分子分光学 [Molecular Spectroscopy]

理工学部専門科目,
対象: 理工学部物質創成化学科 3 年 (選択),
担当: 宮本量 (理工学研究科, 理工部物質創成化学科)
前期, 月曜日, 7--8 時限

シラバス (新カリ) はこちら


もくじ

always under construction ;-)

授業の概要

本講義のテーマは「分子を見る」です。

物質を構成している分子は様々な形をしていて, その独特な形のために, それぞれに特徴的な性質を示します. すなわち物質の性質は分子の三次元的な構造によって決まるのです. しかし分子は非常に小さくて肉眼でその形を見る事はほとんど不可能ですし, 顕微鏡を使ってさえも困難です. どうしたら分子の姿をとらえ, その構造を知ることができるでしょうか? 本講義のテーマである「分子を見る」は比喩ではありません. 分子に光 (電磁波) をあてて, その吸収や散乱などを観測することで, 分子の構造に関する有用な情報を得ることができます. これが分子分光学とよばれる学問分野です. 本講義では分子分光学の基礎と, 化学でよく用いられる振動分光法 (赤外線吸収およびラマン散乱) と紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトル (蛍光およびりん光) の原理について学びます.

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授業の目的・目標

本講義の具体的な到達目標は, 以下の通りです.

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準備学習 (予習・復習) 等の内容

予習・復習ともに, 教科書 (や参考書) をよく読むことが基本中の基本です.

予習: 教科書を少し先まで読み, ここで議論していることの行く先についてのイメージを持つようにする. 話の中に出てくる数式になじんでおく.

復習: 教科書の例題および講義で示された数式の展開を, もう一度自分の手でやってみる (写すのではない). 得られた数式の意味を考えてみる. 章末問題を解いてみる.

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教科書・参考書

教科書は次のものです (構造物理化学 I, II, 演習 から継続して使用). 指標表が必要です. 他の物理化学系教科書の付録その他で手頃なものを各自用意する必要があります.

以下に参考書を示しますが (玉石混交), このリストは随時追加されるかもしれません.

群論について

光と分子の相互作用・分子分光学について
量子力学・量子化学に関するもの (初級編)
量子力学・量子化学 (中上級編・古典的名著など)
古典的名著の邦訳には絶版になっているものが多数ある. とても残念. 図書館で参照してください. 一方, 英書では入手可能であると思われるので, チャレンジしてみてもよいでしょう.

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日程と内容(予定)

日程は次の通りです. 教科書の以下の各章の内容を中心に, 発展的内容も講義されます. なお, 順序は必ずしもこの通りではありません.

平常評価 (質問カードと小テスト, 20 点), 中間評価 (レポート, 30 点), 期末評価 (レポートまたは試験, 50 点). なお配点は目安です.

小テストや宿題などとして, 問題演習も随時行われます.

中間評価として, 読書感想文(仮称) を課します. さらに中間評価として, 課題を課すかもしれません.

期末評価の方法と内容は (いちおう) 未定です.

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質問について

質問は, 講義時間中に随時受け付けます. 私の説明を遮って質問しても構いません. 次の単元に進んでしまう前に, 現在の単元で理解があやふやな所がないようにして おきましょう. もちろん, 講義時間以外でも質問は歓迎します. オフィスアワーを活用してもいいですね (まあ, あたりまえなんですけど).

ということで,

質問すること, 疑問を持つことは, それ自体で価値があります.
大学以上のレベルでは, 問うことと答えることとは非常に近い関係にあると知りましょう.

すなわち,

何が分からないかが分かれば, ほとんど解けたと同じ.

みなさんはこれまでの初等中等教育において, 与えられた問いに正しく答えることが 求められてきたといっても過言ではないでしょう. しかし, 研究の先端や実社会で出会うであろう問題は, あらかじめ解答が用意されて いるものではありません. そもそも問題点が何であるかすら明確でない問題を解決しなければいけない場合も 多くあります. そこで正しく問うことが出来れば, 答えはそのすぐ先にありますが, 問い方が悪いとなかなか答えにたどり着けないばかりか, 誤ったゴールに到達してしまうかもしれません. また良い問いとは, 単にその答えが得られるだけでなく, その問いをきっかけにして 新たな視野が開けたり, 新たなより深い問いを生んだりするものです. そうであるならば, 問いに答えるということも, 単に暗記しておいた既存の知識を 思い出すコトではありませんし, ましてや誰かが既に解いている答えを探すことでもありません. それで終わらせてはいけません. 問いと答えとの間を絶えず行き来し, 思索を深めていくような, そういう ``知の営み'' を身につけることこそが, 大学で勉強することの価値だと思います.

そこで本講義では, 質問を発する訓練をしましょう. 毎回の講義の出欠調べを兼ねて, 紙片に質問を記入して講義時間の おわりに提出してください (質問カード; 紙片は, A4 の 1/8 が適当です (A7 相当)). 受け取った質問は, プリントにまとめて次回の講義時に配布するとともに, すべてサポート Web ページ (ここ) に掲載します. 出席とカウントされているかどうかの確認だけでなく, 他人の質問を見て, 良い質問のしかたを考えてみましょう.

という訳ですから, 質問の内容は評価の対象です.

一応, 質問は講義内容に関係するもの, としておきます. しかし, それに従わない権利は常にあります (もちろんその結果は質問者が負うわけだが). テストで白紙答案を提出する権利とか, 愚行権とも言うが.

以下の日付をクリックすると, その回の「質問とコメント」に飛びます.

コメントは, 期待されている答えとは, おそらく異なるでしょう. そのために, 質問者 (学生) をバカにしていると感じる人も, 一定数いることが予想されます. しかしむしろ積極的に, あえて直接の答えではない回答をコメントとしてつけています. つまりそれは, 安直に与えられた物を暗記して済ませるのではなく, 質問についてより深く考えてみることや, 思考を深めたり知識を広げたりするための方向性を, コメントとして示唆するようにしているということです. そうすることによって, 質問をきっかけとして学生自身に考えてもらい, 知識や学問の体系に関する新たな視点が開けてくることを期待します. 繰り返しますが, 安易に解答 (らしきもの) を暗記することは大学での勉強ではないと. 毎回質問を書いてもらうことは, そういった豆知識を覚えてもらうためではありません.

最近は受講学生の数が多いので, 配布プリントではコメントの文字数を節約し, また上下の行のすき間を活用する等, 密に充填されている傾向にあります. ぶっきらぼうな回答もまた, 反感を買う要素ではあります. しかし見掛けに騙されずに, 本質を読み取る能力を養いましょう :-)
(また, 数式の画像イメージは表示されません. ALT 属性のテキストを参照してください.)

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読書感想文 (仮称) について

学生のみなさんには, 化学/科学に関する興味を養ってもらいたいと思います.

科学・技術が十分に発達してしまった現代では, まるで魔法のようなことが 当り前のようにできてしまいます. しかしそれを当り前と思ってしまい, ブラックボックスをブラックボックスのまま 鵜呑みにして済ませてしまうという態度は, ある種の思考停止であり, 高等教育を受けよう (大学で勉強しよう) という志とは相容れない態度と 言えるのではないでしょうか. そして日常的にも, 拙速な「結果」を求めるあまり, 「メカニズムとプロセスに 対する関心」を失ってしまっているのではないでしょうか. 自然のメカニズムとプロセスを解明することが, 本来の自然科学の在りよう だったと思われます. 大学で勉強し, その後に社会に出て活躍することを欲する学生のみなさんには, そしてそのことが期待されているみなさんには, ぜひとも「メカニズムとプロセスに 対する関心」を育んでいただきたいと思います.

そこでこの講義では, 読書感想文 (仮称) の課題を課します; 物質科学・物理学・化学など (関連分野や派生事項を含む) に関する 一般向け解説・啓蒙書を一冊以上読み, その読書感想・評論・調査報告などを まとめてレポートとして提出してください. レポートは A4 版の用紙 2 枚以上の分量であることとします. 「おもしろかった」などというヒトコトしか書かないようなものはダメです. この課題の提出期限は, 5月28日 (月) の講義時間終了時 (15:50 JST) とします.

対象とする書籍は例をあげると, 講談社のブルーバックス・岩波新書・岩波文庫・ 岩波同時代ライブラリ・中公新書などの物理・化学・科学に関するものや, 科学者の伝記的なものが考えられます. また単行本でももちろん良くて, たとえば、``ハインズ博士「超科学」をきる''とか, みすず書房のハイゼンベルク・シュレディンガー・プリゴジン・朝永らの著作など でも結構です.

しかし残念ながら, 避けることが望ましい書籍をあげざるをえません. それはまず, 見開き二ページないし数ページである一つの事柄を説明したものの 集積になっている, いわゆる「豆知識本」です. 例えば (あくまで例示であり, 具体的な書名をあげて 著者・編者には申し訳ありません. 他にも類似書は多数あります) 「図解雑学 〜」とか「サルでもわかる〜」のようなものです. 系統的に専門的な学問の体系を身につけようという大学生に, ふさわしい書物とは思えません. また内容のレベルについても, 小中学生レベルの本では, ハッキリ言って 恥ずかしいですよ. みなさんは大学生なのですから. さらにオカルト本・ニセ科学本を, そうとはわからずに本物の科学と 信じてしまった論評は, 困りものです。論理的科学的思考力が疑われます. しかし取り上げ方によっては, これらの本でもいいかもしれません. あくまでも内容で評価しますから.

残念ながらもうひとつ, 重要な注意をする必要があります. それは **二重投稿は禁止** あるいは **自己レポの再利用は禁止** ということです. すなわち, 同学期の別の講義あるいは以前の学期で受講した講義で, 自分がレポートとして提出した読書感想文(仮称) でとりあげた書籍と同じものを, ここで再びとりあげるのは禁止します. その理由は, コピペ はダメ[*注]ということと, 学生さんにはなるべく多くの書籍を読んでほしいということです. もちろん, 自分が以前に読んだ本をくりかし読むことは 全然悪いことではありません. 自主的にいくらでも読み返してください. しかしこの課題では, その都度, 別の本を読んでくださいということです.

[*注] 過去の書籍リストは, この Web 上にあります. 本文まですっかりコピペしたのか (過去に事例あり(!)), それとも同一書籍で別文章なのかの区別はつけられませんので, 本課題の趣旨を考慮して, 同一学生の同一書籍の複数回使用を禁止とします.

なお文芸評論の手法に関しては,

「文学部唯野教授」, 筒井康隆, 岩波同時代ライブラリー
が, 評論の (感覚的評論から構造主義までの) 歴史的発展も踏まえていて面白い。 また論文やレポートの書き方については, をはじめとして多くのものが出ているので参考にするとよいでしょう。

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期末評価について

レポートまたは試験. どうするかは, いちおう未定です (笑).

下記のポリシーにしたがいます.

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最後に, または始めに

最後に, 「大学で勉強するとは, どういうことなのでしょうか ?」と, 問いかけておきます.

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rmiya@hirosaki-u.ac.jp