第11回

日時:2017年6月30日(金)  16時から
場所:弘前大学 理工学部 2号館10階 1005室

講演者:

  • 阿部健氏(大阪市立大学大学院理学研究科)
    「非減衰初期値に対する2次元外部ナヴィエ・ストークス方程式の時間大域可解性」
    本講演では2次元ナヴィエ・ストークス方程式の外部問題をディリクレ境界条件の下で考える. 2次元外部問題は空間無限遠方で漸近的に定数になる定常解が存在することが知られているが, 非定常問題の場合にはあまり結果が知られていない. 本講演では有界かつディリクレ積分有限となる初期値に対する時間大域可解性の結果を報告する. これにより特に漸近的に定数になる時間大域一意解の存在が従う.

  • 赤木剛朗氏(東北大学大学院理学研究科)
    「Stability analysis of asymptotic profiles for fast diffusion」
    プラズマの特異拡散現象を記述する Fast diffusion 方程式では, 拡散係数が解の減衰と共に発散する. そのため, 有界領域に於ける斉次ディリクレ境界条件の下では, 拡散過程が有限時間で完了し, 解は領域全体で零になる. Berryman-Holland ('80) は, そのような消滅解の漸近形状を決定し, 初期値によらず漸近形が一意的に定まる場合には, それが大域安定であることを証明した. その後も, 高次元を含むより一般的な状況下で, 解ごとに漸近形状が一意的に定まるかという問題や収束の位相の改善等について緻密な解析が行われてきたが, 漸近形の安定性という観点の研究は進展しなかった. 本講演では, Fast diffusion 方程式に対する解の漸近形の安定性に関する講演者のこれまでの取り組みについて解説する. ここでは特に, 漸近形の候補が複数存在し, 初期値のとり方によって解の漸近形が変わってくるような場合を対象に入れる. はじめに漸近形の安定性に関する概念の定式化や (関数空間上で) 孤立する漸近形に対する安定性の判定条件 (梶木屋龍治氏(佐賀大学)との共同研究) について概説し, その後, 集積した漸近形の安定性解析について近年得られた結果, 及び最小エネルギーをとる非退化な漸近形の指数安定性に関する結果について解説する. そこで \Lojasiewicz-Simon 不等式に代表される勾配不等式が安定性解析に於いて果たす役割についてもコメントしたい.