月刊ホームページ2002年2月号

Topへ 1.はじめに 2.どうすれば光るの 3.特徴は 4.もっと明るく 5.何ができるの 6.日本の施設 7.おわりに

2.どうすれば光るの?
放射光って、なに?
まずは放射光ってどういうものかを説明します。電子やイオンなどの荷電粒子が加速度運動をすると光を輻射します。トランシーバや携帯電話のアンテナから通信のための電波が出るのは、アンテナの中の電子が激しく振動しているからです。荷電粒子が加速度運動をするためには何らかの力が必要です。磁場によるローレンツ力によって荷電粒子の進行方向が曲げられ発生する光、これがシンクロトロン放射光(単に放射光とも呼びます)です。

放射光は灯台の光みたい
普通、荷電粒子の加速度運動により生じた光は全方向に放射されます(図の左)。でも、荷電粒子の速度が光速に近づくと進行方向の極限られた範囲にのみ輻射するようになります(図の右)。人間が光速近くで移動すると、視野がぐーんと進行方向に狭まり後ろにある物体が前から見えるようになるという話を聞いたことがありませんか?あれと同じで、光速度不変の法則からくるものです。輻射される光の広がり角は荷電粒子の運動エネルギーに逆比例します。荷電粒子の速度が速いほど、灯台の光のように指向性が高く明るい光になります。灯台は反射板で後ろの光を前に集めていますが、放射光は後ろに何もなくても勝手に前に集まるのです。
引用文献[2]より

放射光は進化する

引用文献[3]より
放射光を得るために荷電粒子は通常電子あるいは陽電子を用います。イオンだと重いので光速まで加速するのが大変だからです。放射光を利用し始めた当初は、放射光を連続的に作るため電子線を出し続けなければいけませんでした。これでは電子がもったいないですね。そこで電子を円軌道を描くようにうまく磁場で曲げ、周回運動をさせる専用リングが作られるようになりました。これを蓄積リングと呼びます。鉄砲玉を何発も打って光を作っていたのが、同じ玉で何度も光を出させるようにしたのです。これにより効率よく安定な放射光が得られるようになりました。蓄積リングの周長は小さなものでは数十m、大きなものでは1Km以上のものもあります。図にあるように蓄積リングは入射器、偏向磁石、高周波加速空洞4極磁石などで構成されています。入射器で電子を加速し蓄積リングに打ち込みます。偏向磁石は電子を円軌道にするために配置され、ここから放射光が出てきます。電子から放射光が発生するということはその分電子はエネルギーを失うので、外から何らかの方法でエネルギーを補充してやらなければ電子は同じ円軌道を保つことができません。このエネルギーの補充高周波加速空洞で行われます。4極磁石は電子が円軌道から外れないようにするものです。
あとでお話するように、蓄積リングの性能をきめるパラメータにエミッタンスというのもがあります。このエミッタンスが小さいほど、明るい放射光を取り出すことができます。新しい放射光施設が世界中で作られるようになるにしたがい、このエミッタンスはどんどん小さくなっています。また偏向磁石から出てくる放射光以外にも、挿入型光源という磁石を、蓄積リングの直線部に配置することにより、偏向磁石では得られないもっと明るい、もっと周波数の高い放射光が得られるようになってきています。電子のエネルギーがより大きい蓄積リングも作られています。放射光はどんどん進化しているのです。


1.はじめに 2.どうすれば光るの? 3.放射光の特徴は?

驚異の光:放射光
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