研究成果

四鉄上の一酸化炭素の還元的カップリング反応における中間体捕捉

成果1

 還元剤の当量を減らし、反応時間を短縮することで、一酸化炭素がアセチレンへと変換される過程での、中間体の捕捉を試みた。実験で鍵になった操作が、酢酸エチルにより反応を速やかに止めることと、空気酸化であった。得られた反応溶液から、再結晶法、カラムクロマトグラフによる精製、溶解度の違いを利用した抽出操作、酸化還元法などを繰り返し用いることで、上のスキームに示したとおり、4種類の化合物を単離することに成功した。いずれのクラスターの構造も、単結晶X線構造解析により明らかにした。このように、一酸化炭素の還元は段階的に進行し、四鉄骨格は鉄-鉄結合の切断を伴いつつ、四面体型からバタフライ型へと変換されることがわかった。


柔軟な[4Fe-4C]骨格の構造変化

成果2

 下の反応で得られたビス(アセチレン)クラスターを2電子酸化することで得られる陽イオン性化合物は、溶液状態では2種類の異性体の平衡混合物として存在することが明らかになりました。この平衡反応は炭素―炭素結合の生成と開裂により成り立ち、これまでの有機化学の常識からは理解しがたい実験結果と言えます。


四鉄上での一酸化炭素のアセチレンへの変換反応

成果3

 四鉄上において、C1化学種である一酸化炭素を還元することで、C2化学種であるアセチレンへと変換することに成功した反応で、触媒反応への応用が期待されます。また、不均一系金属表面上で、一酸化炭素と水素の混合ガス(合成ガス)から、炭化水素を製造するFischer-Tropschプロセスのモデル反応としても、注目を集めています。


四鉄上で発生させた[CCH]+フラグメントによるイソシアニドの活性化

成果4 成果4

 四鉄ブロモアセチレンクラスターから臭化物イオンを引き抜くことで、[CCH]+フラグメントの発生およびピラジンの配位による準安定化に成功しております。ピラジン配位クラスターは、極性溶媒中でピラジンが自発的に解離して、[CCH]+を発生させるため、これをルイス酸として用いたイソシアニドの活性化に取り組みました。 イソシアニドとの反応では炭素窒素結合の開裂が進行することがわかりました。様々な置換基を有するイソシアニドとの反応を行うことで、開裂の起こりやすさが、炭素-窒素結合開裂後に発生するカルボカチオンの安定性と一致していることが明らかとなりました。