BYUの化学系の実験室の戸には窓がついていて、外から中を覗くことはできますが、全てオートロックになっているため、部外者が簡単に実験室には入ることはできません。化学系の実験室では、多くの化学薬品を使うため、盗難防止のことを考えると、大変よいことだと思いました。もちろん、窓があるので、誰か訪ねて来た場合には、すぐわかります。
器具や試薬は、1階にあるストックルームで、研究室名を言って買うことになります。そのため、「○○研究室の○○が、○月○日に、○○を買った」というデータは、全てストックルームのコンピュータに記録されます。これは、試薬の管理という意味でも、大変よいことだと思いました。ストックルームには、大抵のものが置いてあり、時には専属のスタッフがアドバイスもしてくれます。もちろん、置いていないものも、ストックルームを通して注文することができます。
それから、米国では、どこも同じだと思いますが、BYUでも、保護メガネ、実験用手袋は、皆、必ずしています。また、実験の殆どが、ガスの排気のできるドラフト内で行います。各実験室には、シャワーが設置されていて、万一有害試薬が皮膚につくなどした時に、大量の水を使って、患部を洗うことができるようになっています。近年、日本の大学でも、安全に関する意識の高まりから、かなり改善されつつありますが、ドラフトの数の少なさをはじめ、まだまだ米国と比べると、遅れている感じがします。化学の実験をする際には、是非、言われなくても、メガネをかけ、手袋をして、自分の身を、守るように心掛けて下さい。
私の場合、毎週3回のグループミーティングがありました。火曜日の午後5時から1時間程行われるのが、アイザット/ブラッドショウ/サーベージグループによるもので、全員が、1週間に行った実験結果を報告し、議論する研究のためのミーティングです。また、水曜日と金曜日の正午から1時間行っていた、サーベージグループのミーティングでは、学部学生も多くいたことから、研究の他に、教育的な面もあるミーティングで、水曜日の方は、有機化学の問題(反応機構)を解くことと文献紹介、金曜日が研究報告会となっていました。
有機化学の問題を解く際に、米国らしいと思ったのは、とにかく学生さんが、積極的に黒板の前に来て、問題を解こうとすることです。日本の講義で問題を出して、あてて黒板に書くように言っても、問題が解けない場合には、なかなか前に出てきてくれません。しかし、米国人は、解けなくても解けても、とにかく前に出てきて問題を解こうとします。しかも、あてられたというわけではなく、幾つかある問題から自分で選択して「私が、この問題をやる。」と言って前に出てきます。 日本人は、どうしても、問題が解けなかったり、間違ったりしたら 「恥ずかしい」という意識が働くのでしょうが、米国人は、問題を出されているのに、解きに前に行かないことが、一番 「恥ずかしい」と感じるようです。「とにかく、トライする。それで、だめならしょうがない。」という気持ちなのでしょうか。この、積極性は、日本人も真似をしたいところです。
グループミーティングは、順番に誰かが、御菓子を買ってきて、毎回、それを、食べたり飲んだりしながら行います。グループは、ファミリーのようなものなので、非常にくつろい感じで、日本では考えられませんが、机に足をかけたりしている人までもいます。しかし、議論はとても活発で、思ったことは何でも言える雰囲気があります。それと感心したのは、先生方が、学会出張等で留守の場合も、学生さん達だけで、普段とかわらず、グループミーティングが行われることです。そして、普段通りに、活発に議論が行われます。この辺は、各人の研究グループの一員としての意識の高さによるものだと思いますが、素晴らしいことだと思いました。
そして、グループミーティングの最後には「Keep good Work!(良い研究を、続けて行こう!)」と声をかけあって、終了します。