研究テーマ of sawada yamazaki lab

弘前大学大学院理工学研究科 澤田研究室

研究テーマ

「フッ素の凝集効果が活かされたフッ素系高分子機能性材料の創製とその応用」

 一般に、フッ素原子を多く含む有機化合物は相互の分子間力が弱いため、液体においては表面張力が低く揮発しやすく、固体においては融点が低く昇華しやすい等の性質を示します。特に、炭素数2以上の長鎖のフルオロアルキル基を有する化合物においては、電気陰性度の高いフッ素原子に起因した強く反発する性質、すなわち撥水、撥油性さらには耐薬品性等の機能が付与された材料の開発研究が活発に行われ、現在数多くの化合物が製品化されております。一方、このフッ素の反発する機能ではなく、逆に "凝集" する機能が引き出せれば、今までには見られない全く新しいフッ素の機能が発現された材料の開発が初めて可能となります。
 沢田研究室では今までに、フッ素系有機過酸化物の合成さらには熱分解特性について数多くの興味深い研究成果を報告してきました。これら一連のフッ素系有機過酸化物の中で、過酸化フルオロアルカノイルをキーマテリアルとすることにより沢田研究室により独自に開発されたフルオロアルキル基が末端に直接炭素-炭素結合で導入されたオリゴマー類においては、今までのフッ素化学の常識を覆す興味深い数多くの成果が得られてきました。すなわち、今までのフッ素化合物はフッ素の強い電気陰性度のため互いに"反発"する機能が高く、これらの機能が活かされた撥水、撥油剤等の分野への応用が数多くなされてきました。しかしながら沢田研究室により開発されたフッ素系オリゴマー類においては、フッ素が互いに"反発"するのではなく、逆に"凝集"する機能が世界的にも初めて見いだされました。この機能が活かされますと、従来のフッ素化合物には見られない極めてユニークな機能の創製が期待できます。実際、含フッ素オリゴマー類における末端に導入されたフルオロアルキル基同士の"凝集"効果が効率よく作用し、ナノレベルで構造が制御された分子集合体の開発さらにはフッ素の"凝集"効果が活かされたフッ素系高分子ゲルの開発を次々と成功させています。このナノレベルで構造が制御されたフッ素系分子集合体は、新しいフッ素系ホスト場として作用し、エイズウイルス、バクテリアさらには機能性色素等の特定のゲスト分子と極めてユニークなホスト-ゲスト作用を創出します。従って、これらフッ素の"凝集"作用から導き出される種々の興味深い知見は、従来の材料科学とフッ素化学を融合させた新しい領域を開拓しうるものとなります。 



 現在の主研究テーマを以下に示します。


[1] フッ素の凝集効果が活かされた新しいフッ素系高分子界面活性剤の合成とその応用・・・抗菌活性を示すナノ粒子への展開。

[2] ナノレベルで自己組織化されたフッ素系分子集合体とその応用・・・フッ素系分子集合体-ナノダイヤモンド、-金属ナノ粒子、-フラーレンおよびカーボンナノチューブ複合体の合成と機能の解明   

[3] フッ素の機能が活かされた新しいフッ素系有機/無機ポリマーハイブリッドの合成と応用・・・磁性が付与された新しいフッ素系ナノマテリアルの開発

[4] フッ素系高分子ナノ粒子の開発と環境調和型フッ素系高分子材料への展開 

[5] フッ素系高分子界面活性剤を用いた新しい光機能性ナノ色素の開発

[6] アダマンタンセグメントを有するフッ素系高分子材料の開発とその応用

[7] フッ素系高分子界面活性剤のイオン液体への可溶化とその応用