プログレス物理化学 II (20141225) M: 以下は宮本のコメント
12s3033: 
既約表現で A$ _1$, A$ _2$ など右下の数字はどういう意味を表しているのか. // また, 正八面体錯体の結晶場分裂で e$ _g$ 軌道や t$ _{2g}$ になるか e や t$ _2$ などは既約表現を示しているのか. M: の pp.507-508 にほんの少しだけ書いてあるが, 詳細は参考図書などを参照. 基本無機化学の p.77, 表2.9 にも簡単にまとめてある. 下記の通り.
表 マリケンの記号
対称操作 指標 $ \chi = +1$ 指標 $ \chi = -1$
C$ _n$ (主軸) A B (E, T (F), G, H, ...)$ ^\dagger$
C$ _2$ ($ \perp$ C$ _n$) または $ \sigma_v$ 1 2
i g u
$ \sigma_h$ ' ''

$ \dagger$ E, T (F), G, H は順に 2 重, 3 重, 4 重, 5 重縮重の既約表現
// 正八面体の属する点群は $ \displaystyle O_h$ であり, この結晶場中で 5 個の d オービタルは, 二重縮重している既約表現 E$ _g$ と三重縮重している T$ _{2g}$ に属するものに分裂する. 指標表の右端に二次の基底が書かれているものもあるので参照. また正四面体型の結晶場 $ \displaystyle T_d$ の点群の下では, これは E と T$ _2$ になる. 既約表現の名前は大文字で書き, 一電子オービタルについては小文字で書くのが習慣のようである.

12s3035: 
分子をバルクで見た時, 周辺分子との相互作用で単分子の振動エネルギーなどはどれくらいのオーダーで変化するのが一般的なのでしょうか. M: ``分子をバルクで見'' るというのは, どういうことですか? 例えば紫外可視吸収スペクトルで, 溶媒によって吸収帯がブルーシフトしたりレッドシフトしたるすることがある. また振動スペクトルでも, 溶媒との相互作用で吸収帯がシフトすることがある. シフトの大きさは, 対象とする分子と溶媒の組み合わせに依存する話であり, またもともと観測しているエネルギーの大きさ (X線, UV, 可視光, IR, etc.) も分光学的手法によって異なるし, そこに ``一般的な大きさ'' などというものがあるのだろうか?

12s3036: 
回転や並振[原文ママ]$ \Gamma$ は考えてすぐ求められたが, 振動は同じように簡単に求められないのか? M: ベンゼン C$ _6$H$ _6$ のような基本的な分子であっても, 振動の自由度は $ 3 \times 12 - 6 = 30$ です. 30 個もの振動の形を, そうそう容易に求めることはできないでしょ(?)

12s3040: 
振動はあるけど遷移確率は 0 という事はつまりどう事[原文ママ]ですか. 遷移はしないけど, その振動をとりうるという事ですか. M: 二準位間のエネルギー差に相当する振動数の光を吸収するというのが, ボーアの振動数条件. しかし実際には, 電磁波による振動する電場 (または磁場) と原子分子との相互作用の結果, 遷移が起こることになる.

12s3047: 
群論を用いて遷移確率が 0 か 0 でないかはわかるとおっしゃっていましたが, 0 でない時の具体的な遷移確率を求める時は, どのような手法を用いるのですか? M: これはもう具体的にきちんと, 遷移モーメントの積分 $ \displaystyle \mu = \int \psi_i^* \hat{\cal{M}} \psi_f \,$d$ \tau$ を計算するしかない.

11s3013: 
指標表の一番右の欄に書かれている $ \displaystyle x^2$, $ \displaystyle y^2$ などは 並進, 回転運動に関係している軌道の面を表しているのですか? M: 二次の基底関数です. $ \displaystyle x^2$$ xy$ のような関数が, どういう既約表現にしたがって変換されるかを示している. または, d$ _{xy}$ 軌道などの変換の様子と考えても良い. 12s3033 のコメントの後半参照.



rmiya, 20150202