宇宙物理学・宇宙論に関する理論的研究や、宇宙線に関する実験的研究を行っています。
これまでの宇宙の観測結果(宇宙マイクロ波背景放射、物質分布や宇宙膨張速度)から、
- 宇宙初期に指数関数的な速さの膨張(インフレーション)が起きたこと
- 現在の宇宙の9割以上が正体不明の物質など(ダークマター・ダークエネルギー)によって占められており、再び膨張が加速に転じていること
現代的な宇宙論研究の主題の一つは、このように今後ますます蓄積されていく観測事実と、背後にある素粒子論・超高エネルギー物理学との橋渡しをすることにあります。 とくに、超弦理論に代表される統一理論に基づいた宇宙論を構築し、検証することが急がれます。 我々のグループでは次のような切り口の研究に取り組んでいます。
- 一般相対論を越える重力理論(次項も参照)がインフレーションや再加速の時代に果たす役割
- 超弦理論の示唆する高次元ブレーン(膜)宇宙論
- 宇宙弦、原始ブラックホールなどに付随する特異な宇宙物理現象
また、重力レンズを用いた観測的宇宙論も研究しています。
目に見えないダークマター・ダークエネルギーも重力相互作用をするため、重力レンズ現象を手がかりに探査をすることが可能になります。
現代の宇宙物理学はアインシュタイン博士の重力理論(一般相対性理論)に基づいています。 一般相対性理論の下では光の軌道さえ曲がる事(「重力レンズ」とよばれる)、そして、時間の進み方が重力場によって異なる事(「時間の遅れ」とよばれる)などが知られており、実験的にも確かめられて来ました。 我々にとって身近な道具 GPS でも、一般相対性理論の効果が実は取り入れられているのです。
しかし今後、一般相対性理論を越える理論が発見されるかもしれません。 素粒子物理学者たちの提唱する「ひも理論(弦理論)」や「ループ量子重力理論」に基づいて新しい重力理論を確立しようという研究が盛んに行なわれています。 我々のグループでも、高次元時空中での重力の性質や、(時空の曲がりを数学的に表す)リーマン曲率テンソルの非線型項の影響に着目した研究に力を入れています。
こうした重力理論の検証には宇宙物理学現象の精密な観測が役立ちます。 新手法のひとつが「重力波」を用いたものです。 ブラックホール等を含んだ激しい天体現象から、この重力波が発生すると考えられています。
最近の成果として、8の字軌道にある3天体からの重力波の波形を世界で初めて計算しました。 また、一般相対論的な効果を考慮して、3体の8の字軌道を初めて計算しました。 これらの予想と将来の観測を比較して、真の重力理論に迫ることが我々の目標です。
1995年にマヨールらが最初の系外惑星を発見して以来、系外惑星は、天文学・宇宙物理学における主要なテーマとなっています。 恒星の微小な動きやその明るさの時間変動から系外惑星を検出したり、その質量や軌道を推定する手法を理論的に研究しています。 この手法は、系外惑星だけでなく、大質量のブラック・ホールの場合にも応用できます。 2009年、我々は、「第2の月」さがし、つまり系外衛星探査の方法を新たに提案しました。
宇宙から地球へ飛来する高・超高エネルギー宇宙線に関する研究をしています。