2000-12-24
鉄鼠の檻 : 京極夏彦 : 講談社ノベルズ
京極堂シリーズ, その四。
確かに「禅」についての蘊蓄はタダ者ではない。
2000-12-24
雅楽 -- 僕の好奇心 : 東儀秀樹 : 集英社新書
以前にテレビのトーク番組 (トップランナーみないなの) で東儀秀樹が出て
いるのを見た。また最近も, 母校 (小学校) を訪ねて音楽教師をやる番組も見た。
わりとおもしろくて, 名前と顔を覚えていた。
この度まとまった話が新書になったので, 興味深く読んだ。
雅楽という音楽による自然や世界との一体感など, とてもおもしろかった。
こんどぜひ彼の音楽の CD を聴いてみよう。
2000-12-11
夢々 陰陽師鬼談 : 荒俣宏 : 角川書店
陰陽師・安倍晴明に興味を引かれるきっかけとなった,
「帝都物語」(映画版, 実相寺監督; 原作は文庫本 12 巻中冒頭の 5 巻分) の
原作者による晴明譚に期待したが, かなり期待ハズレ。
物語としての主役と語手は定まらないし, 晴明はカッコわるーぃ。
2000-12-03
マンガ 量子論入門 : J=P=マッケボイ文・オスカー=サラーティ絵・治部眞里訳 : 講談社ブルーバックス
「マンガ」と言っても, いわゆる日本的な萬画ではない。
いわゆるカリカチュア化された人物画が次々と出てきて, 現象についても模式図的な
イメージ/雰囲気を伝える図が並んでいる。この本は, 量子力学の基礎を厳密に
図解して説明し, 理解させることを目的としていない。
それよりむしろ, 量子力学の勃興当時の熱意や展開を感じさせる。
(この絵が嫌いでなければ) 量子論に親しみがわくかもしれない。
でも参考図書としては, 「量子力学の冒険」をあげておきたい。
2000-11-06
ハリー・ポッターと秘密の部屋 : J=K=ローリング : 静山社
ハリポタ・シリーズ第二巻。読まずに飾って楽しんでいたんだけど,
とうとう読んでしまった。
ゆっくりと楽しみながら読んでいたのだけれど, とうとう読み終わってしまった。
前巻の「賢者の石」は, それがどういう宝ものか知っていたから, それをめぐる争奪戦と予想がついたが, 今回の怪物にはうっかりしていた。 良く考えればちゃんと伏線が *蜘蛛の糸のように* 張り巡らされているのにね。 いろいろと張り巡らせてある伏線と解決や, 魔法の世界の謎が少しづつ, ハリーの前にそして読者の前に解きあかされる展開は, ストーリーのうまさだ。 次巻が「アズカバンの囚人」とわかっていると, 今回のストーリーでの言及から 次が待ち遠しくなっちゃう。
ごくたまに原書と和訳を比べると, 訳者の心遣いが伝わってきて, 好感が持てる。 例えば「Expelliarmus !」->「エクスペリアームズ ! 武器よ去れ」
2000-11-18
ゆとり教育亡国論 : 大森不二雄 : PHP研究所
ここで紹介されていた。
本書は主として初等・中等教育について取上げているが,
「10 のアピール」の中には高等教育 (大学・大学院) でも通用するものもある。
『学校は勉強するところである』『勉強は良いことである』などは,
現代の大学生も肝に命じてほしいなぁ ...
2000-11-06
特選星降る夜のパソコン情話 続・Linux 狂騷曲 : 中村正三郎 : ビレッジセンター出版局
シリーズ第五段 !! 前前段はこちら。
第四段は読んだけどリストアップしていなかったみたい。
2000-11-06
ホームズ探偵学序説 : 水野雅士 : 青弓社
未刊行のホームズの著書「探偵学大全」の原稿発見さる ! という設定の前半。
でもホームズの推理法についての著作がいくつか刊行されている現在では,
ちょっと見劣りするところもあるし, 整理が不充分な感じ。
それよりも後半の, 「吾輩はバスカヴィル家の犬である」のほうが面白かった。
ストーリーは聖典にそっているのだが, 最後のダブルどんでん返しがすばらしい。
呆気に取られてしまった。
(その一) この短編の著者/語り手は誰なのだろう ?
(その二) モーティマー医師は何者か ?
特に後者は, それだけで一編をモノすることができるのではないか。
逆に言えばこの掌編ではその点の書き込みが不充分だとも言える。
2000-10-31 記
ドリトル先生の英国 : 南條竹則 : 文春新書
あのドリトル先生物語の魅力がいっぱい。
また読み返したくなっちゃった。
2000-10-31 記
空想科学新聞 マンスリー・プラネット : 横山えいじ : ハヤカワ文庫 JA COMICS
SF ファンのツボをみごとに押さえた会心作 !
2000-10-31 記
トリック the novel: ええと著者は誰になるんだろう : 角川書店
これもテレビ関連。テレ朝系ドラマのノベライズもの。
めずらしく理系 (っぽい) 人が主役のドラマで, 内容も怪しげなオカルトを
しっかり否定するものだったので, ちょっと期待してみていた。
全部は見ることができなくて, 見逃した回もあったけど。
でも阿部寛がバカっぽくてがっかりだった。
見逃した回のストーリーはこれでバッチリだけど, このノベライズって とってもできが悪い。淡々とした記述で, 文章からイメージが湧いてこない。 で, 結局のところ「本物の霊能力者」って, 何がどうしたの ?
2000-10-31 記
大学崩壊 ! : 川成洋 : 宝島新書
さて, なんとコメントしたものか ...
とりあえずこれだけは言っておこう。
このテの話をするときには, 理系と文系の違いをちゃんと認識してほしいな。
2000-10-31 記
化学物質は警告する : 常石敬一 : 洋泉社
読んでいて楽しい本ではない。しかし重要な内容を含んでいる。
それだけに, 散見されるオカシナ間違いが致命的な誤解を生むことを危惧する。
この本は, NHK 教育テレビの番組のテキストを元にしているのだが ... 番組は 一回だけ見た。テキストやパネルの修正を入れつつ, 話があちこちへ飛びながら, 番組は進んでいった。決してわかりやすいとは言えず, 雑で準備不足な感じがした。
本書の出版にあたって, 書き加えたりしたそうだが, それでもやっぱりイマイチだ。 まず基本的な用語や事実関係を間違わないでほしいし, たとえがたとえ話に なっていない所もある。
最後に内分泌撹乱化学物質について, これは人工物だから従来の医学的見通しと 異なる作用をしても不思議はないだなんて, バカなことを言うな ! 生体が体内に入ってきた物質の起源が天然か人工かなんて見分けるものか !! 深刻な内容を扱っているだけに, 例えばこんな変な間違いにより, 誤解を増幅しないことを期待する。
2000-10-31 記
カラー版 続 ハッブル望遠鏡が見た宇宙 : 野本陽代 : 岩波新書
ハッブルが上がってからもう十年かぁ。前回に
引き続き今回は「ハッブル・ヘリテッジ」
の芸術的画像を中心にすえて, 星の世界を鑑賞する。
2000-10-31 記
五輪の薔薇 : チャールズ=パリサー : 早川書房
1998年度ベスト・ミステリ。
複雑で重厚な筋立て, ハラハラどきどきのサスペンス。
生き生きとして鮮やかな, 19 世紀イギリスの下層民の暮らしぶり。
秋の夜長にじっくり読むに相応しい大作。
2000-10-01
新教養主義宣言 : 山形浩生 : 晶文社
こっちで紹介されていて話題的にも興味をひかれたし,
この人の本だったので, 読んでみました。
極論をうまく使っていてなかなかおもしろかった。
特に「プロローグ」あたりが『教養』の何たるかについての著者の考えを
はっきりと示していて, これまで自分でも何となく感じていたことが
明文化されて共感できる部分もあった。
2000-09-27
マジカルランド 魔法探偵、総員出動 ! : ロバート=アスプリン : ハヤカワ文庫FT
ちょっとテンション落ちたか ? 一話完結じゃないからかな。
2000-09-11
陰陽宮 6 安部清明 : 谷恒生 : 小学館文庫
やられた ! 堂々と完結してしまった。
もっとこの世界をたんのうしたかったのにぃ。イジワル。
2000-09-10
ライト、ついてますか : ドナルド=C=ゴース, ジェラルド=M=ワインバーグ : 共立出版
考えれば考えるほど, 深みにハマル (?)
2000-09-10 記
シャーロック・ホームズの愛弟子 マリアの手紙 : ローリー=キング : 集英社文庫
こうなっちゃったのね, という感じ。
感情に左右されると, 推理が鈍るっていうのがシャーロックの
主義だったはずなのにぃ。
2000-09-10 記
シャーロック・ホームズの時間旅行 : 水野雅士 : 青弓社
二部構成になっていて, 前半は「聖典」中にあらわれ, または引用される
世界史ネタをとりあげて解説。
後半はタイムマシンを扱った物語。
いずれも, なかなかやるなぁという感じ。
2000-08-28
悪の対話術 : 福田和也 : 講談社現代新書
この本をここで取り上げるのは, かなりくやしい。
それはすなわち, 著者の術中にはまってしまったこと意味するからだ。
あるいは本書の主題にのっとれば, 著者から読者への語りかけに
無条件降伏したことを意味するからだ。
対話というものを, そういう真剣勝負であると説き, 緊張感を持って
積極的に生きることのすすめ。
2000-08-27
陰陽宮 安倍晴明 (1)-(5): 谷恒生 : 小学館文庫
題名に反して, 主人公は藤原道長。
その他の歴史的人物に, 新しい人物像を当てはめた物語り。
第 5 巻の解説に, 作家・谷恒生のスタンスと共によくまとめられている。
(シリーズはまだ続く ?)
2000-08-16
陰陽師 安倍晴明 : 志村有弘 : 角川ソフィア文庫
種々の文献・物語 (史実や伝承) にあらわれる記述を並べて比較することにより,
安倍晴明像を浮彫りにしていく。
2000-08-16
終わりなき平和 : ジョー=ホールドマン : 創元SF文庫
ジャック=インして遠隔操作するマシンでの戦闘と, 隣り合わせにある勤務明けの日常。
その日常では, ナノ鍛造機により物質的には満ち足りた先進国社会。
現実の世界のゆがんだ誇張として描写される世界は,
まさしくディストピア SF の王道。
そうかと思えば, 人工的な集合知性処理による人間個々人の意識の変革が
ストーリーの中心にすえられている。
なんというか, ある意味で思索的なスペキュレイティブな小説でした。
さてところで, 解説子の言うところの文章に仕掛けられているものって何だ ? わかった人おしえてくださいな。 気が付いたことと言えば, 節ごとの叙述の人称が, 主人公の一人称 `おれ' と三人称との交互になっていたことくらいかな。
2000-08-12
新世紀デジタル講義 : 立花隆 他 : 新潮社
本書では序章でしかない「サイバーユニヴァーシティの試み」が最もインパクトが
あった。「情報原論」もリテラシーという意味で重要と思われる。
現実の解説であるその他の章では, テンションがずーっと落ちてしまったように
感じられて残念でした。
2000-08-06
人体再生 : 立花隆 : 中央公論新社
ある意味で医学の最前線, 究極の医療である, ティッシュー・エンジニアリングに
関して, 国内の研究者たちへの取材と対話から紹介する。
ただ一言, すごい。
2000-07-23
21 世紀 知の挑戦 : 立花隆 : 文藝春秋
ここんとこ立花隆の本が立て続けに出てる。ファンとしてはうれしいかぎり。
さて本書は TBS 番組「ヒトの旅 ヒトへの旅」の メーキング・オブ だそうだが,
残念ながらその番組を見た記憶がない。
内容としては, 21 世紀へ向けて最も期待がかかる分野である情報とバイオの
研究の先端を取材をとおして, 立花隆がこれらの分野の驚異的な進展,
重要性に気付き, そしてそれを読者に訴えかけるものである。
さいごの, 若者たちへのメッセージは, 全く同感である。
前半の官僚予備軍への講演内容は, 現在の政策担当者にも一般社会人にも
読んでほしい。
日本社会は, その知的レベルを上げるために何をすればいいのか,
早急に考え直す必要があるのではないか。
振り返って大学人である自分としては, 何をしたらいいのだろうか ?
(それとも, もしかして日本人は社会の知的レベルを上げたくないのだろうか ?
もしそうなら, 大学なんていらない ?)
後半の総研大での講演内容は, 本書に納めるにあたって一般向けに
書き直したせいか, 焦点がボケてしまったかな。
2000-07-23
巡洋戦艦<ナイキ>出撃! : デイヴィッド=ウェーバー : ハヤカワ文庫SF
紅の勇者オナー・ハリントン(3):
(京極堂で少し暗めになった気分を高揚させるために) ハリントン卿の痛快なる活躍。
今回は各国政府(特にヘイヴン)の内幕なども述べられている。
著者は本シリーズを単なる個人を主人公にした戦闘ものから,
歴史の流れをも捕らえた戦記物にしようとしているのか。
2000-07-19
狂骨の夢 : 京極夏彦 : 講談社ノベルス
京極堂の憑物落し第三段。
過去の怨念や狂信に捕らわれた人々, まるで横溝調 ?
人の入れ代わりと併せて脳髄屋敷の仕掛けは, 最後まで読者を混乱させる。
「姑獲鳥の夏」は, 流行っただけあって新しい作風かなとも思ったけど,
ここへ来てなんとなく京極堂シリーズのパターンが見えてきちゃった。
(もちろん事件の主体は別にいるのだが)
ある人が, とーとつにあやしい事件に関与する。
巡りめぐって, じつは京極堂の関係者と知人だったことが判明して,
その結果, いつのまにか京極堂に憑物落しを依頼するはめになる。
結局のところ事件自体は超常的なものではなく, また解明にあたって
民族学的な伝承やら何やら(妖怪)についての考証が披露される。
京極堂と関口(と榎木津と木場)は常連。
乱歩と横溝が出てきたら, 後は何だろう。
2000-07-16
魍魎の匣 : 京極夏彦 : 講談社ノベルズ
京極堂2。今回はかなり怪奇趣味的で, 猟奇的ともいうかも。
事件のシュールさが, まるで乱歩的だ。
2000-07-13
姑獲鳥の夏 : 京極夏彦 : 講談社ノベルズ
流行りすぎ (?) の感が強かったので, ちょっと避けてましたが,
いよいよ取り掛かります。それはさておき ...
読中の感想として, 語り手 (関口) と京極堂との会話は, 雰囲気といい内容といい, 夢枕獏の安部清明と源博雅の陰陽師シリーズを 彷彿させるなぁと思っていたら, 京極堂のもうひとつの顔としての元が 武蔵清明社とは... やっぱりねって感じ。 しかし京極堂は妖しい霊魂などの存在を否定し, (現代的な) 認知科学的な視点から, 『妖しいことが起ったかのごとくヒトが *認識する* 理由』を説き明かすことで, 問題を解決していくのには, 好感が持てた。
京極堂の口癖 (だそうだ)「この世には不思議なことなど何もない。 あるべくしてあるものしかないし, 起るべくして起るものしか起らない。」
2000-07-10
失われた宇宙の旅 2001 : アーサー=C=クラーク : ハヤカワ文庫SF
キューブリックの映画「2001 年宇宙の旅」の, クラークの側からのメーキング。
あるいは「異説・2001 年宇宙の旅」か。
映画あるいは小説としての「2001 年宇宙の旅」が出来上がっていく過程, (必ずしもクラークのビジョンが採用されるわけではないが) アイデアが洗練されていく過程が見られて興味深い。
2000-07-10
2063年、時空の旅 : クリフォード=A=ピックオーバー : 講談社ブルーバックス
近未来を舞台に, ショパンの *生* 演奏を聞くためにタイムトラベルを
計画したワンストンが, 仲間に時間の物理学を解いていくという形式。
なかなかにお気楽な SF 仕立ての対話になっているし,
幕間に舞台裏の科学として, より詳しい解説がある。
またちょっとした計算のための
プログラムソース (tar+gzip)まで
付いているという豪華さ !
しかし想定されている近未来社会が, 相当にシュールで可笑しい。 また, そもそもの「はじめに」にある「本書の効用」からして, ちょっとズレてて (?) 楽しい。
2000-07-10記
科学の現在を問う : 村上陽一郎 : 講談社現代新書
大学の教養教育 (理系にとっての文系科目, 文系にとっての理系科目);
科学研究と現代社会とのかかわり などの重要性について,
あらためて考えさせられる。
なお, 同様のことは立花隆も言っており, 科学・技術に通じた複数の人からの
このような指摘は, 科学にたずさわるものとして重く受け止める
必要があるのではないか。
2000-06-05
行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙 : マーヴィン=ピーク : 国書刊行会
(自称) 世界でもっとも偉大でない探検家のお話, です。
すてきです。おもしろいです。内容も装丁も破天荒です。
白いライオンは, ちょびっとだけ, パンジャを思い起こさせます。
2000-06-03
アンドリュー NDR114 : アイザック=アシモフ&ロバート=シルヴァーバーグ : 創元SF文庫
アシモフの「バイセンテニアル・マン」の長編版で, 今公開されている映画の原作。
アシモフの中編小説に泣けたので, 今回の長編書き直し版に一抹の不安があった。
しかし小説としては, ディテールを深く掘り下げた記述が積み重ねられており,
内容が薄められた感じは全くなく, よくできている。
わかっていても, ラストでちょっと泣けた。
で, 映画の方なんだけど, まだ見てません。 じつはあのロビン=ウィリアムズって, 好きになれないタイプの顔付きなんだよね。 でも, いちおー SF ファンとしては, 見とかなくちゃかな。
(映画見てきました, 2000-06-05)
ううぅぅぅ〜〜〜〜む。
リトル=ミス/ポーシャ への愛のために人間になりたがったアンドリューとは ...
アシモフの中編やシルヴァーバーグの長編とはちょこっと (かなり) 主旨が
違うんでないかい ?
そりゃ確かに, アシモフの小説群には恋愛沙汰はまず出てこないし,
ある意味ストイックなまでの自己実現だけでは, ヒットする映画に
ならないのはわかる気もするんだけどねぇ。
でも, 恋愛沙汰や非論理性は, アシモフのロボットものにはふさわしくない !
アシモフのロボットものは, 一見すると非論理的に見えるロボットの行動も,
よくよく解析してみるとロボット三原則に忠実なのだったという,
ミステリの謎解き的な要素が楽しいのに。
ちらちらと出てくる近未来っぽい仕掛けとミスマッチな現代製品 (ややレトロ (?))
の対比は少し面白くてうれしかった。
2000-06-01
人類、月に立つ : アンドルー=チェイキン : NHK出版
アポロ計画に賭ける宇宙飛行士たちそれぞれの人物にスポットをあてて,
ドキュメンタリー・タッチに迫る。
宇宙飛行士たちの人物が生き生きと浮かび上がる。
要所要所でのキメのせりふや場面展開が, わかっていてもグッとくる。以下に本書からいくつかを抜き書きすると:
「われわれは月への道を選ぶ! ... それが容易だからではなく, 困難であるがゆえに (ケネディ)」;
「クリスマス休暇にアカプルコに行く話はだめになった。月へ行くんだ (ジム=ラヴェル)」;
アポロ8号で初めて月の裏側にまわって地球との交信がとぎれる間際に「反対側で会おう (ジム=ラヴェル)」;
その後月軌道周回中に感動的な (人類初の) 地球の出を目撃して「おい, あれを撮るんじゃないぞ, スケジュールに入っていない」;
月着陸船が初めて月面に着陸して「ヒューストン, こちら『静かの海』基地。鷲は舞い降りた (アームストロング)」;
月面から上昇してきたイーグル号の背景に地球が昇ってきたところを軌道上で迎えたコリンズがカメラにおさめた「一枚の写真にとらえられた全人類, ただし, 写し手である自分だけがいない」;
アポロ12号ではピンポイント着陸に挑戦した「「サーヴェイヤー」クレーターの影になった向うの壁に, 小さくて華奢な, 白い物が見える。サーヴェイヤー3号だ。」;
アポロ13号の「輝かしい失敗」についてはこちら [*1] も参照のこと。;
アポロ14号でアル=シェパード (フリーダム7でアメリカ人で初めて宇宙へ出た) が月面に立ち「長い道のりだった。しかし, われわれはやってきた」;
「コーン」クレーターの縁をめざしての登山を頂上目前で引き返したことに対してデブリーフィングのときに「あなたたちは賭けに負けてなんかいなかったんだ。だけど, それを知らなかった!」;
アポロ15号指令船「エンデヴァー号」の名前の由来となったのは, 探検家クック船長の船。そのクックの言葉「わたしは誰よりも遠くへ行きたいという野望だけでなく, 行ける限り遠くへ行きたいという野望があった」;
その15号で月を歩く7番目の人間になったデイヴ=スコットは新米の地質学者として考えられる限り最高の調査現場 (月面のハドリー・デルタ山) に行けるという思いで昂揚して「人間は冒険をしなければならない。そして, これは, もっとも偉大な冒険である。」;
(サンプルを採取しながら) この場所のことは徹底的に研究を重ねたから, 実際に目にしないうちから, もう充分に知っているような気分になっていた。... だが, 一度も思い描いたことのないものがひとつだけあった。それは, ハドリーの谷の圧倒的な美しさだった。;
(スコットは, すべての荷造りを終えて月を離れる間際に, チェックリストにない作業に取り掛った。はやぶさ (月着陸船は ファルコン号) の羽とハンマーを取りだし, テレビカメラの前で, ガリレオ=ガリレイ の実験をしてみせた。)「月でちょっとした実験をするほどすばらしいことはありません」;
アポロ16号のデカルト高地での調査では, その火山生成説には可能性がないことがほぼ証明された。後に地質学者のひとりが「... デカルト高地へのミッションは, 科学が最大の進歩を遂げるのは, その予測が間違っていたことが証明されたときであることを, あらためて実証した。」;
アポロ16号は, 単にデカルト高原のイメージを変えただけではなく, 探検のもっとも基本的な考え方を再確認することになった。そこに何があるかが明確にわかっているなら, そもそも月に行く必要はなかったではないか, という考えを。足を運ぶことの真意は, 発見にあるのだから。;
アポロ17号のミッションで, サウス・マッシーフ山腹での調査が期待以上の成果をあげていたが, 次の調査地点に割り振られた時間にかなり食い込んでいた。バックルームからの先を急がせる催促に対して, このあと ALSEP (アポロ月面実験装置) でしなければならない作業に必要な数分をどの調査地点の時間から削ればいいかとの質問に, 「アポロ18号の時間から削ってくれ」;
ジーン=サーナンは, 世界七〇か国からヒューストンに招かれて, 二人の月面活動を見守っていた児童・生徒に, 月着陸船チャレンジャー号の脚に取りつけられた銘板を示しながら, 「これは, 私たちのような誰かが, いまそこにいるみなさんの誰か, 未来の希望である誰かが, ふたたびこの地を訪れてこれを読み, アポロの探検と意義をさらに広げてくれるときまで, ここに残っているはずの, われわれの銘板です」
たくさんありすぎ
[*1]と, 思ったら, この読んだ本リストに載ってないのね。もうちょっと前に読んだんだったかな。要するに 映画の「アポロ13」 の公開時に出た, やつです。
アポロ 13 号 奇跡の生還 : ヘンリー=クーパーJr・立花隆訳 : 新潮社
2000-06-01
銀河おさわがせマネー : ロバート=アスプリン・ピーター=J=ヘック : ハヤカワ文庫
久々に登場 ! 爆笑ミリタリィSF ! あいかわらず楽しめる一級品なんだけど,
以前よりもハチャメチャ度というか暴走感が無いような...
2000-05-21
シャーロック・ホームズ 四人目の賢者 : ピーター=ラヴゼイ他 : 原書房
ホームズのクリスマス・ミステリの第二談^H弾。
2000-05-19
名探偵博覧会 真説 ルパン対ホームズ : 芦辺拓 : 原書房
古今東西の名探偵に由来する贋作の短編集。
ただし, 著者が名探偵に思い入れするあまり,
複数の名探偵がひとつの短編に一気に登場するなど,
人物が整理されていないような面もちょっとだけ見られる。
2000-05-16
半熟マルカ魔剣修行! : ディリア=マーシャル=ターナー : ハヤカワ文庫FT
タイトルからは, もっと全然違うストーリーや雰囲気を期待していた。
だって原題も ``Of Swords and Spells (剣と魔法/呪文の...)'' だし。
構築されている世界にはたいへんに興味が持たれるのだが,
登場人物に感情移入できないのが欠点。
2000-05-16
太陽王の使者 : ジャン-クリストフ=リュファン : 早川書房
波乱万丈・恋と冒険・活劇巨編っ !!
いやぁ〜, 楽しいですね, 面白いですね。(淀川長治 調で)
2000-05-05
順列都市 : グレッグ=イーガン : ハヤカワ文庫
複数の人物がカットバックで登場し, それに応じて時系列も錯綜している。
おまけに無限の電脳空間をもたらす「塵理論」もよくわからん。
ついでに, どこが「順列 (permutation, 置換(?))」なんだ ?
2000-05-04
フレームシフト : ロバート=J=ソウヤー : ハヤカワ文庫
現実のヒトゲノム計画をベースにしたミステリに
SF 的味付けしたフィクション。そこそこ楽しめた。
2000-04-21
モナリザの微笑 : 斎藤純 : 新潮社
同名のテレビドラマと競う, 同工異曲のオリジナルストーリー。
テレビでは, 「悲しみのモナリザ」 の謎を小出にしつつ (最後に) 奪取合戦を
してみせたのに対して, それまでの各週はエピソードをつなぐという
いかにも連続ドラマのスタイル。
これに対して小説の人物設定は全く違っているし, ストーリーの主題も違う。 今は警備に勤めているが, かつては美術を志していた堀口の視点から物語は 語られる。さらに渦中のオークショニアの立花とはかつての同級生。 そして立花・堀口の過去, 立花と柴田 (画商) の過去, そして 早坂 (死去した美術コレクター) と綱島の過去, これらの人々がそれぞれの過去を背負いつつ, 現在の自分を表現しようとする。
ドラマで演じていた役者・役柄の個性とは全く違っていて, それぞれのメディアの特徴を生かした作りになっている。
2000-04-09
ハリー・ポッターと賢者の石 : J. K. ローリング : 清山社
*殿堂入り* 決定の, 久々の大ホームラン。
この週末に読んだのだけど, 寝食を忘れてハマってしまった。
何度も読み返したいし, 続きも早く読みたい。
世界観がしっかりと, そして細部にわたってまでできている (これは解説でもほめてた)。で, ここにユーモアが有る。
いじわるな (魔法に理解が無い) おじさん一家が, ハリー宛に来た手紙を横取りしてないものにしようとする所。 魔法学校 (の寮) で幽霊や絵画 (肖像画) やかざりの甲冑のゆかいな行動 (!)。 校則違反をして夜中に出歩いているところを, 先生たちに見つからないようにと ドタバタするありさま。 いじわるな同級生や先生との対立や, 厳しいけれども暖かく見守ってくれる先生。 そして気の良い森の番人。
感動と言うよりは楽しさっていうのかな, そうゆう世界が感じられるね。
2000-04-09
陰陽師 生成り姫 : 夢枕獏 : 朝日新聞社
安倍清明と源博雅のシリーズの長編。
今回は言霊や呪 [しゅ] よりも, 人の心・世の移ろいを感じ取る人の心を
しみじみと感じさせる物語になっている。
実は主人公は博雅の方だったのね。
2000-04-08
人類の長い午後 : 橋元淳一郎 : 現代書林
「サイエンス・ノンフィクション」と称している以上, これはフィクションではない。
主人公がいて事件が起ってという普通の意味でのフィクションではない。
しかし人類という集団を主人公に設定して, 未来史として事件が起る
という意味ではフィクションである。
しかしその筆致はあくまでも淡々としており,
ストーリー展開はいわゆる論理性に基づいている。
「人間はどこから来て, どこへ行くのか」の,
特に後半について思弁的な予測が展開される。
あぁ, ハード SF だ。
2000-04-07
稲妻よ、聖なる星をめざせ! : キャサリン=アサロ : ハヤカワ文庫
スコーリア戦史 2, パート 1 はこっち。
遺伝子工学による血統と進化や, ナノテク, ネットと超感空間, 生体機械,
そして今回は並行宇宙まで など, アイデア盛りだくさん。
でもストーリーは恋と冒険活劇巨編のスペオペなんだよなー。
2000-04-02
宇宙消失 : グレッグ=イーガン : 創元SF文庫
この世代の作家/作品にとって, ナノテクやコンピュータ・ネットに関する
アイデアは常識か。
さて, この話は量子論の観測問題を題材にした作品である。
主人公のハードボイルド的な一人称で話は進むが,
そういうストーリーの述べ方にしては, 内容は思弁的にすぎる。
難しい理論は別にしてしまうと「固有状態選択能力」とは
あまりにもご都合主義的すぎる。
2000-04-02
科学事件 : 柴田鉄治 : 岩波新書
科学技術と社会との軋轢について, (朝日新聞の) 報道記者としての経験からの検証。
取り上げられている話題は, (1) 脳死・臓器移植, (2) 薬害エイズ, (3) 体外受精,
(4) 原子力, (5) 水俣病, (6) 大地震, (7) クローン羊。
いずれも単なる先端的な科学技術にとどまらず,
社会的にもそして政治的にも大きな問題を提起した事項である。
そういった話題についてこうしてまとめて振り返ると, いつもながら ...
うんざりする。
○感想その一:
自分自身の生活として何を可として何を否とするか,
第一義的には自分で判断しなければならない。
それがオトナというものだ。
そこで現代の社会生活は先端科学技術とは切り放すことができなくなっていて,
または科学技術無しでは成り立たないとも言えるであろう。
したがってある科学事件が起ったときに, それについての価値判断を,
マスコミに踊らされたりヒョーロンカの意見を鵜呑みにするのではなく,
自分で考えなければならない。
そしてそのためには, 大本営的な発表の裏にある事や見落とされがちなことにも
注意を払う必要がある。
先端技術だから専門家にまかせておけば良いなどと,
判断を他人委せにしてはイケナイ。
○感想その二:
科学技術の研究の最先端と社会との乖離が著しいとの意見もある。
戒めねば。
○感想その三:
卒業しても必ずしも化学 (科学) に関する職に就くわけではない。
しかし 理学部/理工学部 を卒業したのであるなら,
上で述べたような感覚程度は身につけていって欲しいと思うぞ。
> 最近の学生諸君
ところで, 朝日新聞の科学記事の世間的な評価ってどうなんでしょうね。 これまでもときどき, 自分のよくわかっている分野の記事なんかに, 「これはちょっと ..., ワカッテないんじゃない ?」 というものがあった。 したがって ナルホド と思える記事も, 「待て待てちょっと危ないかもしれんぞ, ``朝日''のネームバリューに 騙されてはイカン」 と。
2000-03-30
理系志望のための高校生活ガイド : 鍵本聡 : 講談社ブルーバックス
えーーー。あのブルーバックスで, こんなの出すのぉーー。というのが第一感。
はじめにの「迷ったらとりあえず理系」はとりあえずオッケーだけど。
第一章の理系とはどういう世界なのか ? についてより詳しくは,
おなじブルーバックスの 坪田一男「理系のための研究生活ガイド」をすすめるな。
もうちょっと「日常生活で出会うちょっとしたこと (自然の移り変わり・生命の神秘・ 工業製品に含まれる技術・技術関連のニュース) に興味を持とう。これらには ○○な自然の原理や法則が潜んでいる。」な話かと期待しちゃった。 たぶん現役の高校生には無味乾燥でしちめんどくさい様に 見える数学や理科の科目でも, それを勉強して理系の大学に進学すると こんなに面白いことが待っている。だからそのために数学や理科が大事だ。 っていうような話をするかと思ったのにぃ。
第二章以降はそのまま高校生のための受験生活指導 (?)
2000-03-27
シュロック・ホームズの迷推理 : ロバート=L=フィッシュ : 光文社文庫
英米短編ミステリー名人選集 VII
シュロック・ホームズとワトニイのベイグル街 221B コンビによる
マトハズレ的迷推理に抱腹絶倒。
早川文庫版とあわせて, すべての活躍が和訳で楽しめるようになった。
2000-03-20
われ思うゆえに思考実験あり : 橋元淳一郎 : 早川書房
SF チックな話題に鋭く思考実験でせまるわけなんだが,
ハーフミラーの思考実験がなんかオカシイのではないか ?
問題の設定が間違っている ?
ここで述べている思考実験は以下の通りである。 『ハーフミラーをはさんで, 光源をでた光 (光子) が検出器にかかる確率が 0.5 とする(A)。これを時間反転させて, 検出器に光が到達したときに光源が 光った確率を考えると, これは 1 であり(B), 非対称だ。』 でもここで, 前半を逆に見て 『ハーフミラーをはさんで, 光源をでた光 (光子) が検出器に *かからない* 確率は 0.5 である(C)。』とすると, これを時間反転させた問題は, 『検出器に光が到達 *しなかった* 時, 光源が光った確率はいくらか ? (D)』 になる。 答えはもちろん 不定 (D2)。 光ったけどハーフミラーに跳ね返されて検出器に届かなかった可能性と, もともと光源が光らなかった可能性がある。
(A) と (C) とは相補的な関係にあり, (A) の否定が (C) であって, (A) の確率と (C) の確率の和は 1 である。 しかし (B) と (D) は, さにあらず。 したがってなんかオカシイ。面白いとも言う。
2000-03-07
シャーロック・ホームズのドキュメント : ジューン=トムスン : 創元推理文庫
魔物をたずねて超次元 ! : ロバート=アスプリン : ハヤカワ文庫FT
おなじみの これ と
これ。
2000-02-25
電脳農奴解放ジャーナル Vol. 2: : 太田出版
一発ギャグかと思っていたら, 第二段が出ました。
まあ, 裁判で事実認定も出たしぃ。
2000-02-25
将棋とチェスの話 : 松田道広 : 岩波ジュニア新書
おどろきの発見 : 松田道広 : 岩波ジュニア新書
2000-02-13/16
{100億年の旅・2} 宇宙・地球・生命・脳 --- その原理を求めて : 立花隆 : 朝日新聞社
いやー, 科学って 本当に面白いですねー。
2000-02-11
海の世界史 : 中丸明 : 講談社現代新書
世界史の流れを, 海からの視点で読み直す。
というスタンスには興味をひかれたのだが,
エピソードのつぎはぎで全体としての流れに欠け, また
それぞれの取り扱いも中途半端。
新書の分量では限度があるか ?
2000-02-11
翻訳はいかにすべきか : 柳瀬尚紀 : 岩波新書
希代の奇書 ``フィネガンズ・ウェイク'' の訳者がおくる
「翻訳に不可能はない」。
翻訳という行為はあくまで日本語の行為である。
翻訳とは, 日本語という一国語の表現の問題だ。
... なるほどしかり。
``フィネガンズ・ウェイク'' や ``ゲーデル, エッシャー, バッハ'' を
チェックせねば。
2000-02-01
SETI@home ファンブック : 野尻抱介 : ローカス
おうちで宇宙人探しをするプロジェクトの紹介。
理科少年なら必修でしょ。
そーか, 宇宙人からの信号を発見した場合のコメントを
考えておかなきゃいけないのかぁ。
オフィシャル・サイト
2000-01-29
ロボットにつけるクスリ : 星野力 : アスキー出版局
最近のコンピュータ=サイエンス, 特に人工知能関連の入門書。
2000-01-26
エンディミオンの覚醒 : ダン=シモンズ : 早川書房
壮大なる未来叙事詩, ハイペリオン=シリーズの第 4 部, 完結編。
読みごたえ十分。
ただし, <繋ぐ虚無>の声を聞いたり, 一歩を踏み出したりは,
超能力の新たな形態か。
<教える者>の教え (教義問答 ?) は, やや形而上学的か。
この辺の仕掛けがもうちょっとハードであって欲しかったなぁ。
2000-01-14
名もなき墓標 : ジョン=ダニング : ハヤカワ文庫HM
主人公の新聞記者のキャラクターが良くできていて,
またストーリー展開にもテンポがあって, ぐいぐい読ませる。
2000-01-x
物理学の世紀 : 佐藤文隆 : 集英社新書
``これまで''の部分はそれなりに良いのだけど,
``今後の展望''についてが, やや思索的哲学的になっていて
違和感があった。
2000-01-x
親子で楽しむ科学実験 : 米村傳治郎監修・中川悠紀子著 : 宝島新書
最近こーゆー, 自宅で科学実験モノの本がいくつも出ているような気がする。
監修がしっかりしているが, ややヤワラカ系。
2000-01-x