構造物理化学 II (20151209) M: 以下は宮本のコメント
14s3001: 
(8.16) 式で $ Z$$ c$ を変分パラメーターにして計算していますが, このパラメーターは何個までとることができるのですか? また, ピケリスが用いた 1078 個という数字は何か意味のある数字ですか? M: 変分原理に基づいて考えると, パラメータの数に限度はあるか(?) パラメータの数がある特定の数 (マジックナンバー) になると, 何かいいことがあるのか(?)

14s3003: 
同種粒子の交換について, 粒子がどちらに行ったかわからないこそ $ \psi(1,2) \neq \psi(2,1)$ となるような気がします. $ =$ になる理由ではなく, $ \neq$ になることによって生じる矛盾点等があるのですか? M: 気のせいでしょう. ``電子を交換すると (波動関数が異なるので) 系のエネルギーが変化する'' や ``多電子原子のある一つの電子配置に対して, (適当な二電子を交換した) 複数の異なるエネルギー状態が存在する'' という主張に矛盾を感じないのですか(?)

14s3005: 
結果と理論値の間に差がある時, それが前提のまちがい・カン違いによるものか, 誤差であるのかはどう判断しますか. // 波の性質を持った複数の微視的粒子が, ちょうど空間的に同じ位置にいる (重なり合っている) 時に観測したら どうなりますか. M: たった一つの事例だけでは, 何ともいえない. 他の実験結果や他の理論的予想との整合性も判断の材料. 仮説演繹法の考え. 14s3028 も参照 // ちょうど同じ位置とか, (二つの粒子について) 同時に存在するとか, どうやって観測するのでしょうか(?)

14s3006: 
ボース粒子は同じ状態をとることができるため, 交換しても反対称にはならないのでしょうか. M: 講義での説明を全く聞いていなかったか, 全く理解できなかったかのようで残念.

14s3007: 
ハートリーフォック方程式では演算子を知る前に解を知りたいのでコンピュータを使って計算するとありますが, その計算は人が自力で解けるものなのですか? M: 誤解の予感. 教科書の記述は ``コンピュータを使えば容易に実行 (注: SCF の実行) できる'' です. コンピュータのプログラム (計算のアルゴリズム) は人間が考えるのだから, もちろん人力でも原理的には計算可能.

14s3008: 
He の相関エネルギーはハミルトニアンを書き換えるなどするとどれだけ小さくなりますか? また現実にはどれだけ小さくして利用しているのですか? M: 定義を考えると, ハミルトニアンを書き換えても相関エネルギーを小さくできない.

14s3009: 
Na 原子のスペクトルの D 線が二重になっているというのは, シュレーディンガー方程式では説明できないということでしたが, スピンを考慮すれば, 二重になっていることを証明できるという解釈で合っていますか. M: 日本語の使い方がヘンテコ. 現実は目の前にあるのに, ``証明できる・できない'' って何のこっちゃ(?) 何を証明するのか(?)

14s3010: 
液体 He が容器の壁面をつたって容器内の底の方にある液体 He と同じポテンシャルの位置まで下がるという話をしていたのですが, それは電子配置によるのですか, それとも原子の重さによるのですか. M:  $ \DS ^4$He の超流動の話で, ボース粒子であることと関係あるのは, どちらか?

14s3011+: 
電子スピンについてを, 教科書ではリチウム原子から考えだしたが, ヘリウムの 1s の 2 つ目の電子は 1 つ目と逆のスピンを持っていることは考えなくて良いのか? M: もちろん考えてもいいでしょう, 現実にそうなのだから. でもスピンオービタルを考えるときに, He はスレーター行列式の波動関数を空間部分とスピン部分に因数分解できてしまう特殊な例である. こうしてスピン部分を分離してしまえば, スピンを考慮しない時と同じ式になってしまう. その点で HF 法を説明するには不適切な面もある. 詳細は参考書を参照

14s3012: 
磁気モーメントの実験からスピンの角運動量について仮定を通し議論しましたが, 実験から量子のスピン角運動量を考えられる根拠となるものがあるのでしょうか. M: スピンの発見をめぐる話は, 朝永振一郎の ``スピンはめぐる'' が面白い. // 微妙に勘違いしている予感. 仮説演繹法という推論を知らない(?) // Ag 原子 (電子配置は 「Kr]4d$ ^{10}$5s$ ^{1}$) の磁気モーメントが up/down に量子化されているという実験事実は, 電子スピンという第 4 の自由度を考えて初めて説明できる.

14s3013: 
スピン量子数とスピン磁気量子数には, 何か違いはあるのでしょうか. M: 字が違う :-p

14s3015: 
オービタルの概念を用いた方が実験値に近い値となるのですか. M: オービタルの概念を採用する理由について, 教科書にも書いてあったのですが(?) // もちろん計算例も.

14s3017: 
ハートリー・フォック方程式によって求められた解と厳密解との差は どのように修正されるのでしょうか. M: 教科書 p.307 に書いてあるのに, 読んでいないのでしょうか(?) もちろん参考書を読んでもいいし.

14s3018: 
式 (8.17) において, 1 つの軌道に電子が 2 つ存在すると仮定しましたが, この仮定はどこで間違っているとわかるのですか? M: 14s3011 参照 // または, (8.17) 式の波動関数は電子の交換に対して反対称じゃない.

14s3020: 
ミクロな粒子については位置と運動量を同時に求めることはできない, とありましたが, これは どのような要因によるものなのですか? M: まず勘違いがひとつ. ``同時に求めることはできない'' ではなくて ``同時に正確に求めることはできない'' です. で, いまさら不確定性原理を理解していないというつもりか(?)

14s3023: 
つじつまの合う場の方法で $ \DS \phi(\bm{r}_2)$ をはじめに仮定する, とありましたが, どのような考え方で仮定すれば良いのですか. M: もちろん現実に近いほうが良いに決まってる. 現実の分子軌道法のプログラムでは, 拡張ヒュッケル法や半経験的手法の結果を使うなどの方法がとられている. 詳細は各プログラムの解説などを参照

14s3024: 
ハートリー・フォック エネルギーが厳密なものとの差が化学結合 1 本の強さと同じ程度といっていましたが, ここでいっている化学結合は何をさしているのですか. 化学結合にもいろいろと種類があり, 強さもちがうと思うのですが. M: 講義では前回, 水素分子の結合エネルギーを示しました. 他の化学結合については自分で調べればいいのでは(?) なお, 相関エネルギーについても, 系 (分子) によって当然異なると思われます. 化学結合を特定する意味はあるのか(?)

14s3025: 
古典的粒子, 微視的粒子のぶつかった際の説明がとても興味深かった. ただの衝突での話なのに結果が分からなかったのでとても疑問を抱きました. M: そうですか. しかし提出物が要件を満足していません.

14s3026: 
講義で Stern-Gerlach の実験がでてきましたが, 化学で未知の事柄について知るとき, ある程度結果を予想して実験を行い未知の事柄について知ることができると思います. なので今日の講義で出た `` $ \DS m_$S$ = \pm\frac{1}{2}$'' なども知られていると思うのですが, 未知の事柄を知る際の結果の予想や証明するための実験を科学者たちは何を考えて行っているのでしょう. 物理的・化学的センスがやはり大切なのでしょうか. うまく言いたいことを伝えられず申し訳ありません. M: 確かに何を聞きたいのか分かりにくい. ``Genius is one percent inspiration, ninety-nine percent perspiration.'' はエジソンの言葉だが, 努力してこそヒラメキが生まれるし, それを生かすことができる.

14s3027: 
HF 方程式について, つじつまの合う場の方法で $ \DS \phi(\bm{r}_j)$ を求めますが, 変分法などと同じように何度もくり返し計算すればよりよい値が得られるということですか. それとも $ \DS \phi(\bm{r}_j) = \phi'(\bm{r}_j)$ になればよりよい値は最初の仮定を変えなければ得られないのでしょうか. M: ちょっと違います. SCF 法における繰り返し計算の意味と, 変分法の計算の意味を混同しているようです. // SCF 法による繰り返し計算で解が改良されるという事は, 勝手な予想からつじつまの合うものへの改良という意味であって, 変分法でパラメータの修正により改良されるのは真の解に近づくという意味です. ただし変分法と HF-SCF とを組み合わせることで, 繰り返し計算により HF 的にも変分法的にも最適な解が得られることになります.

14s3028: 
実験値などの精密解がわからない時, 様々な近似法で求められる近似解のどれが最も真の値に近いのか, どうやって判断するのですか? M: 変分原理は真のエネルギーの上限値を与えてくれるが, それ以外に, 唯一万能な判断基準はなさそう. 14s3005 の前半も参照

14s3029: 
HF 方程式を解く際の仮定としても $ \DS \phi(\bm{r}_2)$ はどこからもってくるのでしょうか. (摂動法や変分法で求めた波動関数をより良いものにする法方[原文ママ]なのでしょうか.) M: 14s3023 参照

14s3032: 
ハートリー・フォック法では, ヘリウムについて最良のオービタル関数を与え, $ \phi(r)$ は何度も循環式を解いて得られますが, このサイクルが何度もあるときはかなり手間がかかりそうなので 別の方法で解いた方が良い時はありますか. M: ``循環式'' の意味を誤解している予感. // あるかもしれません. しかしだから教科書には ``コンピュータを使えば容易に実行できる'' と書いています. コンピュータは同じ手順を繰り返して実行することが得意ですから. 教科書 11 章も参照

14s3033: 
ボース粒子とフェルミ粒子はどうやって区別するのでしょうか. また, このようにスピンの特徴が違うと, 電子を入れるときに最後の 1 つの向きが違うと性質の違いが現れるのでしょうか. M: ボース粒子とフェルミ粒子は集団の振る舞いとしての統計的性質が違います. 前者はボース・アインシュタイン統計, 後者はフェルミ・ディラック統計に, それぞれ従います. 詳細は専門書を参照してください. // 後半については, 意味不明です.

14s3035: 
「シュレーディンガー方程式では説明できない現象のうち数種の実験事実がスピン角運動量の考えを用いることで解決された」という記述が教科書にありましたが, 電子のスピン角運動量を用いても説明できないものは どのような解決をしたのでしょうか. M: 例えば相対論的効果. 電子の速度が光速度に近くなるので, 重原子の電子のエネルギーでは相対論的効果を無視できない. クライン・ゴルドン方程式やディラック方程式を使う. 詳細は専門書を参照.

14s3036: 
(8.17) 式ではパウリの排他原理を考慮していないとおっしゃっていましたが, パウリの排他原理を考慮することはできないのでしょうか. また, 考慮している別の方法 (ハートリー・フォック法以外の方法) はあるのでしょうか. M: 14s3011 参照

14s3037: 
微視的粒子の場合, 粒子1 と粒子2 が衝突してもその後の粒子がどちらなのか分からないということでしたが, その粒子は必ず 1, 2 どちらかの粒子なのでしょうか. M: 区別できないということで, 量子力学的重ねあわせを考えることになります. すなわち 粒子1 でもあり 粒子2 でもある, 両方の重ねあわせであると (まるで怪獣キメラ).

14s3039: 
Na 原子スペクトルについて, 実際には二重線なのにシュレーディンガー方程式からは 1 本しか観測されないのは, どのような意味を表しているのでしょうか. シュレーディンガー方程式はスピンを考慮していないということなのでしょうか. M: 自分で考えて判断できないのは, なぜか? // シュレーディンガー方程式では, 電子一つ当たりいくつの自由度 (変数) を考慮していたか(?) スピンに対する自由度をもっているか(?)

14s3040: 
つじつまの合う場の方法で $ \DS \phi(\bm{r}_2)$ を仮定し, $ \DS V_1^$eff$ (\bm{r}_1)$ を計算した後, HF 方程式を解き, 解 $ \DS \varepsilon_1, \phi'(\bm{r}_2)$ を得るというもので $ \DS \phi(\bm{r}_j) \doteqdot \phi'(\bm{r}_j)$ となるまで繰り返すものだったの思うのですが 1 サイクルでは最初に仮定した $ \DS \phi(\bm{r})$ $ \DS \phi'(\bm{r})$ は通常異なるそうなのですが, 例外としてほとんど一到[原文ママ]した場合にはどのような条件がなされているのでしょうか? M: 意味不明. ``条件がなされる'' とは?

14s3041: 
He 原子についてハートリーフォック方程式を解く際, 2 つの電子が同じオービタルを占めてもパウリの排他原理に反しないと仮定して $ \DS \psi(r_1, r_2) = \phi(r_1) \phi(r_2)$ という式で 2 電子波動関数をオービタルの積で表しましたが, 実際には, 2 つの電子が同じオービタルを占めると, パウリの排他原理に反すると思います. なぜ, パウリの排他原理の反しないと仮定できるのでしょうか. M: 論理学が分かっていない(?) 仮定だけなら, いつでも, どんなことでも, 仮定できる. // 14s3011 参照

14s3042: 
授業において, 近似をよく考えていて, あまり厳密解に執着していませんが, 物理法則等を考える上で, 厳密である必要はないのですか. 厳密解とは, どういう基準で厳密解とみなされるのですか? M: 今さらな質問にガッカリ. 厳密解とは, 方程式の解析解のことです. // 厳密解は重要です. 得られるのならばそれに越した事はありません. しかし現在の目的と使える労力に折り合いがつかなければ, 適当な近似で我慢する, せざるを得ないということです. または利用可能なコストで目的の精度が得られないなら追加のコストを払うか, 精度をあきらめるかということ. 当たり前だと思うのですが, どうしてこういう常識的な判断ができないのか(?)

14s3043: 
2 電子以外も工夫によってハートリー・フォック方程式を使って解くことはできないのでしょうか? もし, 2 電子のものしか解くことができないなら, 効率が悪いように思えます. M: ``効率'' なのかという疑問はあるが, 確かに電子数に応じてそれぞれ異なる $ n$ 通り (原子だけで 100 通り以上(!)) の理論があって使い分けなければいけないなんて, きわめてナンセンスな話ですね. // 教科書や参考書を読めば分かるのでは(?)

14s3044: 
He と Li$ ^+$ は同じ二電子原子で, 異なっているのは陽子数と中性子数なので, 演算子の中身は異なりますが, He 同様 Li$ ^+$ も同じような計算をハートリー・フォックで行えるのでしょうか? それとも, その場合は何か別な補正を加える必要があるのでしょうか? M: 自分で考えて判断できないのは, なぜか? // こういうガッカリな事例について講義の初めに注意したのに, 全然分かってない様で残念 orz

14s3045: 
電子のポテンシャルエネルギー中に出てくる「eff」は実効的の意を示しているが, 「実効的」というのは どういうことですか? M: 言葉の意味が分からないなら辞書を見れば良いのでは(?)

14s3046: 
同種粒子の交換でスピンによって粒子を区別しましたが電子や陽子, 中性子のスピンは等しいんですか. M: トンでもない勘違いの予感. スピンで粒子を区別していない. 二つの粒子でスピンが $ \DS m_{\text{S},1} = +\frac{1}{2}$ $ \DS m_{\text{S},2} = -\frac{1}{2}$ と異なって区別できるなら, それは同種粒子とは言わない. // 電子, 陽子, 中性子のスピンは, 自分で調べればいいのでは(?)

13s3001: 
不斉磁場とはどのようにして作られるのですか? M: 参考書や辞書を見ればいいのでは(?)

13s3006: 
なぜスピンが整数だと複数の粒子が同じ空間を占めることができ, 半奇数だとできないといえるのでしょうか. M: 説明不十分だったかも. 前者はボース粒子で後者はフェルミ粒子という意味で, ボース粒子なら複数の粒子が同じ状態を占める (同じ量子数をもつ) ことができる.

13s3023: 
He 原子において 電子の区別ができないとありましたが, ヘリウム原子の基底状態の波動関数として $ \DS \Psi_1$ を用いてはいけないのは どうしてでしょうか. $ \DS \Psi_1$ $ \DS \Psi_2$ が同じ状態であるのなら $ \DS \Psi_2$ との違いは何ですか. M: 教科書の該当箇所の説明を読んでも理解できないということか? // 波動関数は電子の交換に対して反対称である必要があると言っているのに...

13s3025: 
スピンは, 対応づけられる古典現象が無いということであったが, 強いて言うなら一番近い古典現象は何か. M: だから ``スピン (自転)'' と命名されているのでしょう. しかし粒子の自転を考えるなら, 粒子には有限の大きさがあって, 例えば東半球と西半球を区別できなければならない.

12s3024*: 
$ \DS {}_2^4$He 核はフェルミ粒子からできているのに $ c=+1$ となるのは なぜですか? M: 複合粒子では, 個々の粒子のもつスピンが合成された全スピン角運動量を考えることになります. (8.48), (8.50) 式も参照



rmiya, 20160126