分子構造論

理工学部専門科目,
対象: 理工学部物質創成化学科 3 年 (選択),
担当: 宮本量 (理工学研究科, 理工部物質創成化学科)
前期, 水曜日, 1--2 時限

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もくじ

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授業の概要

本講義は, 量子化学分野の中のハイライトの一つである分子軌道法を中心に学びます.

まず簡単な分子軌道法に基づいて, 二原子分子の化学結合が多原子分子における化学結合へと拡張されます. そして分子軌道法により得られた結果が, 分子の諸物性と関連付けられます. これらの分子の構造や物性を考える際に, 分子の対称性は非常に重要な概念です.

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授業の目的・目標

本講義の具体的な到達目標は, 以下の通りです.

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準備学習 (予習・復習) 等の内容

予習: 教科書に目を通して, あらすじを把握しておく. できれば参考書等の別の書籍の該当箇所にも目を通しておく. なお, 数式の展開の詳細についてまで追う必要はない.

復習: 教科書の例題や講義で取り上げられた問題について, 自分の手を動かしてもう一度式を導出し (教科書・参考書やノートを写すのではなく), あるいは計算ができるようにする.

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教科書・参考書

教科書は次のものです.

章末問題の解答だけであれば, 教科書の巻末に略解がありますが, もう少し詳しい解説が欲しければ, 次の書籍に解法が解説されています. それだけでも 900 ページ以上あります. しかし個人的には, 掲載されている答案だけでは不充分だなぁと思うところも あるというのが, パラパラっと眺めた感想です. もともと問題数が多いのでしょうがないですね. あ, ちなみに英書であって, 和訳はありません.

注: 指標表が必要です
上記の教科書の欠点のひとつは, 群論に関係して, 指標表が十分に載っていないことです. 下に示す参考書などの別の書籍で補いましょう. または, ネット上には指標表があったりしますので, それを利用することもできます. たとえば Atkins の Physical Chemistry 9e のものなども出版社のサイトにあります. Atkins, Physical Chemistry 9e, online resource にもあります (Student resources の項の Tables for group theory をクリック).

以下に参考書を示しますが, このリストは随時追加されるかもしれません.

分子の対称性と群論に関するもの

分子軌道法に関するもの (入門編は普通の量子化学の本で良い, 以下はちょっと癖がある. また個別のプログラムの実践的なものについては省略) 量子力学・量子化学に関するもの (入門編) 量子力学・量子化学 (中上級編・古典的名著など)

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日程と内容(予定)

日程は次の通りです. 以下の各項目についての講義が行なわれます. 以下の物を総合して評価します.

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質問について

質問は, 随時受け付けます. オフィスアワーを活用しても良いですね. (まあ, 当たり前なんですけど。)

質問すること, 疑問を持つことは, それ自体で価値があります.
大学以上のレベルでは, 問うことと答えることとは非常に近い関係にあると知りましょう.

何が分からないかが分かれば, ほとんど解けたと同じ.

みなさんはこれまで, 初等・中等教育に於いて, 与えられた問いに正しく答えることが 求められてきたといっても過言ではないでしょう. しかし, 研究の先端や実社会で出会うであろう問題は, あらかじめ解答があるものでは ありません. そもそも問題点が何であるかすら明確でない問題を解決しなければいけない場合も 多くあります. そこで正しく問うことが出来れば, 答えはそのすぐ先にありますが, 問い方が悪いとなかなか答えにたどり着けないばかりか, 誤ったゴールに到達してしまうかもしれません. また良い問いとは, 単にその答えが得られるだけでなく, その問いをきっかけにして 新たな視野が開けたり, 新たなより深い問いを生んだりするものです. そうであるならば, 問いに答えるということも, 単に暗記しておいた既存の知識を 思い出すコトではありません. それで終わらせてはいけません. このような知の営みを身につけることこそが, 大学で勉強することの価値だと思います.

そこで本講義では, 質問を発する訓練をしましょう. 毎回の講義の出欠調べを兼ねて, 紙片に質問を記入して授業時間の おわりに提出してください (質問カード; 紙片は, A4 の 1/8 が適当です (A7 相当)). 受け取った質問は, すべてサポート Web ページ (ここ) に掲載します. 出席とカウントされているかどうかの確認だけでなく, 他人の質問を見て, 良い質問のしかたを考えてみましょう.
なお, 質問の内容は, 本講義に関連したことに限ります.

以下の日付をクリックすると, その回の「質問とコメント」に飛びます.

幸か不幸か (?) 受講学生が多くないため, コメントで解説や議論をする余裕があります. それを参考にして, 各自で教科書や参考書などで調べてみたり, より深く考えてみることが期待されます. そうすることによって, 知識に関する新たな視点が開けてくることでしょう. 繰り返しますが, 安易に解答(と思われるもの)を暗記することは大学での勉強ではないと. 毎回質問を書いてもらうことは, そういった豆知識を覚えてもらうためではありません.

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読書感想文について

学生のみなさんには, 化学/科学に関する興味を養ってもらいたいと思います.

科学・技術が十分に発達してしまった現代では, まるで魔法のようなことが 当り前のようにできてしまいます. しかしそれを当り前と思ってしまい, ブラックボックスをブラックボックスのまま 鵜呑みにして済ませてしまうという態度は, ある種の思考停止であり, 高等教育を受けよう (大学で勉強しよう) という志とは相容れない態度と 言えるのではないでしょうか. そして日常的にも, 拙速な「結果」を求めるあまり, 「メカニズムとプロセスに 対する関心」を失ってしまっているのではないでしょうか. 自然のメカニズムとプロセスを解明することが, 本来の自然科学の在りよう だったと思われます. 大学で勉強し, その後に社会に出て活躍することを欲する学生のみなさんには, そしてそのことが期待されているみなさんには, ぜひとも「メカニズムとプロセスに 対する関心」を育んでいただきたいと思います.

そこでこの講義では, 読書感想文の課題を課します; 物質科学・物理学・化学など (関連分野や派生事項を含む) に関する 一般向け解説・啓蒙書を一冊以上読み, その読書感想・評論・調査報告などを まとめてレポートとして提出してください. レポートは A4 版の用紙 2 枚以上の分量であることとします. 「おもしろかった」などというヒトコトしか書かないようなものはダメです. この課題の提出期限は, xx月 xx日の授業時間終了時とします.

受講者は少数ですし, みなさん私の講義をずっと履修してきたので, 充分に心得ていると思いますので, 適宜提出してください.

対象とする書籍は例をあげると, 講談社のブルーバックス・岩波新書・岩波文庫・ 岩波同時代ライブラリ・中公新書などの物理・化学・科学に関するものや, 科学者の伝記的なものが考えられます. また単行本でももちろん良くて, たとえば、``ハインズ博士「超科学」をきる''とか, みすず書房のハイゼンベルク・シュレディンガー・プリゴジン・朝永らの著作など でも結構です.

しかし残念ながら, 避けることが望ましい書籍をあげざるをえません. それはまず, 見開き二ページないし数ページである一つの事柄を説明したものの 集積になっている, いわゆる「豆知識本」です. 具体的な書名をあげて 著者・編者には申し訳ありませんが, 「図解雑学 〜」に類するものです. 系統的に専門的な学問の体系を身につけようという大学生に, ふさわしい書物とは思えません. また内容のレベルについても, 小中学生レベルの本では, ハッキリ言って 恥ずかしいですよ. みなさんは大学生なのですから. さらにオカルト本・ニセ科学本を, そうとはわからずに本物の科学と 信じてしまった論評は, イタイです。論理的科学的思考力が疑われます. しかし取り上げ方によっては, これらの本でもいいかもしれません. あくまでも内容で評価しますから.

なお文芸評論の手法に関しては,

「文学部唯野教授」, 筒井康隆, 岩波同時代ライブラリー
が, 評論の (感覚的評論から構造主義までの) 歴史的発展も踏まえていて面白い。 また論文やレポートの書き方については, をはじめとして多くのものが出ているので参考にするとよいでしょう。

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期末評価について

レポートまたは試験. どうするかは, いちおう未定です.
レポートの課題を 7/28 に出題します.

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最後に, または始めに

最後に, 「大学で勉強するとは, どういうことなのでしょうか ?」と, 問いかけておきます.

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rmiya@cc.hirosaki-u.ac.jp