*この「米国留学体験記」は、 "弘前大学理工学部月間ホームページ2002年8月号" として作成したものです。
弘前大学理工学部 川上 淳 私は、平成13年6月から平成14年5月迄の1年間、文部科学省の在外研究員として、米国ユタ州プロボにあるブリガムヤング大学(BYU)化学・生化学科において、研究生活をおくる機会に恵まれました。これ迄、学会等での渡米経験はあったものの、1年間という長期にわたって米国で生活するということは初めてでありあり、様々な素晴らしい経験をするこができました。そこで、私の米国での生活を少し御紹介したいと思います.
ユタ州は、アメリカ大陸の西部、ロッキー山脈の西側に位置します。ユタ州最大の都市は、ソルトレイクシティーです。2002年に冬季オリンピックが開催されたときには、TV 等で、色々と紹介されたことと思います。また、アメリカプロバスケット NBA のファンの人にとっては、マローンやストックトンのいたユタジャズの本拠地として、御存知の方も多いことでしょう。私が住んでいた、ブリガムヤング大学(BYU)のあるプロボはユタ州第二の都市で人口は約七万人、ソルトレイク国際空港から車で約1時間程の所にあります。
ところで、ユタ州を語る上では外すことのできないことに、モルモン教会の存在があります。ソルトレイクシティーは、そもそもモルモン教徒によって建設された街であり、ユタ州の大部分が、彼等によって開拓されたからです。ユタ州の犯罪率は、全米平均の半分と、とても安全な州であるということから、近年、他の州から移り住む人も多く、人口におけるモルモン教徒の割合は、ソルトレイクシティーでは、50%ということです。しかしながら、ユタ州全体を見ると、75%とかなり高い割合であることがわかります。モルモン教会は、正式には末日聖徒イエスキリスト教会といい、1830年にジョセフ・スミスによりアメリカ東海岸で組織されました。キリスト教の中でも新興なモルモン教は、既存の宗派から激しく迫害され、1844年には、開祖スミスは殺害されてしまいます。スミスの後を継いだ、ブリガム・ヤングは、信徒を率いて、西へ西へと一年がかりでアメリカ大陸を横断し、1847年に、ついにソルトレイクバレーにたどり着き、現在のユタ州の基礎がつくられました。日本で有名な、モルモン教徒としては、TVタレントのケント・デリカット氏やケント・ギルバート氏がいますが、私の出会った、モルモン教徒の米国人は、宗教的な理由で、タバコやカフェイン、アルコール類を摂取しない以外、普通の米国人と、なんら変わりありませんでした。また、私の様に、モルモン教徒でないものに対しても、差別することなく、とても親切にして頂きました。米国は、移民の国であり、宗教の種類も様々です。そして、何らかの宗教を信仰しているのが、あたりまえの国ですから、無宗教に近い、日本とは、感覚的に随分違うものだと思いました。
ユタ州プロボには、BYU(ブリガムヤング大学)とUVSC(ユタバレー州立大学)の2つの大学があります。UVSCは、大きな湖であるユタレイクのそばに位置する州立の大学です。一方、私のいたBYUは、大学のシンボルとも言える「Y」の字が掲げられた通称Yマウンテンのふもとににある全米最大の私立大学です。BYUの学生数は約二万七千人、大学院生まで含めると三万人を越える大きな大学です。大学の名前からもわかるように、モルモン教会がバックアップしている大学ですが、大学の教員が、モルモン教徒である必要はなく、学部学生のモルモン教徒の割合は高いものの、ポスドク(博士研究員)や大学院生は、世界各地から来ているので、モルモン教徒以外の割合が逆に高いくらいです。ちなみに、私のいた化学・生化学科に所属する大学院生の半分は、中国人でしたが、もちろん皆、モルモン教徒ではありませんでした。というのは、中国本土では、モルモン教がまだイリーガルだからです。