大気圧から真空状態へ
取扱い注意事項
<実際に機具を操作する前に>
まず、後にベーキングコントローラーを用い、チャンバー全体を熱するので、それに先立って全体にテープヒーターを巻いておきます。その際に、テープヒーターが高温になり、プラスチックの部分、ターボ分子ポンプ(TMP)の部分をいためる可能性があるので、その部分にはテープヒーターが掛からないように注意します。
また、全体に効率良く熱を伝えるために、テープヒーターの上から全体にアルミ箔を巻きます。全体を覆って下さい。これは後から必要になる作業なので、必ずしも今すぐにやらなくてはいけない訳ではありません。(が、やっておきましょう。)
アルミ箔・テープヒーターは大体このように巻きます。プラスチックの部分、
ターボ分子ポンプ(チャンバーの下のほうにあります,手順Bに本体の写真
が載っています)にかからないようにしましょう。
<バルブの確認>・・・Aのバルブは閉め忘れないようにしましょう。
真空状態を作る時にAを閉め、BとCは開けておきます。ここは気体を蒸着させる時に用いる箇所
です。Bからチャンバー内部は非常に狭くなっており、Bを開けるだけでは、しっかりと引けるとは言
えません。そのためにCを開けて気体分子の吸引の手助けをさせます。
A・・・ベローズバルブ(外側)
B・・・バリアブル・リークバルブ
C・・・ベローズバルブ(内側)
*注:AとCは同形のバルブですが、用途は異なるので注意しましょう。
!! ここからの手順は1つ1つが大事です。
1つでも飛ばさないようにして下さい。
@ POWER(入力ON・OFF)スイッチをONにします。(通常はONになっている事が多いです)
上から3番目のユニット・排気操作パネルにあります
・・・隣の、RP(ロータリーポンプ)のスイッチと間違わないように。
*停電などで電気の供給が一度止まってしまった場合で、ブレーカーが落ちている場合は、漏電ブレーカー(1番下の
ユニットにあります)の「RESET」ボタンを押してからではないとブレーカーが上がりません。
POWER(入力)ONス イッチ(右下)
・・・上から3番目のユニット・排気操作パネルにあります。
RP・ONスイッチ(左上)
・・・次の手順で用いるRP(ロータリーポンプ)のON・OFFスイッチです。
A RP(ロータリーポンプ)をONにします。操作を行う前に(注)をしっかり参照する事
この時、低真空計(サーモカップル真空計・正面向かって右上)が、10〜7pa以下になったら速やかに次の手順を実
行する事。
(注): RP(ロータリーポンプ)の単体で実現できる真空圧はあまり高くありません。また、このポンプは逆止を用いて
いますが、ある一定の真空度を超えると、RP付近の圧力とその油の蒸気圧の関係より、油の分子が逆流してし
まいます。これを防ぐために速やかに次の手順に入りましょう。
サーモカップル真空計・・・上から3番目のユニット・排気操作パネルに
あります。低真空度の測定に用います。
B TMP(ターボ分子ポンプ)操作スイッチの「START」を押してONにします。
この時、始めのうちは"OPERATION"の中の1番上の「ROTATION」(ロータの運転表示灯)と上から3番目の
「ACCELERARION」(ロータの加速表示灯)の2つが点灯する事を確認します。
その後5分ほどすると「ACCELERATION」が消え、上から2番目の「NORMAL」(ロータの定常運転表示)が点灯するの
で、それを確認します。
ここでは、ロータリーポンプの時のようにすぐに次の手順に移る必要はありません。
「NORMAL」が点灯しない時は、装置の破損・空気の漏れが考えられます。エラーがあると、ピーという音とともに"ALARM"の中の異常
表示灯が点灯します。説明書を参照して対処して下さい。
MPコントロールパネル・・・上から3番目のユニット・排気操作パネルにある、
"赤"で書いてあるところがこの段階で主に用いるところです。
MP(ターボ分子ポンプ)本体(右)・・・ここをベーキングしないように注意。
PR(ロータリーポンプ)本体(左)・・・ポンプ中の油の逆流に気をつけましょう
C 電離真空計(デュアル真空計)のPOWERをONにする。(注)参照
ここにおいて、"FIL"(フィラメント)をON、また、"1/
10"もONにしておきます(フィラメントをいためないように)。
10−6TORR(トール)よりも内部の圧力が高い場合はすぐにデュアル真空計のスイッチを切ります。
注: この時 10−7〜10−8TORR以下なら良いのですが、それ以上の圧力(10−6TORR以上など)の場合
になったら、すぐにデュアル真空計のPOWERをOFFにします。というのも、この真空計はチャンバー内部に電流
を流すフィラメントがあり、その付近をとおる分子がフィラメントに微小電流を流す仕組みになっています。この
時、フィラメント間を通過する分子が多い(=圧力が測定領域より高い)と電流が流れすぎて、フィラメントを破壊
してしまいます。注意してください。
デュアル真空計・・・1番上のユニット向かって左側にあります。原理は、フィラメント
に電流を流すことにより、真空計内の気体分子をイオン化し、そ
れによって運ばれる電流を測り、気体の密度を測るというものです。
*"赤"で書いてあるところが今の段階で主に用いるところです
・ "FIL"(フィラメント)を押すと、"通常動作モード"になります(押さないと、"休止モード"になっています)。"DEGAS(脱ガスモー
ド)"(フィラメントの周りを温め、フィラメント付近に吸着したガスを吸い出し、正確な真空度を求めることが可能)は通常は用いま
せんが、真空計を休めたのちに、再び用いる時などに、フィラメント付近の内壁の周囲にガスが付着している時があるので、
そ
のようなときに用いると便利です。
・"1/1"・・"通常の使い方"ということですが、フィラメントのことを考慮してあまり使いません。
・"4/1"・・強い電流を流すため、圧力10−8Pa以下でノイズを軽減し正確な値を表示させることができます。これはフィラメントを
いためるのであまり使わないようにしましょう。使うときも長い時間は使わないようにします。
・ "1/10"・・弱い電流を流すため、圧力が高いときのフィラメントの消耗を軽減します。反面、圧力が低いときには、多少誤差が出
ます。
普段はフィラメントをいためないように、"1/10"を用います。(あまり誤差は気
D 7×10−8TORR(トール)
以下位になったら電熱線・アルミ箔を巻いた後、ベーキングコントローラーの(入
力ON / OFF)をONにする。(注)参照
ベーキングは丸1日、最低でも半日続けると良い。
最初にも書いたように、ベーキングコントローラーをONにする前に電熱線を巻いておきます。その際に、電熱線が高
温になりプラスチックの部分・ターボ分子ポンプ(TMP)の部分をいためる可能性があるので、その部分にはかからな
いように注意します。また、全体に効率良く熱をまわすために、電熱線の上から全体にアルミ箔を巻きます。しっかりと
全体を覆うようにして下さい。また電熱線は高温になるので十分に注意してください。
(注):この後、全体を温めると、一旦、装置内部(内部壁など)についている分子がとれ、真空度が悪くなります(内部
の圧力が高くなります)。この時に10−6TORR以上になると、前の手順同様、空気漏れの可能性が高い
ので、デュアル真空計のPOWERをOFFにします。(そのため、真空度が悪くなることを考慮して10−
8TORR半ばまで待ちます)
ベーキングの意味:
ベーキングはチャンバーの内壁に吸着した気体分子を、内壁を暖めることによって引き剥が
し、ポンプで吸い出すための作業です。
分子が内壁から離れるため、ベーキング開始時には真空度は悪くなります(真空度が悪くなり
すぎるとデュアル真空計を壊してしまうので注意)。しかし、この状態である程度の時間(最低半
日続けると良い)続ける事によって、ポンプの吸引により、また真空度は良くなります。(その後
、さらに半日以上おくと良いでしょう)
その後、ベーキングをやめてから内部の温度が下がってくると、冷やされた浮遊している分子
は再度、内壁に付着します。この事によって、さらに良い真空度が得られます。
ベーキングコントローラー・・・上から2番目のユニットにあります。
@ABと書いている所はそれぞれ,テープヒーターについての温度調節器です。それぞれ、150℃
にセットしているのを確認しましょう。あまり高くすると、装置をいため、ブレーカーが落ちる原因にも
なります。
(注):入力(ブレーカー)容量を越えないように各ヒーター接続しましょう。
*"赤"で書いてあるところが今の段階で主に用いるところです
E ベーキングコントローラーをOFFにして、ベーキングをストップします。
室温に戻るまで半日ほど待ちます。
ベーキングによって、装置内部の気体分子が外に出ます。再度、室温にすることによって、室温における気体分子の装置内部から出る量はかなり下がり、良い真空度を得られます。
ベーキング終了時より真空度は2桁ぐらい良くなります。(例:ベーキングを5×10−8でストップすると、約5×10−10に達しま
す。)