ポリオレフィンの合成には、従来エチレンやプロピレンなどの汎用オレフィンがよく用いられてきました。一方で、新しいオレフィンの重合を達成できれば、新しい構造をもつポリオレフィンを合成できると期待されます。当研究室では、パラジウム錯体触媒を用いることで、これまでほとんど単量体として用いられることのなかったオレフィン類の重合について研究を進めています。特に、精密な異性化を伴う新重合を開発することで、様々な新構造高分子の合成や、高分子の立体構造の高度な制御を目指しています。

例えば、活性種であるカチオン性Pd種がアルキル鎖上を移動する反応を利用し、様々な環状ユニットとオリゴメチレン鎖が交互に連結した高分子群の精密合成に成功しました。高分子中の環構造の立体化学の高度な制御も達成しました。生成高分子は、規則正しく並んだ環状構造に由来して液晶性や高耐熱性など独特な性質を示し、繰り返し単位のオリゴメチレン鎖の長さを変えることで、それらの物性を精密かつ容易にチューニングすることができます。

ジエンやトリエンの環化異性化重合では、高分子反応が可能な活性オレフィンやゲル形成が可能なバルビツール酸構造など、従来は導入困難であった官能基をポリオレフィン上に位置選択的に導入することができます。この場合も、環構造の立体構造はよく制御されています。

D. Takeuchi, Y. Chiba, S. Takano, K. Osakada, Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 12536-12540.

S. Takano, D. Takeuchi, K. Osakada, N. Akamatsu, A. Shishido, Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 9246-9250.

D. Takeuchi, S. Takano, Y. Takeuchi, K. Osakada, Organometallics 2014, 33, 5316-5323.