プログレス物理化学 II (20150109)
M:
以下は宮本のコメント
12s3033*:
H
O の分子振動について求めたが すべて観測することが出来るのか.
M:
遷移の選択則については, 次回に取り上げます.
12s3035:
ベンゼンの C が 6C を含む平面からズレる振動は何と呼べばいいのでしょうか.
M:
骨格の面外振動, 骨格の面外ひずみ振動, などでしょうか. 有機機器分析の本などを参照してはいかがでしょうか.
12s3036:
H
O の例題で B
を略したのはなぜか? // どのようなときにシクロブタジエンのように部分群に略して簡単にできるのか?
M:
分子内振動ではないから. 11s3013 参照 // 部分群がある場合. 今回の
について言えば, 群の位数が 16 なので考えられる部分群の位数はその約数 (16, 8, 4, 2, 1) となる. 位数が 16 なのは自分自身だし 1 なのは
なので, どちらも今回の目的には役に立たない. さらに位数 2 でも, 分子面に対する鏡映対称を考えた C
もまた無意味. それ以外の (8, 4, 2) の位数をもつ部分群ならば, どれでもよさそう. ただし位数が小さい場合には, 本来の点群である
において異なる既約表現に属するはずのものが, 部分群では同じ既約表現に属することになってしまう可能性がある. これについては, 手順のまとめで説明したように, 同じ既約表現に属する関数の線形結合をとることで, 固有関数をつくることになる.
12s3040:
H
O について B
と B
については
の和や差をとって運動を考えたが, A
については
を別々で考えたのは特別な理由があるのか. それとも係数を 0 と考えただけなのか.
M:
最後の, 手順のまとめからいって当然, 係数を 0 とみなしたわけです. そうした特別な理由は, わかりやすそうだったから. 11s3013 参照
12s3045:
線形結合をつくり変分原理で固有関数を出す際, 固有値が複数出ることは無いのでしょうか.
M:
当然, 固有関数を求める永年方程式の次数分だけ解 (固有値) が出ますが, それがどうかしましたか? この辺は構造物理化学の講義でやった範囲ですけど... そもそも方程式の解の数は, 次数と同じというのは常識では(?)
12s3047:
今まで簡約表現を導き出すのに指標表を用いて計算しましたが, 指標表での 1, 0, -1, 2 などの指標はどのような定義, 計算によって導出されたものなのでしょうか?
M:
いまさらの質問で, がっかりです. 既約表現の指標は, 可約表現をこれ以上小さなサイズの変換行列に (相似変換) できないときの, その最小の次元の変換行列の指標 (対角和, 蹟, トレース) であると講義でも説明したのですが, すっかり忘れてしまったのでしょうか? その他, 参考書もサポート web ページに満載していますので, 参照してください.
11s3013*:
H
O の
A2
が考えられると思うのですが, これは間違いでしょうか?
M:
どーして講義時間中に指摘してくれなかったのでしょうか?
(;_;)
補足 (修正):
ということで, よく考えると講義で示したものはおかしかったので, 以下にやり直す.
まず, 各基底 (原子の変位ベクトル) が対称操作によってどのように変換されるかを考える. (分子全体の
,
,
軸の方向は, 酸素原子の変位ベクトルの方向と一致しているものとする.)
start
指標をかけて和をとると, 残るのは次の通り.
すなわち得られた関数の数は全自由度 (
) に等しい. 同じ既約表現に属する関数については適宜線形結合をとることにする (下記では係数を 1 にしているが, 厳密には正しくない. 特に
はこのままでは正しく並進・回転・振動が分離されない). すると次の左の三つは, それぞれ分子の
,
,
方向の並進に対応しており, そして右の三つは, それぞれ分子の
,
,
軸周りの回転運動に対応している.
指標表を見れば
trans
,
rot
であることと一致していることがわかるだろう. したがって残りの関数がおおむね分子内振動に対応している.
もちろん基準振動解析の結果から
vib
であるので, これも一致していることに注意.
rmiya, 20150202