銀型ゼオライトのフォトルミネッセンス

 ゼオライトとはシリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)からなる結晶性のアルミノケイ酸塩である。ゼオライトは籠状構造の物質であり、その骨格はSi原子もしくはAl原子の周りに4つの酸素原子が結合した四面体を基準とし、その四面体の頂点に位置する酸素原子を他の四面体が共有することによって、立体的な結晶構造を形成している。Si原子は4価であり四面体を形成するのに問題ないが、Al原子は本来3価であるため四面体を形成した場合、-1価の電荷を有するAlO4-となる。この骨格成分の電荷の不足を補うためにゼオライト内部に非骨格成分である陽イオンが存在する。ゼオライトはイオン交換により容易に陽イオンを置換することができる。本研究で使用するゼオライトは硝酸銀に浸漬することで陽イオンをAgに置換した銀型ゼオライトと呼ばれるもののうちゼオライトAg12-4Aである。
 ゼオライトは減圧や加熱により容易に内部に含まれる水を脱離することができると知られている。真空中で加熱された銀型ゼオライトは内部の水が脱離され、Ag粒子が集合し銀クラスターを形成する。その銀クラスターはフォトルミネッセンスを引き起こすと考えられ広く研究されている。
 本研究では広く研究されている真空中加熱ではなく大気中で加熱された銀型ゼオライトを用いた。大気中で加熱された銀型ゼオライトに光を照射すると肉眼で確認できるほど強い発光を引き起こす。今回、フォトルミネッセンス測定、赤外測定、XAFS測定を用い大気中で加熱されたゼオライトの構造や変化を探ることによりこの発光の要因を解明することを試みた。
 その結果、大気中加熱では真空中加熱とは異なり加熱により銀クラスターは形成しないことが確認された。発光の要因は銀クラスターではなくゼオライトの骨格にあると推測され、またゼオライト内の水の存在が発光に深く関わっていることが明らかになった。