ATR法によるAg型ゼオライトの可視吸収

 Ag型ゼオライトは加熱・脱水により着色する。そして、真空中で加熱・脱水されたAg型ゼオライトはフォトルミネッセンスを引き起こす。また、大気中で加熱・脱水されたAg型ゼオライトもフォトルミネッセンスを引き起こすが、発光現象についてまだ詳しく解明されていない。これらのことから、ゼオライトのフォトルミネッセンスと着色には関係があると考えられる。そこで、大気中で加熱されたAg型ゼオライトの可視吸収スペクトルの測定を試みる。しかし、ゼオライトは粉末であるため、吸収を測定しにくいという難点がある。粉末の反射には拡散反射法がよく用いられるが、ピークの変形が激しくあまり有効ではない。透過法では着色の有無に関わらず、粉末の粒子が光を透過しないので測定が不可能であった。そこで、減衰波を利用するATR法が有効ではないかと考えられる。以上のことから、本研究ではATR法による可視吸収スペクトルの測定を行い、大気中で加熱されたAg型ゼオライトのフォトルミネッセンスと着色の関係を解明することを目的とした。

 以前行われた大気中で加熱されたAg型ゼオライトのフォトルミネッセンス測定の結果からは、300℃加熱では発光強度は小さくなるが、400℃加熱で強度は急激に増大し、500℃加熱で最大となり、そして600℃加熱以降は発光強度が小さくなることがわかった。今回行った可視吸収測定の結果、短波長の光による吸収スペクトルへの影響は無いことがわかった。また、加熱温度が上昇するにつれて吸収強度は増大し、500 ℃加熱で最大となり、600℃加熱以降は吸収度が減少することがわかった。加熱温度に対する発光強度と可視吸収強度を比較したところ、それらの強度変化は似た傾向を持つことがわかった。以上のことから、大気中で加熱されたAg型ゼオライトのPLと着色には何らかの関係がある、という結論に至った。これにより、フォトルミネッセンスと着色は同じ原因で起こる可能性が示された。