プログレス物理化学 II (20141121) M: 以下は宮本のコメント
12s3033: 
IP $ _$obs の値でアントラセンが 8.20 eV で, フェナンスレンが 8.62 eV であるが, ベンゼン環の付いている位置で値が変わると思うが, 位置の違いによって何が理由で値が変わるのか. M: 単に実測が現実がそうだということで, その理由は, 私は知りません. 調べて分かったら, 教えて下さい.

12s3035: 
AO の係数が $ \displaystyle P_{14}$ で負になっていますが, それによる立体構造への影響や置換した時の反応性への影響はあるのでしょうか. M: 勘違いか? // 何か話が逆のような気が...... 現実の分子が存在して, それについての説明の試みがあって, 上手く説明できている・説明できていない, という順番ではないかと...... 従って, 理論上 $ \displaystyle P_{14}$ が負になることは, 現実の分子に何も影響を与えない. 逆に HMO 理論の範囲において, $ \displaystyle P_{14}$ が負になることをどのように理解すべきかを考えれば良い. その理論に合理性があれば, 別のケースにも一般化出来ると期待される. 結合次数 $ \displaystyle P_{ij}$ が正の値で大きければ, 当該原子間により多くの $ \pi$ 電子が存在していて結合が強いと考えるのであれば, ゼロなら結合が無く, 負の値では逆に反発するという解釈も成り立つのではないかと (あくまでも一つの解釈ということで, 絶対的な真理という意味ではない).

12s3036: 
ブタジエンの 1-4 間の $ \pi$ 結合を考えたとき, 負の値になって反発していると言いましたが, それから構造を考えることも可能なのか? M: 12s3035 参照

12s3040: 
ブタジエンの $ \displaystyle P_{14}$ がマイナスで, 今回はトポロジーだけを問題としているという事は, 1-4 間が遠くなる様な形をとると予想出来るのか, それとも全く関係ないのか. M: 12s3035 参照 // 本当にトポロジーだけを問題としているのならば, 原子間の距離は無関係なはず. ``反発'' ということは, 距離についての情報を含んでいる.

12s3047: 
本日の講義で溶媒中と真空中では MO のエネルギー準位が異なると話がありましたが何が原因でそのようになるのでしょうか? 極性溶媒では, 分極によってクーロンポテンシャルが低下することは薄々と予測できますが, 無極性溶媒では何がどう作用して, MO エネルギー準位に変化を与えるのでしょうか? M: 連続誘電体モデルに基づいて考えたとしても, 真空も媒質も, ゼロでない有限の誘電率を持っている. 例え無極性の溶媒であっても, 真空とは異なる誘電率を持っている. もちろん個々の溶媒の分子を考えても, 無極性分子であっても電子雲に偏りを生じることはあり, それが誘起双極子モーメントの原因となり, 分散力を生じたりもするのだが......

11s3013: 
IP と励起エネルギーを計算で求めた表を見ると, IP より励起エネルギーの方が計算で求めた値とわかっている値との差が大きいと思うのですが, なぜですか? M: どこの結果ですか? 常にそうなるとは限らないし, 一般にはパラメータの数が多い方が, 一致は良くなるものだと思いますけど. // HMO に特有の問題点としては, HOMO や LUMO が縮重している系については複数の遷移が同一の遷移エネルギーになるため電子相関が重要になってくることとか (単純 HMO では考慮されていない), スピン多重度について励起一重項と励起三重項を区別できないこととか (HMO は重心を与えるという解釈もある), 色々とある. 現実に一致させるためのモデルの改良のためには, 考慮すべき点は多い.



rmiya, 2014-11-27