分子分光学 (20250428) M:  以下は宮本のコメント

22S2014: 
どの点群に属するかで変わってくる分子ごとの性質があると思うのですが、エタンのように配座によって属する点群の変わる分子は複数の、その点群に属する分子の持つ性質があるのでしょうか
M: 配座により属する点群が変わることによる特性があるかどうかは, 私は知りません. 自分で調べて考えてみれば良いのでは? // 23S2049 も参照

23S2021: 
分子がどんな点群に属するかについて、フローチャートを用いても分類できないものは見つかっていますか?
M: よく考えてみればいかがでしょうか. もしもそんな分子があって, それが重要または有名であれば, それに対応するようにフローチャートが改良されると考えられませんか? // また仮に, 示したフローチャートの最初で直線分子かどうかの分枝が無かったとしても, 後半の主軸云々からの部分で正しく命名できるでしょう. さらに仮に主軸に直交する $ \DS C_2$ 軸の有無による分枝が無くて $ \DS D_{nX}$ 群の欠けたフローチャートだったら, それらは単に $ \DS C_{nX}$ とされるだけでしょう. さて, 分類できない分子は存在するでしょうか?

23S2049: 
エタン分子は、ある瞬間にはねじれ形配座を、別の瞬間には重なり形配座や一般の形をとることがありますが、このようにして点群の帰属が瞬間ごとに変化することで、分析に支障が出ることはないのでしょうか。
M: 出るものもあるかもしれませんが, 出ないものもあるでしょう. 自分で詳しく考えてみれば良いのではないでしょうか? // 例えば NMR では, 化学交換という現象がよく知られています. 例えば高温でメチル基が十分に速く回転していれば, 三つの水素原子は平均化されて等価と見ることができて一本の吸収になりますが, 低温で回転が遅くなれば個々の水素原子が異なる環境にあるとして, 吸収の広幅化や分裂が観測されることがあります. // 講義では例題で個別の分子として出題した cis-trans 異性体を持つブタジエンでは, その属する点群が異なりますので遷移の選択律が異なるのは当然のことです. つまり異なるスペクトルが観測され, 逆にそれによって異性体を区別・同定できます. (通常の扱いでは cis-trans の異性化は考えませんが, 無限に長い時間の後ではエネルギー差に従ってボルツマン分布するはずですので, 異性化が起こっていることになります. またスチルベンは励起状態を経由して cis-trans 異性化が起こる光異性化が知られています.) // 例えば トルエン は, メチル基の回転の配座によって $ \DS C_S$ または $ \DS C_1$ の対称性になりますが, さらに -CH$ _3$ をひとまとまりの -X の様に考えれば $ \DS C_{2v}$ ということになります. 第一次近似としてなるべく高い方で考えた方が, 選択律などで許容・禁制の区別がついたり, 遷移の帰属が分かりやすかったりするかも (たとえば二つの遷移が, 低い対称性の下では共に $ \DS A \rightarrow B$ に帰属される遷移が, 高い対称性のもとでは $ \DS A_1 \rightarrow B_1$ $ \DS A_1 \rightarrow B_2$ と区別できるように). // 22S2014 も参照

23S2053: 
今回の授業では、アトキンス物理化学のフローチャートを紹介してもらいましたが、紹介されたフローチャートは一般的に知られているものなのでしょうか。それともアトキンスに掲載されている特有のものなのでしょうか。
M: 点群の記号・名称は シェーンフリース (Schönflies) の記号を用いています. // 帰属のためのフローチャートについて, それほど多数のものを比較検討したことはありませんので, 一般的かどうか私は知りません. なお明示的に アトキンスの引用と記している書籍もあります. // フローチャートには大元があるのかもしれませんし, 誰が考えても類似したものになるのかもしれません.



rmiya, 2025-05-12