化学の基礎 II(G) (20161101) M: 以下は宮本のコメント
15s2005*: 
p.30 の図 2.4 のオービタルの形状についてなのですが, 例えば $ \DS p_x$ 軌道の形はポテンシャルは球対称であるにもかかわらず, x 軸方向に電子が多く分布しているかのように見えます. 座標軸のとり方は自由なので実際の分布は図 2.3 の $ 2p$ のグラフが, 全方向に等しい確率で分布されているようになっているのではないかと思うのですが, 実際に観測すると, $ p$ 軌道の関数は $ \theta,\ \phi$ が含まれるという理由で, 本当に, ある方向に多く観測されるのでしょうか. M: $ 2p$ 軌道は 3 重に縮重していることに注意しなければなりません. 特定に一つ (例えば $ \DS p_x$) だけに電子が存在しているわけではありません. エネルギーが同じ $ \DS p_x,\ p_y,\ p_z$ に均等に分布していると考えるのが合理的でしょう. あるいは, 縮重した状態の波動関数については, その線形結合もまた固有関数であるので $ \DS p_x,\ p_y,\ p_z$ の適当な線形結合で球対称な関数を作ることにしてもよいかも.

15s3007: 
$ d$ のオービタル形状でなぜ「 $ \DS 3d_{x^2-y^2}$」や「 $ \DS 3d_{z^2}$」は図にあるのに「 $ \DS 3d_{y^2-z^2}$」, 「 $ \DS 3d_{z^2-y^2}$」, 「 $ \DS 3d_{x^2}$」, 「 $ \DS 3d_{y^2}$」はないのか? M: 磁気量子数 $ m$ の取り得る値 `` $ 2, 1, 0, -1, -2$'' から, 独立なのは 5 個までである.

15s3014: 
図 2.2 についてですがマクロな物質ではエネルギー準位の間隔が小さくなるとありますが, $ \DS \psi_n$ $ \DS \psi_{n+1}$ が交わることはあるのでしょうか. M: (2.20) 式に示されるように, エネルギーは $ \DS n^2$ に比例して単調に増加することは明らかでは?

15s3022: 
$ r \rightarrow \infty$ $ \DS \left\vert \psi(r, \theta, \phi) \right\vert^2 \rightarrow 0$ となりますが, 原子半径を定める上で電子が存在しなくなる境はどのように決められますか. M: 動径関数には $ r$ の増大とともに指数関数的に減少していく因子があるので, 無限遠でゼロに収束する. したがって, どこかの $ r$ を境にして, それ以遠で電子の存在確率がゼロになるということではない.

15s3028: 
箱のなかの電子について, 分子の $ \pi$ 電子の一次元に存在する様子はどのようにとらえたらよいか. M: 別に, 一次元の箱のモデルを普通に適用すればいいのでは?

15s3030: 
$ d$ 軌道において, なぜ $ \DS x^2-y^2$ 以外に $ \DS y^2-z^2$ や, $ \DS z^2-x^2$ がないのか. M: 15s3007 参照

15s3033: 
原子や分子についてシュレーディンガー方程式を解こうとしたとき, 井戸型ポテンシャルのようにはっきりとした境界条件を設定できないと思いますが, それでも方程式を解くことができるのですか. M: ``はっきりとした境界条件'' とは何か? ``ぼんやりとした境界条件'' とでもいうものがあるのか?? // 境界条件の有無にかかわらず, 一般解は (たぶん) 得られるだろう. あとは問題としている系に応じて適宜境界条件を設定すればいいだけでは? 何が問題なのか??

15s3037: 
水素原子は主量子数が同じものは縮退するということがよくわかりません. オービタルの形が異なれば遮へい効果が異なるのではないのですか? M: ``縮退'' という言葉の意味を, あいまいなままにしないで, しっかり理解する必要がありそう. 必要なら参考書も参照する. // 何が何を遮へいするという話なのか? // 縮退している状態のオービタル (波動関数) の形については 15s2005 も参照.

15s3038: 
エントロピーが極限まで大きくなった場合, 宇宙 (孤立系) はどうなるのでしょうか. 生命や星は生まれるのでしょうか. M: 生命などの秩序構造を持つものの存在は, エントロピーを低下させることになるので, ``エントロピーが極限まで大きくなった場合'' という前提と矛盾するのは明らかでは?

15s3040: 
表 2.1 において, 波動関数にボーア半径 $ \DS a_0$ を用いていますが, ボーアの原子モデルは電子一個の状態しか説明出来ないとありました. しかしオービタルが, 1s, 2s, 2p となるにつれて電子は複数になってくると思います. このことについて説明をお願いしたいです. M: 質問になっていない. // 思うのは勝手だが, 勘違いでしょう. 1s, 2s, 2p などのオービタルは, 水素原子に対して, すなわち原子核と電子が一個の系について求められている.

15s3041: 
イオン化エネルギーや電子親和力は, 電子配置による法則性がありますが, 電気陰性度の数値には法則性を見いだせる要因は何かありますか? M: 自分でどれだけ調べたというのか? // マリケンの電気陰性度 p.53 など. ポーリングの電気陰性度については アトキンス の教科書など参照

15s3042: 
波動関数の値は物理的に無意味だ, とされていますが, 符号や値から今後なんらかの情報が見出されることは考えられませんか. M: 現在まで正しさが実証され続けているのに, いまさら量子力学のその点について, 改変される必然性・必要性は考えにくい. // ウッドワード・ホフマン則は, 分子オービタルの符号が関係する稀な例だと思うが.

15s3045: 
波動関数で, $ E$ が大きくなるにつれて, $ n$ の値が大きくなり, 存在する確率が一様に近づくとありましたが, 節の密度も大きくなるわけだから, 存在できなくなるとはならないのですか? M: エネルギーと量子数の因果関係が逆. // 量子数が大きくなると電子が存在しなくなるとは, ヘンテコな主張ですね. // ``存在確率密度'' と言っていたことに気付いてくれた人は, ほとんどいなかったということで, 残念. すなわち微小な空間に電子が存在する確率の話であって, どこの微小空間でも波の複数の周期を含んでいるほど細かく振動している状態では, どの微小空間内であっても電子の存在する確率は, ほぼ同じであると期待できる. もちろん考えている微小空間内に節があっても, 腹もあるのだから, 電子の存在確率はゼロにはならない.

15s3046: 
1,3-ブタジエンの他に $ \DS \Delta E = h \nu$ の関係式を用いる物質の例はあるのか? M: 本気か? 正気か? 全ての物質なのだが......

15s3047: 
なぜ物理的に意味を持たない $ \psi$ に演算子 $ \DS \hat{H}$ をかけると, そこから $ E$ が求めれるのですか. M: まず, ``かける'' のではない (``わる'' こともできない). 演算子 なので ``作用させる'' という言い方をする. // エネルギーの $ \DS \langle E \rangle = \int \psi^* \hat{H} \psi \,\d\tau$ という求め方は, まさに, エネルギーに確率密度分布をかけて和を計算するという期待値の求め方では?

14s3008: 
今日の講義で, エネルギーが小さい物質ほど古典力学の考え方は通用しないということを実感しましたが, 現実的にはどれだけエネルギーが小さいとこの考え方で考えた方がよいのでしょうか? 目に見える物質程度であれば古典力学の考え方で十分なのでしょうか? M: 一律な基準はない. 現象によっては, 量子力学的な効果がマクロに見える場合もある.

14s3021: 
$ E$ が小さいとき, 電子は箱の中に一様に存在するわけではない」ということでしたが, 電子が一様に近づかなければ原子の物質的性質を調べることができないのでしょうか. M: 二重否定は意味を取りにくい. 肯定文にすると ``〜一様に近づけば, 〜調べることができる'' となるが, 電子密度分布と調べることができるかどうかとが, 何故関係してくるのかわからない.

14s3040: 
オイラーの式のように指数関数と三角関数の入れかえができるように, 二次関数と三角関数を入れかえる以外に物理化学で使われる関数を入れかえられる式は他にありますか? またそれは, どんな関数どうしを入れかえることができますか? M: 物理化学を勉強すればわかるのでは?

13s3012: 
授業の内容とは関係のない素朴な質問なのですが, 何故講義室がここ (総合棟 419) なのでしょうか. 再履修者しか居ないのですから, 少なくとも理工棟の方が都合が良い人が多いと思うのですが. M: 21 世紀教育担当の学務に聞いてください.



rmiya, 2017-01-16