結果とまとめ

 今回の研究で導き出された複素定数a、b、及びnの値は
a = +1.0×10 +10 +i (+1.0×10 +10)
b = -1.0×10 +12 +i (-1.0×10 +12)
n = 6872.5

です。これら未知定数を使って再現されたP偏光の吸収スペクトルを、それぞれの入射角について見ていきます。

70-80  まず、入射角70°、80°の場合、First Layer Effectを考慮することで、古典的3層系計算による単純な上向きピークを、短波長側の強度が大きくなるように傾斜をつけることができ、測定結果の吸収ピークに非常によく似た形状となりました。

60  入射角60°の場合、古典的3層系計算での単純な上向きピークに対して、ピークの位置は若干違うものの、測定結果の微分波形型を再現することができています。

40-50  入射角40°、50°の場合、First Layer Effectを考慮しても微分波形型のピークとなり、測定結果の下向きピークを再現することができていません。しかし、First Layer Effectを考慮することによって微分波形型のピークとなったということは、もともと上向きの要素しか持たないピークに対して、下向きの要素を加えることができたということです。つまり、古典的3層系計算よりも、測定結果に近いピークの形状を再現できたといえます。

10-35

 入射角10°、20°、30°、35°の場合、First Layer Effectを考慮しても、古典的3層系計算によるものより、良い再現を得ることができませんでした。これについては、入射角35°以下の領域が、臨界角以下の領域であり全反射していないため、First Layer Effectの効果とは異なる機構が働いている可能性が考えられます。

 以上から、First Layer Effectを考慮した計算によって、Kretschmann-ATR法によるP偏光吸収スペクトルの複雑な挙動に対し、臨界角(約40°)以上の領域について、古典的3層系計算以上の再現を実現することができました。このことから、金属薄膜がIsland状、欠陥のある連続膜の中間形態をとる場合のKretschmann-ATR法における、赤外吸収機構の一つとして、First Layer Effectが示されたと言えます。

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