Research Overview

Brief Introduction for Our Research Objectives

Introdution

 

 アンモニアは世界で最も多く製造されている化合物の一つであり、主に化学肥料の原料となることから、 食糧を大量かつ安定に供給する上で欠かせないものです。 実際、20世紀初頭に工業化されたハーバー・ボッシュ法は、近代化により農作物の増収が求められた当時の食糧問題を解決へと導いており、 現代においても私たちの豊かな食生活を支えています。

 一方でハーバー・ボッシュ法は「世界で消費されるエネルギーの1%に相当する莫大なエネルギーが必要」という問題点も指摘されています。 原因は水素にあり、その製造に必要なエネルギーは、ハーバー・ボッシュ法で使用するエネルギーの90%を占めます。 また、水素の製造に化石燃料が使用されている点も見過ごせません。 環境への負荷を軽減しつつ、高効率にエネルギーを使用することは、現代社会に生きる私たちにとって重要な課題であることから、 環境調和性の高いアンモニア製造システムが求められています。

 アンモニアは酵素ニトロゲナーゼの働きにより、生体内でもつくられています。 ハーバー・ボッシュ法に比べて小さなエネルギーでアンモニアが得られていることから、 既存の方法を、こちらを模倣したシステムに置き換えられれば、環境・エネルギー問題や食料問題に大きく貢献できると考えられます。

[参考文献] 新化学技術推進協会, Nature Communications 2014, 5, 3737, Chem. Soc. Rev. 2014, 43, 5183

Purpose & Method


 以上の背景を踏まえ太田研究室は、ニトロゲナーゼの機能を人工的に再現する環境調和型触媒システムの開発をめざします。
具体的には、窒素を満たしたフラスコ内で、チタン錯体触媒の存在下、プロトン源と還元剤のマグネシウムを反応させ、アンモニアが触媒的に発生するか調査します。

    

 この反応では、マグネシウムを還元剤として使用しますが、マグネシウムにはエネルギーに関して、左図に示す特性があります。 特筆すべき点は、

(1) エネルギーを放出する際に温室効果ガスを排出しない
(2) 既存技術で再生できる
(3) 室温において固体で、かつ軽量であることから、貯蔵・輸送に向いている

ことであり、これらによりマグネシウムは、環境調和性の高いエネルギー源(還元剤)と捉えることができます。

[参考文献] The Magnesium Civilization

Originality & Creativity


 関連研究が、森美和子教授(当時北大院薬)らによって行われていました。 森先生らは、四塩化チタンとマグネシウム、ケイ素試薬を窒素雰囲気下で反応させ、アンモニア等価体を得ることに成功しています。 また四塩化チタンとマグネシウムとの反応から窒素を取り込んだ”Ti–N錯体”と呼ばれる化学種が生成することも、東工大(当時)の山本明夫教授によって報告されています。 太田研究室で行う反応も、山本先生、森先生らの手法を参考にしながら進めていきます。

 ところで”Ti–N錯体”という曖昧な表現がなされていることから推測できるように、上記反応では、実際に働いている化学種の構造は明らかになっていません。 チタン、マグネシウム、窒素が集積した化学種が生成しているのではないか、と予想できますが、そのような状況において構造を決定するのは、困難です。 そこで金属上に補助配位子を導入します。この工夫を図ることにより、構成元素の多核化を抑制し、単一分子として”Ti–N錯体”に相当する化合物の構造決定が可能になる、と期待できます。 これが、先行研究と我々の研究との異なる点です。 触媒の構造を明確化し、反応機構にも迫ることにより、マグネシウムを用いた物質変換反応を系統的に理解することをめざします。 加えて補助配位子の導入は、金属上の電子密度チューニングによる反応効率の向上、さらには生成物の立体制御への効果も期待できます。

[参考文献] Yakugaku Zasshi 2005, 125, 51

In the Lab.


 太田研究室では、右図(左)に示すサイクルに従い、研究活動を進めていきます。
 まず、錯体触媒として働くことが期待される遷移金属錯体を合成します。 次にその錯体を用いて触媒反応を検討し、結果を評価します。 それを元に、より高活性あるいは既存の問題点を解決できる錯体をデザインし、その合成に取り組むことで、1サイクルが完結します。 このサイクルを繰り返すことにより、研究を少しずつ進展させていきます。 また所属学生が、右図(右)に記述した研究遂行能力を獲得することを期待しています。

Concept for future (Contribution to Aomori)


 上記の触媒開発を進展させ、将来的には、右図に示すマグネシウムを基盤とするエネルギー社会を青森県に実現したいと考えています。

 まず、海中に豊富に存在する塩化マグネシウムをとりだします。 これを青森県の強みである風力および地熱エネルギーを用いて、マグネシウムへと変換します。 この過程は、自然エネルギーをマグネシウムへと貯蔵することに相当します。 蓄えたエネルギーを、上記研究で開発した方法を用いて、アンモニア合成に使用します。 このとき、副生する塩化マグネシウムをマグネシウムへと再生すれば、循環サイクルが成立します。 合成されたアンモニアは肥料へと変換し、農作物生産に利用します。

 このようなエネルギー社会を実現することにより、マグネシウムの精錬と利用を担う産業の青森への創出が期待できます。 また、エネルギーを自ら生み出し、自ら消費する社会となるため、エネルギーの地産地消ということができます。

 この構想は、化学を専門とする私たちの力だけでは実現不可能であり、他分野の専門家や企業、地域社会との連携が必須となります。 特に、マグネシウムの精錬に詳しい金属分野、自然エネルギーの活用について意見を述べられるエネルギー分野、 合成したアンモニアを化学肥料として利用する際の土壌への影響等に関する知識に明るい農学・生物学分野の研究者の協力が必要です。
 この構想に関するご賛同はもちろんのこと、ご意見やご質問もお待ちしております。

Network for the Polymerization Reactions


 前職での縁を活かして、新規重合反応の開発にも取り組みます。 西井先生、戸田先生は共に高分子化学が専門であり、ポリマーに対する情熱と深い知識を併せ持っておられます。 両先生方の有する特徴と錯体合成が得意な弘前の研究環境を融合させることにより、 先例のない構造を持ち、興味深い機能を発現する重合体の合成をめざします。

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