化学の基礎II(G) (20140121) M: 以下は宮本のコメント
13s3001: 
全ハミルトニアンを 1 電子ハミルトニアンの和で書けると近似するとき, 無視した項によって近似の精度に大きな影響はないのですか. M: 講義では近似の内容の詳細な説明は省略しましたが, ハミルトニアンの特定の項を省略するような近似ではない. 例えば, ある項を数学的に扱いやすい形 (数学的に厳密ではないが物理的にも意味がありそうな形) で置き換える様なことをしている. 近似の精度が目的に対して不十分ならば, 補正項を加えたり, 式を改良したり, 色々と工夫する.

13s3002: 
フントの規則で なんでスピンが同方向に入るほうがエネルギーが低いのですか? またスピンが増えてもフントの法則は当てはまるのですか. M: マッカーリ&サイモンの教科書には, フントの規則が経験則であると書いてあります. そうは言っても, 今ではスピン-軌道相互作用によるエネルギーで説明できます. 参考書なども参照してください.

13s3003*: 
外側にある電子ほど, 内側の電子雲により遮蔽され, 影響を強く受けますが, 遮蔽定数$ \sigma$ の値の変化の仕方に規則はありますか. M: たとえば, 大雑把な見積もりとして, スレーターの規則があります. また マッカーリ&サイモンの教科書には, 核の電荷を変分パラメータにしてみた例があります. または 13s3011 に記した通り, 遮蔽効果は結果の物理的な解釈に過ぎないので, 得られたエネルギーの値を遮蔽効果の式 (5.20) に代入すれば形式的に求められます.

13s3004: 
リチウムのイオン化で 1s 軌道から電子が減る例が書いてありますが, 2s 軌道から減る場合もあるのでしょうか. その場合, 1s 軌道から減る場合と何が違うのでしょうか. M: 禁止される理由はない. 電子が持っていたエネルギーが異なるので, イオン化に必要なエネルギーは異なる. 生成したリチウムの一価イオンの電子配置が異なるので, 性質に違いが出る可能性がある.

13s3005: 
フントの規則で, 同方向のスピンをもつ電子が違う軌道に入ることで なぜエネルギーが低くなるのですか? M: 13s3002 参照

13s3006: 
4s と 3d の軌道のエネルギーがほぼ等しいのなら, 4s 軌道にスピンが 1 つ入ったあと, 4s に逆向きのスピンが入らずに 3d に同じ向きのスピンが入ったり, または 4s に入る前に 3d に入ることはありますか. M: 化学の基礎 II(E) の教科書の 表3.2 を参照

13s3007*: 
2p 軌道を例にとって, 異なる軌道に電子 2 個がそれぞれ上向きのスピンで入った場合と下向きのスピンで入った場合とでは違いがありますか. M: スピン三重項 (全スピン量子数 S=1) という意味では同じだが, 全スピン磁気量子数 $ \displaystyle M_S$ は違う.

13s3008: 
教科書には 4s, 3d などのようにエネルギーがほぼ等しい軌道が書かれていますが, それによってどのようなことがあるのですか. M: 13s3006 参照

13s3009: 
一電子近似をするとき, 電子雲からのクーロンポテンシャル ( $ \displaystyle V({\bm r}_{1})$) は具体的にどのように表しますか? M: 講義では割愛しました. 例えば, 電子雲とみなす電子 j が入っている軌道を $ \displaystyle \psi(j)$ として, 電子 i の受けるポテンシャルは $ \displaystyle V(i) = \int \psi^*(j)\frac{1}{r_{ij}} \psi(j) \,$d$ \tau_j$ となります. しかしここで $ \displaystyle \psi(j)$ は, シュレーディンガー方程式を解いて得られる電子の波動関数です(!) すなわち, 方程式の解がわからないと方程式を立てることができない (!!)

13s3010: 
He について一電子近似を用いてシュレディンガー方程式を解きましたが 誤差はどれくらいあるのでしょうか? M: 具体的に解いていませんので, 何とも言えません. 特定の解法を適用すれば, 例えば マッカーリ&サイモンには数パーセント程度の誤差だとあります.

13s3011: 
遮蔽効果の他に, 電子のエネルギーに作用を及ぼすものは何があるか. M: 遮蔽効果は結果の物理的な解釈のひとつです. 結果 (理論的な計算結果や実験的な測定結果の両方の場合あり) をどのように理解するかということは, 実は科学にとって非常に重要です. 今の場合の結果としては ``電子があるエネルギーを持っている'' ということしかありません. その意味で原理的に, 電子がどの様なエネルギーを持つかは, ハミルトニアンに全て記載されています. しかしある物理量が, 理論的に計算したらまたは実験的に測定したら, ある値であったというだけでは, われわれの自然に対する理解はほとんと深まりません. そこでこの結果をどう理解すればいいのか, どのようなイメージを持てばいいのかを, わたしたちは考える必要があるのです.

13s3012: 
授業評価アンケート調査に名前と学籍番号を書く欄があるのは何故ですか. 理解に苦しみます. M: 制度設計をしたときに議論になっているはずです. 大学または教員の立場に立って自分で想像してみてはいかがでしょうか. 本当に真剣に考えて, 全く理由が想像できないと言うのでしょうか? // 制度にご意見があるのなら, 担当事務や学長直言箱へ, どうぞ.

13s3013: 
遮蔽効果によって, 核の電荷はどのくらい減少しているようにみえるのですか. M: 13s3003 参照

13s3014: 
複数の電子の位置を, 1 つの座標系で表すことができないのはなぜですか. // 4s 軌道と 3d 軌道のエネルギーがほぼ等しいならば, 4s 軌道より先に 3d 軌道に電子が入ることはないのですか. M: 意味不明. 講義で, 三粒子の系についてデカルト座標系で表したでしょ. // 13s3006 参照

13s3015: 
一電子近似の精度はどれくらいか. // 調和振動子の $ \displaystyle \psi_0(x)$ $ \displaystyle \psi_1(x)$ が直交するとは どのような意味を持っているか. M: 13s3010 参照 // ``直交'' の定義は何ですか?

13s3016: 
遮蔽効果以外に電子のエネルギーに影響を与えるものはありますか? M: 13s3011 参照

13s3017: 
遮蔽された電子のエネルギーが $ \displaystyle E = -\frac{m \zeta^2 e^4}{32 \pi^2 \varepsilon_0^2 \hbar^2} \cdot \frac{1}{n^2}$ で表されるということでしたが, 過程はどうなっているのですか. M: ``過程'' とは, 何のことですか?

13s3018: 
同一の原子で電子も同数の物は軌道が別の場所に入る可能性はあるか. そうなのであれば性質は変わったりするか. M: 質問の前半が分かりにくい. // 電子分布が異なれば, 当然性質も異なる可能性があります. 軌道にはそれぞれ固有のエネルギーがありますので, 電子が異なる軌道に入っている場合, 基本的には電子の持つエネルギーが異なることになります. 異なるエネルギーを持つなら, 性質が異なっていても不思議はないですね.

13s3019: 
全電子波動関数を 1 電子波動関数の積で書けるのは なぜですか. M: 波動関数の二乗は粒子の存在確率ということから考えて, 全事象の確率は独立事象の確率の積であるという説明を講義でしたのだが, 伝わっていなくて残念.

13s3020: 
なぜフントの法則は成り立つのでしょうか? スピンが逆の電子がエネルギーの等しい軌道に入ることはないのですか? M: 13s3002 参照 // 教科書の 1 または 2 の電子配置が, その状態. 電子が最低のエネルギーを持つ状態以外の状態をとることはない, などと誰も言ってませんが(?)

13s3021: 
なぜ原子の性質は最外殻電子の数できまるのですか. M: 高校化学の復習が必要か(?) // ``原子の性質'' とは, 具体的に何のことか? 化合物を作ったり, イオン化したりするときに, 原子の中でエネルギーが最も高い電子が最も活動性に富むことの, どこに納得できないのでしょうか?

13s3022+: 
s$ <$   p$ <$   d の順に遮蔽を受けるということは, その順に遠くなることとは違うのですか? M: 水素原子の動径分布関数を見ると, 主量子数 n が同じで方位量子数 l が異なる場合, l が小さい方が電子の存在確率の最大位置が遠くなっている. 電子の位置が核から遠いほど, 内側には沢山の電子が存在していることになり, 遮蔽が大きいということになる. これは教科書の記述とは遮蔽の大きさが逆だ. アトキンスの教科書には, ``浸透と遮蔽'' で核の近傍への電子の束縛について説明されています. すなわち s 軌道では核に近い距離にももうひとつの存在確率の極大があり, より核に近いところまで電子が分布している (浸透) という効果もあると.

13s3023: 
[4s, 3d] などのエネルギーがほぼ等しい場合, 何を基準にして順番を決めているのでしょうか. M: 13s3006 参照 // 系の全エネルギーは, 電子が入っている軌道のエネルギーの総和にはならない. 電子間のクーロン反発エネルギーも考慮する必要がある. したがって個別の系ごとに, どのような電子配置の場合に全エネルギーが最も低くなる (安定になる) かを考える必要がある.

13s3024: 
フントの規則によると, 同方向のスピンでエネルギーの等しい複数の軌道に電子が入ろうとしますが, スピンが同方向の二つの原子が近づきにくいのはなぜですか? フントの規則に矛盾している気がするのですが…。 M: まさしくフントの規則と同じ原理に従っています. すなわち, 同方向のスピンがエネルギーの同じ別の軌道に入るということは, これらのスピンが同じ空間に存在することを避けているわけです. パウリの排他律とも言ってみるテスト

13s3025: 
ウランなどかなり電子の多い原子についてもハミルトニアンの近似は使えるのだろうか. M: 13s3001 参照 // そもそも原子番号の大きい原子では相対論効果が顕著に効いてくるために, ハミルトニアンを工夫するかシュレーディンガー方程式そのものを見直す必要が出てくる.

13s3026: 
遮蔽効果は核の電荷が減少したようになるのみで電子の動きや他の原子に対しての力は変わらないんですか. M: 核の電荷が異なれば, ポテンシャルが異なるので, 当然電子の運動の様子に影響があるだろう. しかし, 電子が見ている核の電荷は始めから遮蔽効果を受けた値だから, 遮蔽が生じて, 生じる前と比べて電子の運動が変わるといったようなことは, 無い.

13s3027: 
教科書 p.145 の 1* と 3* 2* は 3 の方がエネルギーが低いのは, わかりますが, 2* と 1* のエネルギーはどちらが低いですか. [○数字に続く*の所の絵は省略] M: 異なる軌道に電子が入った方が, 互いにより遠ざかっているので, 電子間のクーロン反発が小さくなる.

13s3028: 
遮蔽効果についての質問なんですが 例えばネオンとナトリウム陽イオンの遮蔽効果は同じになるのですか? M: 誰から見た遮蔽効果か? 遮蔽効果とは, ある電子から見た核の電荷が, 陽子数から期待される値よりも減少して見えるという話なので. Ne と Na$ ^+$ は等電子的なので, ほとんど同じと考えられるが, あえて探せば異なる点もある. すなわち核の電荷が大きい方が, より電子を核の近くに引き寄せることになり, 電子の運動するスピードが大きくなると考えられる. すると…

13s3029: 
教科書にフェルミ粒子はスピンが同方向の二つの電子は近づきにくい性質を持っていると書いていますが, ボース粒子は同じような性質をもっていないんですか. M: 国語力の問題ですか(?) // もしもボース粒子が同じような性質を持っていたとしたら, 教科書の記述はどのようになるか想像してみればいいのでは(?) // 13s3046 も参照

13s3030: 
s, p, d, f … の電子の入り方で主に矢印の方向に入るとありましたが, その法則に従わない元素は何ですか? また, それはなぜ従わないのですか? M: 13s3006 と 13s3023 参照

13s3031: 
2p 軌道に電子が 2 つ入る場合, 教科書では 3 通りとなっているのは, 他の 12 通りはその 3 通りの内に含まれるからですか. M: ``内に含まれる'' とはどういう意味ですか? // どうしてそう書いてあるかは, 著者に聞けばいいのでは(?) // 教科書では軌道角運動量の z 成分すなわち磁気量子数を無視している. 詳細については, マッカーリ&サイモンや アトキンスなどの教科書参照.

13s3032: 
遮蔽定数はどのようにして定められたのですか. M: 13s3003 参照

13s3033: 
フントはどのような考えから, s, p … とかの記号を使ったのか? M: フントが ``s, p … とかの記号を使った'' と, どこに書いてありましたか? 私には見つけられませんでした.

13s3034: 
[白紙] M: 提出物が要件を満足していません.

13s3035: 
授業で一電子近似についての話がありましたが, 電子の数が多くなるにつれて近似値と正確な値の差が大きくなってしまうということはないのですか? M: マッカーリ&サイモン図8.1

13s3036: 
スピンが逆方向に入るよりスピンが同方向に入るほうがエネルギーが低いのはなぜですか? M: 13s3002 参照

13s3037: 
4s, 3d のような軌道のエネルギーがほぼ等しいと分かったのはなぜですか? 経験則ですか? M: ある特定の軌道のエネルギーがを調べる方法の原理について, 教科書にヒントはあるか(?)

13s3038: 
有効核電荷を用いたのはなぜですか. M: 別に. 13s3011 参照

13s3039: 
例題のように 1s から 1 個取りさってから 2s 軌道の電子が 1s にうつることはありますか? M: 遷移の選択則を勉強してみてはいかがか. あ, それ以前にボーアの振動数条件などをしっかりと身につけてください.

13s3041: 
中性子が増えると遮蔽効果が高くなるということですか. M: なぜ そうなるのですか?

13s3042: 
スピンが同方向に入るほうが逆方向に入るときよりも, エネルギーが低いのは なぜですか? M: 13s3002 参照

13s3043: 
2p 軌道に対して, 2 個の電子の入り方は, 15 通りあると言いましたが, $ m=1, 0, -1$ の 3 つの軌道の中で, 入りやすい順番はありますか? M: マッカーリ&サイモンや アトキンスの教科書などで ``項記号 (term symbol)'' のところを勉強してみればわかるのでは(?)

13s3044: 
なぜ 4s と 3d など, 主量子数が違う軌道のエネルギーがほぼ等しくなるのでしょうか? // また, 教科書に, スピンが同方向の二つの電子が近づきにくい. とありますが, スピンが同じ電子と, 陽電子を近づけるとどうなるでしょうか. M: 軌道のエネルギーを決める要素はいくつかありますので, それらの兼ね合いで, 近いエネルギーになってもおかしくないと思うのですが. 同意いただけない理由は何ですか? // 対消滅 :-p

13s3045: 
全ハミルトニアンを 1 電子ハミルトニアンの和で考えて近似するところがよくわかりませんでした. M: そうですか. 質問になっていませんネ. どのくらい真剣に必死になって考えたのでしょうか? まさかのもしかして, 国語力の問題なのでしょうか(?)

13s3046: 
スピンが同方向の二つの電子は近づきにくいのは なぜですか? M: 自然がそうなっている. // パウリの排他律といってみるテスト

12s3017: 
致死量というのは, どのような方法で決められているのですか. M: 自分で何をどれだけ調べたのでしょうか?

12s3024: 
フントの規則はどの軌道についてもあてはまりますか? M: 当然 ``縮重した軌道'' ですね. フントの規則についての記述で, それ以外の制限を見たことがありますか? // 13s3002 参照

12s3026: 
有効核電荷において, 着目する電子よりも外側の電子による相互作用によって受ける電荷が変化することはないのでしょうか? M: 電磁気学, 特に静電荷の話を復習してはいかがでしょう.

12s3047: 
フントの規則で, スピンの向きが同じになるような電子配置が安定というのはなぜですか? M: 13s3002 参照

11s3001: 
遮幣効果[原文ママ]について, 遮幣定数 $ \sigma$ は実際的にはどのように求めるのでしょうか. 何か一般式などがあるのでしょうか? M: 13s3003 参照

11s3014: 
電子の移動は追って表現できないという話は不確定性原理など?で観測できないからそう考えるという話なのでしょうか. それとも実際にテレポートの様なことが起きているのですか. M: 正気ですか? それとも, 量子力学の基本原理が身についていないという意味ですか??

11s3022: 
速さの限界が光速なのは, なぜですか? 光速よりも速いものは, 存在しないからですか? M: 特殊相対性理論の初歩を勉強すればわかるのでは(?)

11s3031: 
多電子原子で電子が複数の軌道に入っている時も, He 原子のように一番の電子以外は電子雲としてただよっていると考えて良いのですか. M: ``一電子近似'' あるいは ``平均場近似'' とは, 何のどういう近似なのか?

11s3032: 
同じエネルギーの違う軌道に電子が入るとき違う向きのスピンだとエネルギーが, 同じ向きで入っているときより高いのか. M: 日本語力の問題か(?) フントの規則で ``○○の状態が最もエネルギーが低い'' と述べているのは, どういう意味なのか?

10s3008: 
定常状態とは原子や分子 (あるいは系?) の, どのような状態を表しているのですか? M: 言葉が分からないのなら, 辞書を見ればいいのでは(?)

10s3017: 
フントの規則によると 1 番エネルギーが低いように電子が入るが, エネルギーを与えれば自由に電子が入る場所を決めることができるか. M: 13s3020 参照. というか, 今更これかい. 自分で判断できないのは なぜか?



Ryo MIYAMOTO, 2014-01-23