弘前大学理工学部 蒔苗博充 (hiro9@cc.hirosaki-u.ac.jp)
スペクトルから気付いた事ことは、
すべての膜厚について言える事だが、吸収強度増加の割合が、ある導入量でもっとも大きくなることがわかった。このことから、Ag薄膜の微細構造を踏まえて考えると、Ag薄膜には最大電場強度を与える位置が存在することが考えられる。そこで、吸収強度とメタノール導入量との関係を検討して得られた、それぞれの膜厚とメタノール導入量との関係を右の図に示す。右の図から、最大電場強度を与える位置が、膜厚とともに高くなっているということがわかる。この得られた測定結果と、Ag薄膜の微細構造とを結び付けるために、モデルを仮定した。本実験で作成した薄膜の様子を見る事はできなかったため、同じような条件のもとで作成された薄膜の写真を例にとり、仮定したモデルの下、検証した。
写真はシリコン基板上に蒸着したAg微粒子の様子であり、島状になっているAg粒子の大きさはおよそ1.0 nmである。一般に知られている粒子間相互作用を考えモデルを設定し検証してみると、Ag粒子間の高さHまでメタノールが積もった時に最も大きい局所電場が生成される可能性がある。即ち、Ag微粒子間距離が最も近い所で、最も大きい局所電場が生成されると考えられる。図のようにAgは丸みを帯びた形状をしているため、膜厚が厚くなると高さHも高くなると考えることができ、この可能性を否定することはできないと思われる。