Ag微粒子分散ポリマーの異常光吸収

 概要

 一般に物質は膜厚がを数nm程度まで薄くしてやると、物性が極端に変化すると言う性質が知られている。タイトルにもある'異常光吸収'とは、数nm程度の金属微粒子の存在により可視領域において着色、また赤外領域において吸収増大という現象が起こる事を言う。

 薄膜の作成はいろいろな方法があるが、一般的に広く行われている真空蒸着法により得られる薄膜では、金属の膜厚の増加に従い金属微粒子の形状、サイズ、体積分率などのパラメーターは不確定に定まるものであり、赤外領域での異常光吸収はどのパラメーターがどの程度影響を及ぼしているのかが解明されていなかった。そこで、Ag微粒子分散ポリマー(30nm程度かつ球形のAg微粒子を含むコロイド状溶液)を用いると、体積分率というパラメーターのみを変化させることが可能となる。このように得られる'薄膜'における光学的物性(可視領域及び赤外領域でのスペクトル)を解析するのが本研究の目的である。

 結果としては、膜厚を増加させると、可視及び赤外線は透過率が低下する事が予想される。今回はAgの体積分率を0 〜65 vol%まで変化させることが出来た訳だが、赤外領域では体積分率は大きければ大きい程著しい吸収増大がみられた。しかし、可視領域ではMaxwell-Garnettの理論と同様の条件にも関わらず、その理論によって得られるスペクトルとは大きく異なるという結果に終わった。今後はこの理論に取って代わる新たな理論が必要になるであろう。