Ag型ゼオライトのPLにおける赤外・可視・X線吸収

弘前大学大学院 理工学研究科 物質理工学専攻     笹森 寿一

 

<要旨>

 ゼオライトAg12-4Aは、本来のイオン交換や触媒機能のほかにも、真空加熱脱水を行うことでゼオライト粉末の着色や光を当てることによるPL発光などの特徴も知られている。しかし、このPL発光の発現機構については原因が解明されていない。そこで、本研究ではPL発現機構を解明することを目的として、赤外吸収測定・可視吸収測定・XAFS測定によって、ゼオライト骨格・ゼオライト内の水やAgの変化に着目し調査した。

 本研究では、ゼオライトAg12-4Aを200℃〜800℃まで24時間大気中加熱し、それぞれATR可視吸収測定、KBr錠剤法・Si基板静電吸着法での赤外吸収測定、XAFS測定を行った。

 それぞれの測定結果とPL測定結果を比較しまとめると、可視吸収測定ではPL測定の結果と似たような変化傾向を示すが、着色によってフォトンの吸収率が増加するのか、加熱によって発光効率が上昇するのかを特定することはできなかった。次に、KBr錠剤法による赤外測定では、ゼオライト骨格は600℃以上の加熱によって破壊されることが示された。また、Si基板静電吸着法による赤外測定では、未加熱〜300℃で骨格のスペクトルに変化が生じ、この骨格のスペクトル変化は300〜500℃では変化しないという結果が示された。これをPL測定でのスペクトルと比較すると、PL発光は300℃加熱から生じているため、この骨格におけるスペクトル変化はPL発光の発現と関連があるのではないかと考えられる。最後に、XAFS測定では、大気中加熱ではゼオライト内に存在するAgがクラスタ化ではない変化を示していることが確認された。このことから、真空中加熱ではクラスタ化するAgが、大気中加熱では変位するだけの変化であるといえる。これらの比較結果をまとめると、大気中加熱ゼオライトAg12-4Aは加熱することで、ゼオライト内のAgが変位し、その影響を受け骨格が変化、また同時にゼオライト内の水も変化することでPL発光がおきるのではないかと考えられる。