電子をもつ有機化合物については,
量子化学の勃興期から研究の対象として取り扱われてきました。
そして種々の反応性の指標が提案されています。
ここではその中から次のものを取り上げて,
分子の反応性について考えてみましょう。
中性の原子が単独で存在している場合には, 原子核の正の電荷とその周りを取り囲んでいる電子による負の電荷が つりあって, ちょうど零になっています。 しかし分子を形成すると, 原子の種類による電気陰性度の違いや, 分子の幾何学的な構造などの理由により, 電子の分布に偏りが生じます。 このために核の電荷とのバランスが崩れて, 分子の中のある部分では正の, また別の部分では負の電荷があるかのように見えます。
この様な電荷によるクーロン力によって分子どうしが引き付けられ, 化学反応を引き起こすと考えられています。
一方, 福井謙一博士は, 化学反応に関係する電子はエネルギーのもっとも高い フロンティア電子だけであるという, フロンティア電子理論を提案しました。