プログレス物理化学 II (20141010) M: 以下は宮本のコメント
12s3033: 
結合次数が半整数の時 例えば 1.5 の時は結合に合計で電子が 3 個使われていることになるのか. M: あくまでもこのスキームでは, 計算上の正味の電子の寄与はそうなりますね. 一方で, 反結合性軌道の電子も (ある意味で) 結合に寄与しているとも言えるので, そこまで考えれば使われている電子の総数は, 場合によりけり.

12s3035: 
結合性軌道がどれくらい安定化するか, どのようにして求めれば良いのでしょうか. M: 何と比べての安定化ですか? オービタルの安定性 (エネルギーの安定化) だけであれば, 比較対象の状態のオービタルエネルギーとの差を考えればよい. (あたりまえ) // いわゆる結合エネルギーの問題ならば, 実験的にも理論的にも, いくつかの方法が考えられると思いますけど(?)

12s3036: 
O$ _2^+$ では結合次数が大きくなるが, 電子が減ることによって不安定になることはないのか? M: 結合次数に基づくならば, ``どこの'' オービタルの電子が減るか (増えるか) を考えればいいのでは(?)

12s3040: 
紙上では結合性, 反結合性や, つまっている軌道がわかりますが, 顕微鏡などで電子を見て それらの判断をする方法はあるのか. H$ _2$ と H$ _2^+$ や H$ _2^-$ では電子の数が変わり, 力の働き方が変わると思うので 核間距離などは変わったりするのか. M: 分子軌道は普通は可観測量ではありません. せいぜい全電子密度がわかるだけ, かな. しかし, 不対電子密度であれば, EPR で観測可能(!) これは SOMO に相当します ;-) // 顕微鏡ではかろうじて原子一つ一つは判別できるでしょうが, 電子一個のレベルではまだ見えないだろう. 将来は...(?) // 電子の数が変わって結合次数が変われば, 結合の強さや平衡核間距離にも当然影響があるだろう. p.374 等も参照.

12s3045: 
分子軸を含む節の数が 3 つになることがあるように教科書に書かれてあったのですが, どのような場合にそのようになるのですか. M: 節面の数が 0, 1, 2 と増えるとき, 何が変わりましたか? その流れで次を考えればいいのでは(?)

12s3047: 
共有結合や配位結合では, 混成軌道をとったり, 中心金属原子のオービタルのエネルギー準位が変化したりと, 何らかの形でオービタルに変化が見られますが, イオン結合の場合はオービタルの変化はあるのでしょうか? 静電的な相互作用のみで結合しているのでしょうか? M: 高校レベルの化学の知識としては, そういうことになるかもしれませんね. でもそれで良いのでしょうか(?) 高校レベルでも, アルカリ金属原子がイオン化すれば, 最外殻の s-オービタルの電子がなくなるので, そのオービタルはなくなる (考えなくなる). // 共有結合のイオン性と言ってみるテスト.

11s3013: 
O$ _2^-$ の B.O. は O$ _2$ の B.O. よりも小さく反応性が高いということでした. では O$ _2^+$ の場合, B.O.= 2.5 となり O$ _2$ の B.O. よりも大きい値のため反応性は乏しく, 安定な状態ということでしょうか? M: 孤立している分子の状態, 原子間の結合の強さ, という意味では, そうですね.

10s3042*: 
軌道の符号の正負によって, 数式としてではなく物質的に何か違いは生じるのでしょうか. M: 分子オービタル (波動関数) は可観測量ではなく, その二乗が電子の存在確率密度を与える, というのが量子力学的には常識です. しかしフロンティア軌道理論では, 軌道の対称性すなわち符号によって反応の進行が支配されているという驚くべき結果になっています(!) // しかしそもそも, 二つのオービタルが出会った時に相互作用をするかどうかは, オービタル関数の対称性すなわち符号で決まるとも言えるわけで......



rmiya, 2014-11-27