化学の基礎 II(G) (20161018)
M: 以下は宮本のコメント
- 15s2005:
,
において
になることは,
が連続なので,
が無限にならないため,
であるという方がより正確だと思います.
が不連続だと, 不連続点において
は無限大となり
は有限になる可能性があります. M: 質問文が分かりにくい. 私が講義で行った運動エネルギーに対応する項
を無視してポテンシャルエネルギーに対応する項
だけを取り上げたような説明に対する補足ですね. しかし ``
'' としてしまっては, シュレーディンガー方程式
の左辺が
であるとのことなので, 困ってしまいます. ここでのハミルトン演算子が
以外の適当な波導関数に作用すると
になるということは, そうなのですが. // また後半の ``
が不連続だと〜'' 以降の記述については, 数学的には正しいのかもしれませんが, 波動関数
は連続であることが要請されているので, 考える必要はないと思われます。
- 15s3006:
- 波動関数の 2 乗が粒子の存在確率密度を表す, というボルンの解釈の妥当性はどのように示されますか. M: 波動関数は一般には複素関数なので, その関数の値に物理的意味を持たせることは困難です (
実空間の物質の物理量は実数であり, 虚数部を持つ複素数ではないため).
波動関数が粒子の波としての性質を示すならば, 古典的な波動との類似性も考慮した方が良いと考えられます. 古典的な波について, その ``強度'' は振幅ではなくて振幅の二乗です.
これらのことから, 波動関数の絶対値の二乗は, 粒子の何らかの意味での ``強度'' を表すものと考えるのがよさそうです.
- 15s3007:
- 量子論の世界では, エネルギーは整数
によって番号づけられた, とびとびの値しか許されないのは連続した値をとることができなくなるからなのか? M: 意味不明. 同義反復では理由の説明にならないと思うが?
- 15s3014:
- ハミルトン演算子は巨大な分子にも適用できますか? 教科書には広く適用できるとありますが複雑なものになる印象があるのです. M: もしも適用できる最大の大きさの分子があって, その官能基がほんの少しだけ大きなものに置換されると とたんに適用できなくなるとしたら, それは合理的だろうか? // 巨大な分子についてハミルトン演算子が複雑なものになるとイケナイのでしょうか?
- 15s3022:
- 「物理的に意味がある」ものとは どのようなものですか? M: 物理学は現実の世界を記述するものです. 机上の空論や虚構の世界ではありません.
- 15s3028:
-
が時間に依存している場合にも 同様にシュレーディンガー方程式は解けるのか. M: それが必要ならば, 解けばいいのでは? 解かなければ必要な情報が得られないでしょ?
- 15s3030:
- 量子論の世界では, エネルギーはとびとびの値しか許されないが, 波動関数は連続している必要がある. なぜシュレーディンガー方程式は成り立つのか. M: 成り立つような式を作ったから. 成り立たない式を作ったら, それでは自然を記述できない.
- 15s3033:
- 時間に依存するシュレーディンガー方程式の右辺には系のエネルギーが表わされず, 時間に依存しない方では表されるのはなぜですか. M: 変数分離により前者から後者を導出すればわかる. マッカーリ &サイモン の教科書 p.136 や参考書を参照
- 15s3037*:
- シュレーディンガー方程式から電子のエネルギーが求められるが, これは不確定性原理から正確な値ではないのか. M: 時間に依存しないシュレーディンガー方程式の解としてエネルギーを得ている. すなわち何時の時点の系のエネルギーかは完全に不確かである. これを不確定性原理の式に対応させると,
なので
でもよいのではないかという感じ.
- 15s3038:
- 運動方程式にしろ, シュレーディンガー方程式にしろ, 前提なしに式ができたというのに それが一般的に受け入れられたことには理由があったのでしょうか? M: もちろん. 結果が現実の世界を非常によく記述している.
- 15s3040:
- 一価で連続で有限でなければならないということでしたが, 量子数
は整数であり, とびとびの値になり矛盾が生じます. これはよいのでしょうか? M: 誤解の予感. ある状態を表す波動関数は 一価・有限・連続 です. 一方, 量子数
は異なる状態を区別するものです.
- 15s3041:
- フントの規則はどのようにして発見されたのですか? M: 本人に聞けばいいのでは
:-p
- 15s3042:
- 私たちが勉強してきた 2 回微分したら自分自身の定数倍となる関数には指数関数と三角関数がありますが, 他にも当てはまる関数はありますか. M: 双曲線関数はすぐに思いつきます. 他にもあるか, 調べてわかったら教えてくださいネ
- 15s3045:
- 今日の講義で箱の中の電子を考えるときに, 正の領域で
となるのが分かりません. なぜですか? M: どうして, その場で質問しないのでしょうか? // 講義で説明したのに伝わっていなくて残念. // ポテンシャルエネルギーは, 通常は差だけが意味を持つので任意のところを原点にとることができる. そこで簡単のために箱の中で
とした (自動的に zero になるのではなく, 出題者または解答者が zero と置いた). 変数
は粒子の位置を表すものであり, ポテンシャルエネルギーを表していない.
- 15s3046:
- なぜ波動関数の 2 乗
が粒子を見いだす確率密度であると定義できるか. M: 定義するだけなら, 自分勝手にどんなものでもいつでもできる. 矛盾する定義や不合理な定義すら可能 (ただしそこから意味のあるものは生じないが). 15s3006 参照
- 14s3008:
- 波動関数の 2 乗は電子の存在確率を表しますが, 古典力学では波の式の 2 乗は波の強度を表すと教科書に書かれてました. 電子の存在確率と波の強度は同じようなものなのでしょうか? M: 対応させて考えるということでしょう. // ``粒子の強度が大きい'' を日常語的にムリヤリ解釈すると, そこに衝突する粒子の勢い (運動量) が大きいような印象ですが, これは誤解を誘います. 不確定性原理により, 位置を正確に指定すればするほど, その地点での運動量はあいまいになり, 勢いが強いのか弱いのかが分からなくなってしまいます.
- 14s3021:
- シュレーディンガー方程式を解いて得られた水素原子の波動関数は正確に動径分布関数を示すことができますが, 多電子原子ではシュレーディンガー方程式を正確に解くことができないため, この場合多電子原子の動径分布関数を示すことができるのでしょうか? M: もちろん何らかの動径分布関数を考えてエネルギーの計算などが行われているわけですから, マッカーリ &サイモン の教科書の p.316 の表 8.3 のような計算結果が得られているわけです. // 具体的には例えば マッカーリ &サイモン の教科書では p.304 にスレーターオービタルが紹介されている.
- 14s3030:
- Zn が Zn
となるときには電子配置が [Ar]4s
3d
が [Ar]4s
3d
となるのではなく, [Ar]3d
となることが, 波動関数など計算により確かめることはできますか? M: そりゃ, できるでしょうね.
- 14s3040:
のように
になると粒子の存在確率に比例するというように何か別の意味をもつようになる関数は他にもありますか? またそれはどのような意味を持ちますか? M: ある関数を二乗すれば, その次元 (単位) も二乗されるので, 別の物理量を表すのが当たり前でしょ.
- 12s3029:
- 教科書の説明では,
,
となっていますが,
,
と同じことを言っているのですか? M: 三角関数 (正弦関数・余弦関数) と指数関数とは互いに別のモノなので,
でしょ. しかし最終的にシュレーディンガー方程式の解として, 同じものが得られる (そうじゃなきゃ困るでしょ).
rmiya, 2017-01-16