化学の基礎 II(G) (20161115) M: 以下は宮本のコメント
15s2005: 
分散力の教科書の説明についてなのですが, 電子の運動の時間的にみるという部分が, 電子が粒のようなイメージになってしまっており, よく理解できなかったのですが, 定常状態の軌道を最初に考えてから, 電子を入れているのに, このような考え方になってしまうのはどうしてなのでしょうか. M: やはり, 古典的な粒子のイメージが考えやすいからでしょう. 実際には電子は粒子ではなく, また軌跡をもった運動をしていませんので, 時間的な電子の位置の偏りによる説明は, 少しおかしい気もします. しかし, アトキンス の教科書では $ \DS 10^{-16} ~$s 程度の瞬間的な電子密度分布の変化を想定しているようです.

15s3006: 
共有結合において, なぜ無機化合物よりも有機化合物の方が結合距離が短くなるのか. M: 無機化合物や有機化合物とは, ずいぶんと大雑把なくくりですね. 具体的にはどういう化合物のどういう元素間の結合のことでしょうか?

15s3014: 
片方の分子の $ \delta+$ ともう片方の $ \delta+$, 片方の分子の $ \delta-$ ともう片方の $ \delta-$ による反発は考慮されていますか. M: そんなの当たり前では? しかしその大きさを比べると, どうだろうか?

15s3022: 
アルコールよりチオールの方が酸性度が高いらしいのですが, 電気陰性度は S より O の方が高くなっています. それならチオールよりアルコールの方が分極しやすく, 酸性度が高くなる, といったようにはならないのでしょうか. M: ``酸性度'' や ``分極のしやすさ'' は, 電気陰性度だけで決まるのもなのか?

15s3028: 
分子において共有結合につかわれた電子は, 結合前と比べてそれの存在確率は変わるのか. また, N$ _2$ において $ \sigma$ 結合に使われた電子と $ \pi$ 結合に使われた電子が入れ替わることは可能か. M: 結合に使われた電子は, 全空間のどこかには必ずその電子は存在するので, 存在確率は 1 では? 結合に使われたからといって, 消費されて減るわけではない. // 20161108 の 15s3028 参照. って, あなたのことだ. あの場合この場合と, 全ての場合について, いちいち他人に教えてもらってそれを暗記するという勉強方法は, いいかげんにやめたほうがいい.

15s3030: 
金属結合を考えるとき, 反結合性軌道と結合性軌道のエネルギー差が A$ _2$ のときより A$ _3$ の方が小さくなっているようにみえたが, 電子の反発で大きくなるのではないのか. M: 電子間の反発は, クーロンの法則で表される. 電子の電荷は変わらないので, 反発は同じ. // ただし電子が受ける全体のポテンシャルは変化するし, 電子の数も増えるので, 全電子エネルギーは増加する.

15s3033+: 
「混成は一般に, 同一原子内でのエネルギーが近い AO どうしで起こりやすい」 (教科書 p.49) とありますが, 混成が起こる明確な条件はわかっていないのですか. M: 混成は, 起こる・起こらない の二択ではなく, 程度の問題. 例えば $ s$$ p$ の混成であれば, $ \DS \psi = c_1 \phi_s + c_2 \phi_p$ の係数 $ \DS c_1$, $ \DS c_2$ の絶対値が 0-1 の範囲で適切に選ばれるだけのこと.

15s3037: 
分子量が大きいほど 分子間力が大きくなるのは 陽子と電子それぞれの電荷が大きくなるからと考えていいのですか. M: 正気ですか? 陽子と電子の電荷は, それぞれ $ +e$$ -e$ に決まってるでしょ??

15s3038+: 
バンドを考える際に, 原子の結合を次々と増やしていましたが, 奇数個結合した際に, 真ん中が出てきてしまうと思うのですが, それは結合性になるのか, 反結合性軌道になるのでしょうか? M: 多原子分子の分子軌道の場合, 最低エネルギーの軌道以外は, 様々な場所に節ができる. このような分子全体に広がった分子軌道を, 単純に結合性または反結合性に分類できるだろうか?

15s3040: 
極端に 2 つの原子のエネルギー差があるものはイオン結合だと言っていました. つまり 1 族と 17 族ではエネルギー差が大きいが, 同じ族, 例えば同じ 1 族どうしでは電子のエネルギー差はあまりないということですか? M: 既習の知識, 原子のイオン化ポテンシャルの周期的な変化, 1 族どうし (同族どうし) の化合物, 1 族と 17 族とでできる化合物, etc. を使って自分で考えてみればいいのでは??

15s3041: 
金属は, 無限に結合を作りますが, 非金属は分子にしかならないのはなぜでしょうか? (1 種類の原子の話です) M: 一言でいえばバンド構造のせいだと. 炭素でもダイヤモンドではなくてグラファイトなら, 電気伝導性があって, 金属に近いのでは?

15s3042: 
どうして分子間の引力は $ r$ の 6 乗に反比例し, 反発力は $ r$ の 12 乗に反比例していると言えるのですか. M: 双極子-双極子相互作用を考える. 参考書も参照.

15s3045: 
結合性軌道で, なぜ $ \DS 2p_x$, $ \DS 2p_y$ のエネルギーが $ \DS 2p_z$ のエネルギーよりも高くなるのですか? 同じ $ p$ 軌道だから等しくならないのですか? M: 分子の中は自由空間ではない. 分子軸方向と分子軸に直行する方向とでは, 環境が異なる. したがってそれらの方向に広がっている電子のエネルギーも異なる.

15s3046: 
等核二原子分子の C$ _2$ と O$ _2$ を比べて結合エネルギーが C$ _2$ の方が高いのはなぜか? M: どちらも結合次数が 2 で, 結合エネルギーはほぼ同じだと思うが? // 単結合や三重結合のものとは明らかに異なる.

15s3047: 
原子と原子の結合よりファンデルワールス力の方が強いということはあるのでしょうか. M: 概略の値は, 表 4.6 のようだと思われますが.

14s3008: 
瞬間双極子の考え方ですが, この考え方だと引力だけでなく反発力が働くこともあるのではないでしょうか? M: 誘起双極子は, 必ず引力的になる.

14s3021: 
分子オービタルにおいて, $ \DS \sigma_g$ は結合性, $ \DS \sigma_u$ は反結合性の分子オービタルを示しますが, $ \pi$ オービタルにおいて $ \DS \pi_g$ が反結合性, $ \DS \pi_u$ が結合性の分子オービタルを示します. なぜ $ \sigma$ 分子オービタルと $ \pi$ 分子オービタルで u と g の示す意味が違うのでしょうか? M: g と u はそれぞれ gerade, ungerade のことで, 反転対称に対しての偶奇性 (パリティ) を表していることは, いつも同じですが?

14s3030: 
結合の双極子モーメントの値を利用し, 結合のイオン性の割合を見積り, その値は何かに利用されますか? 何を求めるのに必要とされる値ですか. M: 原子間の結合の性質を理解するのに役に立つ.

14s3040: 
結合性軌道で共有結合, イオン結合, 金属結合を説明することができ, 似たようなものとしてみることができたが, 配位結合だとどうなるのでしょうか? 結合性軌道では, 説明はできないのでしょうか? M: 本気ですか? アンモニウムイオンの 4 つの N-H 結合に, 互いに差があるか?

12s3029: 
電子が入った軌道のうち, 一番上の軌道に入った電子が同じ向きに並んでいると常磁性なのはなぜですか? M: 物質の磁性は, 電子のスピン角運動量による磁気モーメントに由来する. 逆向きの磁気モーメントがペアになれば, 実効的に磁気モーメントが打ち消される.



rmiya, 2017-01-16