JSPS科研費「複数核種と複数原理に基づく宇宙線年代決定法の新展開」

平成25年度から4年間の予定で,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤(A))事業「複数核種と複数原理に基づく宇宙線年代決定法の新展開」(研究代表者・弘前大学・堀内一穂)が開始されております.本ページは,その内容と成果を広く一般に公開するためのものです.




南極アイスコアと赤道太平洋堆積物より地磁気極小期の宇宙線変動史を詳細に解明

 地球大気に降り注ぐ宇宙線の強度変動は,地磁気の変動や太陽活動によって支配されていると考えられており,過去の気候・環境変動の指標として近年重要視されています.しかし,宇宙線強度の詳細な変動史は,過去数万年間を除けば,未解明なままでした.弘前大学理工学研究科堀内一穂助教らは,東京大学大気海洋研究所の山崎俊嗣教授・同総合研究博物館松崎浩之教授国立極地研究所の藤田秀二准教授・本山秀明教授と共同で,南極アイスコアと赤道太平洋堆積物のベリリウム10を高時間分解能で分析することで,約19万年前に起こった地磁気極小期(アイスランドベイズンエクスカーション)の宇宙線強度変動史を詳細に解明しました.その結果,①地磁気極小期に伴う際立った宇宙線強度の上昇は約7000年間継続したこと,②そのピークでは現在と比較して約2倍の宇宙線が大気に降り注いでいたこと,③当時の宇宙線強度の変動には地磁気に由来すると考えられる約4000年と8000年の周期性があったこと,④地磁気極小期には,太陽活動に由来すると考えられる1700年の周期変動と数百年スケールの周期変動が顕著に認められることが明らかになりました.こうした成果は,長期間にわたる宇宙線強度の上昇が当時の気候や生命に与えた影響や,地質時代の太陽活動周期を評価するための手がかりとなるものです.また,宇宙線変動に基づいて様々な古気候記録を全球対比できる可能性にも,つながる成果です.

 なお,本研究は,日本学術振興会の科研費(Grant Number: 22241003, 22244061, 25247082)の助成を受けなされたものです.本成果は,欧州科学雑誌「Earth and Planetary Science Letters」に2016年4月15日付けで掲載されます.

“位置図” 詳細:PDF版(3.5MB) | Web版(極地研広報室より)



東奥日報 2016年4月13日(水)付け1面に掲載されました!
陸奥新報 2016年4月13日(水)付け1面に掲載されました!

 

研究集会研究集会「複数核種と複数原理に基づく宇宙線年代決定法の新展開」(H.27.11.7-8開催)

ホリウチ研ニュース

|Home|