太陽光エネルギー材料研究室 (Solar Energy Materials Laboratory)
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  エネルギーの利用は、環境・資源・経済など多岐にわたる分野に対して、正負両面から多大な影響を及ぼしています。 人類文明の発展に大きく貢献してきた一方で、深刻な環境破壊という負の側面も生み出してきました。とりわけ気候変動については、 地球温暖化(Global Warming)の段階を超え、「地球加熱化(Global Heating)」とも表現される深刻な状況に至っています。
  本研究室では、こうした課題の解決に少しでも貢献することを目指し、新規エネルギー材料の探索と、 環境負荷の低い高効率太陽電池および低消費電力光センサーの研究・開発に取り組んでいます。エネルギー材料分野では、 炭素ナノ材料(グラフェン、酸化グラフェン、炭素量子ドット)およびそれらの機能化に関する研究を進めています。 光デバイス分野では、グラフェン/シリコンショットキー接合を基盤とし、 炭素ナノ材料および有機材料との複合化による新規太陽電池・光センサーの開発に取り組んでいます。


  厚さを精密に制御した回転積層多層グラフェンを成長させ、シリコンと組み合わせたショットキー接合型光起電力デバイスを開発しました。 本デバイスの作製においては、性能低下の原因となる高分子(PMMA)を使用しないグラフェン転写の独自技術を採用することで、 プロセスの簡便化と低コスト化を実現しました。
  その結果、作製したデバイスでは良好なショットキー接合が形成され、ダイオードとして高い整流比が得られました。 さらに、吸収した光を電気エネルギーに変換する内部量子効率は最大約97%に達し、極めて優れた光電変換特性を示しました。
  これらの成果は、多層構造でありながら単層グラフェンに匹敵する特性を有する「回転積層グラフェン」が、 次世代の太陽電池や光センサーをはじめとする各種光電子デバイス用材料として、高いポテンシャルを持つことを実証するものです。
Photovoltaic Performance of a Rotationally Faulted Multilayer Graphene/n-Si Schottky Junction, Hojun Im and Masahiro Teraoka, Diam. Relat. Mater. 159, 112910 (2025).
 
 
  グラフェン転写後に残留するPMMA残渣が光電流をトラップするメカニズムを解明し、 性能劣化の原因を明らかにしました。これは、高性能太陽電池の設計において重要な指針となります。 PMMA残渣は熱処理によってある程度除去可能ですが、完全除去の報告例はいまだなく、 残渣フリーのグラフェン転写手法の確立が課題となっています。 そこで本研究では、PMMA残渣を生じさせないグラフェン転写方法の開発にも取り組んでいます。
Thermal annealing effects on Graphene/n-Si Schottky junction Solar cell: Removal of PMMA residues, Yuzuki Ono and Hojun Im, Jpn. J. Appl. Phys. 62, 045002 (2023).
 
 
 
  Gr/n-Si太陽電池に代表されるショットキー接合デバイスの性能は、 ショットキーバリアポテンシャルに直接左右されます。そのため、ショットキーバリアポテンシャルの精密な解析は、 高性能太陽電池の開発における重要な要素です。 本研究では、Gr/n-Si太陽電池に内在するMOSキャパシタの寄与を厳密に考慮した解析手法を構築し、 より正確なショットキーバリアポテンシャルの導出を可能にしました。
Capacitance characterization of Graphene/n-Si Schottky junction solar cell with MOS capacitor, Masahiro Teraoka, Yuzuki Ono and Hojun Im, Mater. Res. Express 10, 085602 (2023).
 
 
 
  回転積層多層グラフェンは、単層グラフェンに匹敵する優れた物性を示すことから、近年注目を集めています。 本研究室では、自作のCVD装置を用いてNi金属触媒の厚さを精密に調整することにより、 回転積層多層グラフェンの膜厚を効率的に制御する手法を開発しました。 さらに、ラマン分光法によって積層状態を詳細に評価できる分析手法を確立しました。
Growth and Raman spectroscopy of thickness-controlled rotationally faulted multilayer graphene, H. Kato, N. Itagaki, H. J. Im, Carbon 141, 76 (2019).
 
 
 
  Aサイト秩序型ペロブスカイトCaCu3Ti4O12の電子構造を放射光を用いた光電子分光法と逆光電子分光法を用いて、 バンドギャップの大きさなど電子構造の詳細を明らかにしました。 この結果はバンドギャップ・エンジニアリングによる様々なエネルギー分野への応用の可能性を高めました。
Electronic structure of Mott-insulator CaCu3Ti4O12: Photoemission and inverse photoemission study, H. J. Im et al., Solid State Commun. 217, 17 (2015).
 
 
 
  現在知られている中で最も高い誘電率を示すAサイト秩序型ペロブスカイトCaCu3Ti4O12は、 基礎科学・工学の両面から広く注目を集めています。本研究室でもエネルギー材料としての応用可能性に着目し、研究を推進しています。 上図は、放射光を用いた角度分解光電子分光法によって初めて実験的に取得されたバンド分散です。 これらの結果から、CaCu3Ti4O12は強い電子相関に起因するモット絶縁体(Mott Insulator)であることが明らかになりました。
Strong correlation effects in the A-site ordered perovskite CaCu3Ti4O12 revealed by angle-resolved photoemission spectroscopy, H. J. Im et al., Phys. Rev. B 88, 205133 (2013).
 
 


 弘前大学 理工学部自然エネルギー学科/大学院理工学研究科 任研究室
IM Lab., Department of Sustainable Energy, Faculty of Science and Technology / Graduate School of Science and Technology, Hirosaki University