最近読んだ本で面白かったもの (1996 年版)

ジャンルは著しく偏っています。主として以下のように分類できそうです。 Venus of Milos

数学者シャーロック・ホームズ : 瀬山士郎 : 日本評論社

ワトソン博士の未発表原稿を発見するに至った経緯と、 一つ目の事件についてはまあまあ良くできているが、 二つ目の事件については感心できない。
# ワトソンが発表を見合わせたのも頷ける(?)

1996-12-22


CMをにぎわしたヒット商品--その化学的カラクリと開発の舞台裏-- : 「化学」編集部編 : 化学同人

物作りの面白さ

1996-12-18


「複雑系」とはなにか : 吉永良正 : 講談社現代新書

ワードロップの本は サンタフェ研究所の創設にまつわる話だったが、 ここではそれに限らず他の話題も広く取り上げて、 「複雑系の科学」が科学の中でどんな位置をしめる(しめつつある)のかを 紹介している。

1996-12-08


八ッカーと蟻 : ルディ=ラッカー : 早川文庫SF

やっぱりこれをリストに載せるのは基本でしょう。

1996-12-03


ファクトとフィクション (化学とSFとミステリー) : 山崎「永日」(あきら、これで一文字) : 裳華房 (ポピュラーサイエンス)

1996-11-26


「超」勉強法「超」批判 : アルベルト湯川 : データハウス

特別におもしろかったわけではないが、 野口悠紀雄「超勉強法」を紹介したので、 それについての反論も紹介する。 以下では本書を「湯川本」、野口氏の「超勉強法」を「野口本」と呼ぶ。

「湯川本」では「野口本」を暗記主義であり学習とは正反対であると批判している。 これは「学習」を関数抽出作業ととらえるか、 試験で好成績をとることと考えるかによる違いと思われる。 もちろん「湯川本」は前者である。 しかし「湯川本」でも暗記の必要があることは認めている。 これを活性化された記憶と呼び、棒暗記とは区別しているが、 *活性化された* ということがポイントであるようだ。

学生は大学に専門事項を学ぶ事を期待するようだが、 不活性な知識をいくら増やしても役に立たず意味が無い。 「せっかく暗記した事項を役に立てよう。これからは知識の使い方を学ぼう。」 「大学は勉強の仕方を勉強する所だ。」といわれる所以である。

大学で始めて学ぶ様な専門事項について、 基礎から積み重ねていくことは、学問を体系として身につけるには重要だし、 その後の発展や展開には不可欠と言えるかもしれない。 しかし *活性化された理科・数学の知識* を持たない学生にとって基礎は難しい。 そこで学習の動機づけのためには、 「野口本」で言うところの、 専門事項にパラシュート降下して興味を持たせることも有意義ではないか。 その後(自主的に・自覚的に)基礎に戻るような勉強法もあり得ると思う。 またその様にして絶えず基礎を振り返ることで、 知識を活性化させることができるのではないか。

そもそも知識の持ち合わせが無ければ、 それらを活性化させ有機的に活用することができない。 また一方で、死んだ知識を抱えているだけでは役に立たない。

読み方によっては「湯川本」と「野口本」のどちらにもそれぞれ納得する所がある。

1996-11-24


マーク・トウェインのジャンヌ・ダルク : マーク=トウェイン : 角川書店

1996-11-22


元素の王国 : P=K=アトキンス : 草思社

長周期表を国土に見立て、その地理、歴史、政治について解説する形式は秀逸。 舞台ができればあとは役者が活躍するだけ(?)

1996-11-19


星降る夜のパソコン情話 / 続星降る夜のパソコン情話(On The Move) : 中村正三郎 : ビレッジセンター出版局

これまた読書とは少し違うような気もするが...
「プロセッサやOSといった基盤技術が1社に独占され、 その会社に社会が依存してしまうのは非常に危険だ。」(坂村健、本文中に引用)
世間(日本国内)でのイメージに反してMSやMSKKが本当はどんな会社か、 国内のパソコン雑誌は何故そのことを報じないのか に関する著者の意見や体験が書いてある。 実際の報道と著者の考えのどちらに説得力があるかは、 読んだ人が判断して下さい。
著者のホームページはこちら

1996-11-16


歴史をかえた物理実験 : 霜田光一 : 丸善

前半の「クーロンの法則は本当に逆二乗則に従うのか実験的に確かめる」ところや 「光速度の測定方法と、その精度が上がっていく歴史的な過程」は 面白かった。 しかし最後の方の「メーザーやレーザーの項」はいまいちだった。

1996-11-05


(基礎化学コース) 量子化学 I, 波動方程式の理解 : 井上晴夫 : 丸善

読書と言う訳ではないが... 類書に見ないユニークな内容。 概念の定性的/感覚的/概念的な記述に徹し、量子化学の初学者や一通り学んだが ピンとこない人が、2-3日で一気に読むのが適当かと。 ただし数式を省いたためにかえって解りにくかったり、 記述の正確さに欠けると思われる所も少しある。 本書の後にはやはりちゃんとした専門書を読む必要がある。

1996-11-03


白い国籍のスパイ : J=M=ジンメル :

ずっと昔にラジオドラマでやっていて、面白かったので原作の本を探してよんだ。 ユーモアに優れたおしゃれな小説で気に入った。 ずっと昔の思い出だけど、その本がこんど文庫で出た。

1996-11-xx


シャーロック=ホームズのジャーナル : : 創元推理文庫

パスティーシュの良品。秘密ファイル、クロニクルにつづく第3弾。

1996-10-xx


重力の影 : ジョン=クレイマー : 早川文庫

超ひも理論なんかどうでもよくて、 それより実験物理の研究に熱中する主人公たちや、同時進行の童話がよかった。 影の地球でのサバイバルもつまんなかった。

1996-09-xx


リング/時間的無限大 : スティーヴン=バクスター : 早川文庫

先に『リング』を読んで「あれ?」って感じだったので、 積んであった『時間的無限大』を読んだ。 個人的には死につつある宇宙を旅するよりも、 身に降り掛かった脅威に何とか対処しようとする「個人」の お話の方が好みなのかもしれない。 ところで、スプライン船て、けっこう面白そうだったりする。

1996-09-15


宇宙実験最前線 : : 講談社ブルーバックス

生命科学と材料物性科学の最先端の話題。

1996-09-10


カリストの脅威/ガニメデのクリスマス/母なる地球 : アイザック=アシモフ : 早川文庫

初期作品集(1)(2)(3)。説明不要にちがいない。

永遠なる天空の調 : キム=スタンリー=ロビンスン : 創元SF文庫

アイデア、ビジョンともに文句無し。このうえ叙情性を期待するのは欲張り過ぎか、 それとも和訳の問題か。

1996-09-02


複雑系 : M=ミッチェル=ワードロップ : 新潮社

複雑適応系の科学。生命は平衡とカオスの境に。自然選択により自己組織化へ。

1996-08-25


ブレードランナー2 : K=W=ジーター : 早川書房

まぎれもないK=W=ジーター本でありながら、前作の世界が感じられる。 ビデオと電気羊を復習しなくっちゃぁ。

1996-08-03


しゃべくり探偵 : 黒崎緑 :

ボケホームズとツッコミワトソンの冒険。 関西弁漫才によるミステリ。

1996-07-11


脳を究める : 立花隆 : 朝日新聞社

脳研究最前線

1996-07-10


茂吉彷徨 : 北杜夫 : 岩波書店

歌人斎藤茂吉の評伝としてよりも、北杜夫の家庭の思い出としても面白い。 「青年茂吉」「壮年茂吉」と「楡家の人々」「ドクトルマンボウシリーズ」を あわせておすすめ。

1996-06-17


最後の名探偵 : ブライアン=H=ケイ : 原書房

現代科学捜査の実体、側面、背景を最新の技術と知識に基づいて余す所無く描いた 興味深い良書。 あらゆる学問領域の成果の応用と推理小説に興味のある人におすすめ。

1996-06-09


物性物理の世界(改訂新版) : 伊達宗行 : 講談社ブルーバックス

化学の研究対象は『物質』である。『物質』の性質を、その構成している原子分子に 還元して考えるのが化学であると言える。 そこで物性物理から得られるものは大変多い。 また、生体を構成している物質も化学にとって興味深い研究対象である。 「新しい量子生物学」:永田親義:講談社ブルーバックス、も面白い。

1996-06-08


ドラゴンの騎士 : ゴードン=R=ディクソン : 早川文庫FT

ユーモアファンタジーの秀作。 「ドラゴンになった青年」の続編、シリーズ化バンザイ

1996-05-09


軌道通信 : ジョン=バーンズ : 早川文庫SF

スペースコロニー化した小惑星の社会での生活をつづるジュブナイル

1996-05-06


勇者にふられた姫君 : ディ.キャンプ & ドレイク : 早川文庫FT

アンノウン=タイプのユーモアファンタジーの秀作。 ディ.キャンプ&プラットのハロルド=シェイのシリーズもおすすめ。

1996-05-03


インターネット探検 : 立花隆 : 講談社

WWWは情報革命だ。

1996-04-28


夢の痕跡 : 荒俣宏 : 講談社

現代の科学は複雑になりすぎたのかもしれない。 科学に対する素朴な楽しさをもう一度取り戻したい。

1996-04-15


究極のシンメトリー : ジム=パゴット : 白揚社

C60の発見に関する物語。最先端の研究の緊張感や新発見に対する高揚感が 伝わってくる。こんなふうに研究がすすめられたらすばらしいな。

ぼくはこんな本を読んできた : 立花隆 : 文藝春秋

「知」のソフトウェア、エコロジー的思想のすすめ、なども必読

この不思議な地球で : 巽孝之 編 : 紀伊国屋書店

90年代の同時代SFの流れを読む

1996-04-01


読み書きの技法 : 小河原誠 : ちくま新書

論理的で平明な文章を書く訓練は、書物を正確に読み解くことから始まる。 すなわち読むことと書くことは円環をなして発達する。 文章を書く技法がよくわかっていないから、本を読み解けないし、 また逆に本を読めないからいい文章が書けないのである。 そして平明な文章を書くことによって他の人々の批判を仰ぎ、 みずからの知的成長をはかるという姿勢が重要である。 (本書より)

1996-03-17


フラックス : スティーブン=バクスター : 早川文庫

面白かったけど、読むのに時間がかかった。(めずらしく忙しかったせい?) 中性子星人といえば「竜の卵、スタークエイク」、高重力星なら「重力の使命」、 まるきり異星人なら「ロシュワールド」もある。 これらのSFで、ホモサピエンスが異星人の社会文化を描くのには限界があるとの 批評を見たおぼえがあるが、この作品ではその点についてうまい解決策を作った。

1996-03-12


近代科学の源流を探る : : 東海大学出版会

理科少年必携、英仏蘭独伊の科学博物館と史跡ガイドブック。

1996-02-16


無限アセンブラ : : 早川文庫

カットバックの手法が物語に軽快さを与えているが、 後半部では状況の変化から、逆にちぐはぐな感じがする。 ナノマシンとの戦い、ナノマシンの暴走、ファーストコンタクトと、 盛り沢山な内容にまとまりがやや欠けている。

1996-02-07


シャーロック.ホームズ対オカルト怪人, あるいは「哲学者の輪」事件 :: 河出文庫

パスティーシュであるが、ホームズは超常現象を否定していたはずなのに?? という違和感があった。

1996-02-03


荒れ狂う深淵 : グレゴリイ=ベンフォード : 早川文庫

ほとんど読書日記の様になってきたが...
宇宙規模の事象に関する記述は圧巻であるが、 この作家の作品を読むのにはいつも時間がかかる。

1995-02-02


フランドルの呪い絵 : アルトゥーロ=ペレス=レベルテ : 集英社

ドゥームズデイ.ブック : コリン=ウィリアムズ : 早川書房

お正月に読みました。おもしろかった。

1995-01-10


(立花隆.対話篇)宇宙を語る : 立花隆 : 書籍情報社

日本人宇宙飛行士との対話、有人宇宙開発の意義、など。 「宇宙からの帰還」「宇宙よ」とあわせて読むと良い。
「バイキング計画で、火星に生命が存在する証拠は得られなかったが、 21世紀の中ごろまでに、火星上で生命体が活動していることを期待する。 (ブラッドベリ)」を思い出した。

1995-12-26


基礎からわかるインターネット : 岩谷宏 : ちくま新書

技術的な側面についてはほとんど触れずに、社会的な役割についての入門。 「ラジカルな**」の著者だけあって、他とは少し違う見方が示されている。

1995-12-25


宇宙叙事詩 : 光瀬龍 & 萩尾望都 : ハヤカワ文庫JA

「火星年代記」「エンジン.サマー」に並ぶ名作だと思う。


「超」勉強法 : 野口悠紀雄 : 講談社

基本3原則 : (1)面白いことを勉強する, (2)全体から理解する, (3)8割までやる。 ノウハウと意欲が車の両輪。
常識とはちょっと異なる見方が多く、面白い。笑える(^^;)。 または現在悩んでいる人のガイド。

1995-12-14