角度分解ATR法による
金微粒子分散ポリマーの赤外吸収増大

　本研究では、薄膜材料として金微粒子分散ポリマーを用い、赤外吸収増大のメカニズム解明に挑んだ。この薄膜材料は、一般に薄膜で使われる蒸着膜では不可能である、あらかじめ体積分率と粒径を指定するということが可能であり、またその際、粒子同士の接触を考慮しなくて良いという利点をもっている。そのためこれらの利点に着目し、赤外吸収増大に対する体積分率依存性、粒径依存性の調査を本研究の目的とした。さらに、ATR法を用いて測定することで、反射法における赤外吸収増大とバックグランド全体の吸収量との関係性の有無の研究についてもあわせて目的とした。

　結果、赤外吸収増大には体積分率の変化に対し、正の相関があることが明らかになった。また粒径の変化に対しては、明確な変化は得られなかった。しかしながら、粒径依存性については、金微粒子分散ポリマーの性質上粒径を一定に保つのは困難であり、この誤差が結果に反映されている可能性も考えられるので、ここで結論付けるのは早急であり、今後の研究が期待される。赤外吸収増大とバックグランド全体の吸収量の関係性についても、両者間に明確な関係性が得られず、関係性があるとしてきたこれまでの理論とは反する結果となった。そのほか明らかになったこととして、薄膜材料に金微粒子分散ポリマーを用いると、偏向特性を有せず、赤外光の入射角に対する吸収増大の依存性は、体積分率、粒径の変化によらず同様の傾向があることが明らかになった。これは蒸着膜における島状膜で見られる傾向と似ていることより、金微粒子分散ポリマーの特徴を考慮すると、島同士に接触がないとき赤外吸収増大には、上で述べたような性質を有する可能性があるという結論に至った。