分子構造論 (20100526)
M: 以下は宮本のコメント
- 08s3002:
- 今回,
電子系について考えました. では, 炭素が 6 コ, 二重結合が 3 コのベンゼンと 1,3,5-hex-tri-en [構造式 CH
=CH-CH=CH-CH=CH
併記] の違いはどのように表わすのですか ? M: 炭素間の隣接関係, トポロジー的接続関係が異なっていますけど, わかってますよね ? 隣接原子間の行列要素を
とするわけですから, 永年方程式は異なります. 各自の演習問題としてもいいんですけど, こんな感じですね.
ベンゼン |
ヘキサトリエン |
 |
 |
- 08s3011:
- 核分裂がおこる時, 電子はどのような挙動をとるのですか ? M: 核反応に関与するレベルのエネルギーと電子の持つエネルギーとは, 桁違いだと思われます.
- 08s3017:
- 身近で, 化学反応系にほとんど影響しない N
ですが, N
の結合エネルギーが大きいからということだけで用いられるのですか ? 他に理由はあるのでしょうか ? M: 質問の意味がわかりません. 何に用いられるという話なのでしょうか ?
- 08s3021:
- Hückel 法ではブタジエンの cis-trans 異性体を考慮しなくても良いということですが, それでは, cis-trans のエネルギー差を求めることはできないのですか. M: 今回の Hückel 法では隣接・結合しているかどうかというトポロジーだけが意味を持ちましたので, 幾何異性体によって行列要素 (分子積分) が異なるような手法を用いれば, 求めることはできるでしょう. まあ, 拡張ヒュッケル以上のレベルということでしょうか.
- 08s3028:
- エチレンのところで,
で定量的な値が欲しければ, 実験データから考察して
(エネルギーの原点),
kJ mol
と決まっているが, どのような実験から決めたのか. M: 比較したい物理量に応じて
を決めるようです. 各種の参考書を調べてみてください. // しかし, 共役系に対するπ電子理論においては, βの値そのものにはあまり重要性はありません.
いくつかの書籍から拾ってみると, 状況に応じて結構ばらばらですね.
- 炭化水素の非局在化エネルギー: ベンゼンの値が合うように, β = -104.5 kJ/mol (原田, 量子化学 上, p.368)
- ベンゼン系炭化水素の非局在化エネルギーと共鳴エネルギー: β = -(15〜18) kcal/mol = -(62.8〜75.3) kJ/mol (中島, 現代量子化学の基礎, p.210)
- 芳香族炭化水素のイオン化ポテンシャルと電子親和力: α = -7.06 eV = -681 kJ/mol, β = -2.49 eV = -240 kJ/mol (米澤, 量子化学入門 上, p.150)
- ポリアセンの最低遷移の吸収波長: ナフタレンの波長に合うように, β = -3.65 eV = -352 kJ/mol (米澤, 量子化学入門 上, p.160)
- 08s3032:
- ブタジエン分子の 4 個の分子オービタルの非局在化によるエネルギー安定化は
ブタジエン
エチレン
(10.25) でしたが, 無限個の分子オービタルの非局在化によるエネルギー安定化に限りはあるでしょうか. それともある値に収束するのでしょうか. M: 質問の論理が変. 普通は「○○それとも□□」と言えば, 逆説あるいは並列・対立だと思うのですが, 「安定化に限りがある」と「ある値に収束」は共に有限の値という同じことを言っていますネ. んで, 無限級数の和が発散するか収束するかは, 級数の性質によりますよネ. 共役鎖や共役環については一般解が得られているようなので, 調べてみてはいかがでしょうか.
- 08s3040:
- 折れ線形である水分子を直線形にするなど, 分子の形を変えることは可能なのでしょうか ? もしできるとしたら, どのような方法で, どのような力を加えることになるのでしょうか ? M: 手で持って引っ張るわけにはいきませんからね
:-P
例えば視物質といわれるレチナールの挙動が, どうやって生物の視覚となるのか, 調べてみてはいかがでしょうか ?
- 08s3043:
- 光子や電子は体積を持ちますか ? M: 仮に光子が体積を持っていたとしても, ボース粒子ですから, 複数の粒子が同一の状態をとることができますネ. すなわち, 体積に意味があるでしょうか ? また電子については, フェルミ粒子ですし, そもそも電子間でのクーロン反発エネルギーは指数関数的に大きくなるわけで, 体積に意味があるのかなぁ……っと.
- 08s3049:
- d オービタルの d
の三次元プロットがなぜ図 6.7 [絵は省略]のようになるのか ? M: いろんな表現方法があることが, 教科書 p.231 あたりから書かれていますね. 例えば図 6.6 (f) の網掛け部分を中心を通る縦軸の周りに回転させてできる形状 (d
は角度
に依存しない) を考えてみてください.
- 07s3032:
- 分子の持つ「におい」は分子軌道計算で求めることができますか ? M: 神託が欲しいのですか ? 私が yes/no を言うことに, どんな意味がありますか ? // 「におい」は, 分子軌道計算に限らず, 何らかの定量的な計算で求まるような種類の物理量でしょうか ?
Ryo MIYAMOTO, 2010-05-31