とします.

なお文芸評論の手法に関しては,

「文学部唯野教授」, 筒井康隆, 岩波同時代ライブラリー
が, 評論の (感覚的評論から構造主義までの) 歴史的発展も踏まえていて面白い。 また論文やレポートの書き方については, をはじめとして多くのものが出ているので参考にするとよいでしょう。

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期末評価について

レポートまたは試験. どうするかは, いちおう未定です (笑).

下記のポリシーにしたがいます.

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最後に, または始めに

最後に, 「*大学で* 勉強するとは, どういうことなのでしょうか ?」と, 問いかけておきます.

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rmiya@hirosaki-u.ac.jp