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はじめに

みなさんは ``化学 (Chemistry)'' というと, どんなことを想像するでしょうか ? ビーカー・フラスコ・試験管に, いろいろな色の液体が入っていて, それを混ぜると色が変ったりブクブクと泡立ったり... でしょうか。 中世の錬金術に源をもつ化学には, 確かに実験科学としてのそのような面があります。 しかし化学も近代になってからは, 物質の性質や化学反応を, 博物学的な経験則の集合ではなくて, 物理的な原理にしたがう科学的な法則に基づいて理解するようになりました。

そして, 分子の性質を計算によって求める試みがなされてきました。 これは実際の物質についての理解を深めるとともに, 未発見の物質の性質を予測することもできます。 また現実には手にできないような状況を仮想的に作り上げることもできます。 特に最近は, 計算機 (コンピュータ) の発達により, このような計算を比較的短時間でだれでもが行なえるようになってきました。 そして旧来のビーカーの中で化学反応の実験を行なう代りに, コンピュータ上で理論的に計算することによって物質の性質を調べる ことができるようになってきました。 このような分野を ``計算機化学'' と呼んでいます。

理論化学のこの分野での日本人の先駆的な研究者として, 福井謙一博士は「フロンティア電子理論」の功績のため 1981 年にノーベル化学賞を受賞しました。 さらに昨年 (1998年) のノーベル化学賞は, この分野で大きな貢献をした Walter Kohn 博士, John A. Pople 博士に贈られました。



Ryo MIYAMOTO
1999-11-04