私が文部科学省に提出した在外研究員としての研究課題は「ホスト−ゲスト化学に関する研究」であり、具体的には「亜鉛、カドミウムイオンに対する蛍光性化学センサー(Fluorescent Chemosensors for Zinc and Cdmium Ions)」について1年間、米国で研究を、行ってきました。
私の所属していた研究グループは、世界的に大変有名な、ブリガムヤング大学(Brigham Young University) 化学・生化学科のブラッドショウ(J. S. Bradshaw) 博士と アイザット(R. M. Izatt) 博士の両名誉教授と、私と同世代の若い准教授の サーベージ(P. B. Savage) 博士の3人が中心となって組織された研究グループです。(但し、私は、普段はサーベージ博士の研究室にいたため、有機化学・生化学・マイクロバイオロジーの研究者によるサーベージ博士のもう一つの研究グループのミーティングにも、参加していました。)
写真後列左端がアイザット先生、後列左から3番目がブラッドショウ先生、前列左端がサーベージ先生です。この写真は、グループミーティング終了後に撮ったものですが、米国、ペルー、ナイジェリア、インド、そして日本の私と、出身国は様々です。
上に示した本は、米国で1978年に出版されたアイザット先生らが編者となり、ブラッドショウ先生や世界で最初にクラウンエーテルを合成したペダーセン氏他が執筆した名著「Synthetic Multidentate Macrocyclic Compounds」の日本語版(邦題「クラウンエーテルとクリプタンドの化学」)です。 ペダーセン氏は、1987年にクラム博士、レーン博士と共にノーベル化学賞を受賞しました。アイザット先生やブラッドショウ先生も、色々な賞を受賞し、大環状化合物の国際会議では、アイザットメダルがあるような大変著名な先生方です。もしノーベル賞が3人ではなく、5人に与えられるのなら、受賞していたかもしれません。
(ノーベル化学賞受賞者のペダーセン氏は、ノルウェー人と日本人のハーフで、修士修了後ただちに米国の化学薬品会社デュポンに入社したため、博士号をもっていません。そのため、儀礼的に博士と呼ばれるとよい顔をされなかったそうですので、このこでも「氏」と致しました。)