構造物理化学II (20131030) M: 以下は宮本のコメント

M: ``厳密解'' の意味が分からない人が一定数いる模様. 厳密解は解析解ともいい, 四則演算と微分・積分などの数学の解析学的操作のみを用いて方程式を解き, 得られる解のこと. 例えば方程式 $ x^2 = 2$ の解として $ x = \sqrt{2}$ は厳密解だが $ x = 1.414$ は近似解, $ x = 1.41421356$ はより精度の高い近似解. 後者では必要ならばいくらでも桁数を増やすことはできるが, それでもやっぱり近似解.

12s3001: 
He のボーアモデル・Schrödinger 方程式を書いたときに, 2 つの電子が同じ 1s 軌道にあるはずなのに, それぞれの電子と核との距離が $ \displaystyle r_1$ $ \displaystyle r_2$ で別となっているのはなぜか? $ \displaystyle r_1 = r_2$ となることは考えられるのか. M: まだ Schrödinger 方程式を解いて解を得ていないのに, ``2 つの電子が同じ 1s 軌道にある'' とわかるのはなぜか? そもそも He の 1s 軌道とは, 何か?

12s3002: 
多体問題で核のまわりを電子がまわっていて講義では核と電子, 電子と電子について考えていたが, この電子が核と平行して直線とみることができた場合, シュレーディンガー方程式は変化するのか. M: 意味不明. ``電子が核と平行して直線とみる'' とは, どういうことか?

12s3003: 
なぜ, 厳密解を知らなくても, r が大きくなるにつれて波動関数が 0 に近づくことが予想されるのか. M: 波動関数が備えるべき要件は?

12s3004: 
変分法と摂動法は どのように使い分ければいいのか? M: それぞれを学べば, わかるのでは(?)

12s3005*: 
基底状態における変分法の近似が最小値を与えるものが最良であるというのはよくわかるが, もし励起状態で考えたならば どのような近似をするのか. M: 一例が 例題7.5 とその下の記述だが, ``エルミート演算子の異なる固有値に属する固有関数は, 互いに直交する'' も使うとなお良い.

12s3006: 
変分法は分析学に属するのか. M: ``分析学'' とは, 何か?

12s3007: 
基底状態の厳密解 $ \displaystyle E_0$ がわからないとき, $ \phi$ から求めた $ \displaystyle E_\phi$ $ \displaystyle E_\phi \ge E_0$ になっていることをどうやって判断するのか. またそもそも $ \displaystyle E_\phi$ はきちんと近似されているのかは わかるのか. M: 変分原理について勘違いがある模様. // そもそも厳密解が得られないから近似解を求めるのに, 得られた近似解を厳密解と比較できる訳がない. // 12s3032 参照

12s3008: 
最良の近似をした $ \displaystyle \phi(r) = \e^{-\alpha r^2}$ は, 厳密解 $ \displaystyle \e^{-\alpha r}$ とは異なるのですか. M: 本気の質問ですか?

12s3010: 
近似の精度を限りなく高めたときに それは厳密な解を求めたことと違うのか? M: ``限りなく'' が曲者ですね. 0.999... と小数点以下に 9 が ``無限個'' 並べば, それは 1 に等しいので. // だが実際問題として, 近似の精度を無限に高めることは可能なのだろうか?

12s3011: 
変分法に用いる試行関数は任意に選んでよいとあったが, これは規格化や直交性などの条件の下選ぶのか? M: そりゃ, 発散したり不連続な関数は, そもそも波動関数として適切ではない. 12s3003 も参照

12s3012: 
$ \displaystyle E_{\phi'}$ $ \displaystyle E_0$ に近ければ近いほど良い近似であるが, $ \displaystyle E_{\phi'} \ge E_0$ $ \displaystyle E_{\phi'} \le E_0$ だとどちらの方が良い近似なのか. M: 後者はありえるのか?

12s3013: 
図6.7 で, d オービタルに $ +$$ -$ が書いてあるが, この $ +$$ -$ は何を表わすのか. M: もちろん符号だが, そもそもその図は, 何を表わしているのか?

12s3014: 
厳密解 $ \displaystyle \e^{-\alpha r}$ は どのような試行関数であるか. M: 厳密解

12s3015: 
変分法や摂動法を用いれば, 今まで教科書でシュレーディンガー方程式で解いてきたものもより[原文ママ]精度を上げることができるのか. M: これまで教科書で出てきたものは, すべて厳密解.

12s3016: 
求めたいものによって, 試行関数を毎回変えなければいけないのですか. M: これまでも, 求めたい系によって解の関数形は異なっていたでしょ.

12s3017: 
水素原子が基底状態 (1s) にあるとき, 円電流による磁場が観測されないのは なぜですか? M: 水素の 1s オービタルに入っている電子は, 円運動をしているのか?

12s3018+: 
波動関数 $ \displaystyle \psi_{211}$ $ \displaystyle \psi_{21-1}$ は電子の軌道を表わしているのに, それらの和や差から求められる実部や虚部も電子の軌道を表わすことができるのは なぜか. M: 重ね合わせの原理: 縮重した固有値に属する二つの相異なる固有関数を $ \psi_1$, $ \psi_2$ とすると, これらの任意の線型結合 $ a \psi_1 + b \psi_2$ (a, b は任意の定数) もまた, 同じ固有値に属する固有関数である. (マッカーリ&サイモンp.47 など参照)

12s3019: 
多体問題においてシュレーディンガー方程式を水素原子のように解けるような例外というものは存在するのか. M: もちろん変数分離が可能な系であれば解ける.

12s3020: 
式 (6.65) について, 近似法を用いずに解くことは不可能なのか. 近似法を用いても, このシュレーディンガー方程式の解は正確なのか. M: 講義で説明したことを, 全く理解していないようで, 残念. まずは教科書や参考書を, 何度も何度も読んで考えてみてはいかがか.

12s3021: 
ヘリウムのシュレーディンガー方程式について, 原子全体の並進運動を無視しているが, 無視しなかった場合, どんな作用が出てくるのか. M: 別に. 二原子分子の系で, 質量中心座標と相対座標を導入したのと類似の考え.

12s3022+: 
日頃, 自分達が書いている p 軌道の形は水素原子オービタルの確率密度プロットとはけっこうちがう形のように思えるのですが, いつも書いている p 軌道の形は, 簡略化したから そのようになったのですか. M: 何を意図して p 軌道の絵を書くのか, よくよく考えてみてください.

12s3023+: 
3 体問題は一般に厳密に解けないとありますが, He の 2 つの軌道は, H と比べると大きく変化するのですか. M: いろいろある. 第 8 章も参照. // 変化の程度を, どのように評価するか?

12s3025: 
試行関数を $ \displaystyle \e^{-\alpha r^2}$ を使ったが異なる関数を使っても良い近似となりますか. M: ``試行'' の意味が分かってますか? // 自分でやってみればいいのでは?

12s3026: 
試行関数として $ \displaystyle \phi(r) = \e^{-\alpha r^2}$ のガウス関数がなぜここで出てくるのですか? M: 別に. 12s3011 も参照.

12s3027: 
3 体問題で近似的には解けると言っていたが, それでは厳密に解くということは何を解くことで厳密に解いたといえるのか. M: ここで言う厳密解は, 解析解とも言う. すなわち, 数学の解析学的手法 (四則演算と微分・積分) を用いて導出された方程式の解のこと.

12s3030: 
接球面図では角度部分の形は表わしているが, 動径関数を含んでいないのはなぜか. M: だって, ある空間の領域を囲む球面を書いた図なんだモン. 動径方向の情報を含んだ断面図 (図6.6) の等高線の一本と見比べてみれば, 様子が分かるでしょ.

12s3031: 
電子密度がわかることで反応のしやすさや, 置換活性, 又は不活性などがわかるのか. M: 有機化学で, 求電子置換反応など習いませんでしたか?

12s3032: 
多体問題の解を変分法から近似した場合, 厳密な解が得られないのに, それを良い近似かどうかは分かるのですか. M: 講義で説明したのに, 理解されていなくて残念. 式 (7.5) の前後の文章をよく読めばいいのでは(?)

12s3033: 
試行関数で指数関数 $ \displaystyle \phi(r) = \e^{-\alpha r}$ とするよりもガウス関数 $ \displaystyle \phi(r) = \e^{-\alpha r^2}$ とおいた方がより近似しやすいのか. M: どうしてそう考えたのか? // 近似のしやすさとは, 何のことか?

12s3034: 
ヘリウム原子のシュレーディンガー方程式は近似により解けるということだが, 二原子分子も近似を利用することで解くことができるのか. M: ヘリウム原子に専用の方法じゃないことは, 変分法や摂動法をしっかり学べばわかるのでは(?)

12s3035: 
変分法で求める場合, 十分に近似できているか調べる方法はあるのでしょうか. M: 12s3032 参照

12s3036: 
今までにも構造物理で近似を行いましたが, 今までのは変分法と摂動法のどちらにあたるのですか? M: 具体的にどこで近似を使いましたか? // 変分法と摂動法を勉強してみれば分かるのでは(?)

12s3037: 
試行関数を決めるためのよい方法はないのですか. M: 12s3011 および 12s3016 参照

12s3038: 
仮に試行関数を無限回近似できるとするなら, そのもっとも良い近似値は $ \displaystyle E_0$ と等しいものとすることができるのか? M: 試行関数を用いて計算されるエネルギーが最小になるような変分パラメータを求めること (微分して〜) は, 無限回の試行錯誤に相当するのでは :-p その結果については, 式 (7.5) の前後の文章をよく読めばいいのでは(?)

12s3039: 
式 (6.56) を解くのに用いる近似法は 摂動論と変分法の 2 つ以外ないのか. また, どちらがより良い近似法なのか. M: もちろんあるだろうが, 系統的に近似を改善したり最良のモノを求めたりできるかは別問題. // 摂動論と変分法での近似の優劣を競っても無意味だと講義で述べたのが伝わっていなくて残念.

12s3040: 
まだ発見されていない原子の軌道を予測し, シュレーディンガー方程式を解くことでその原子の存在の確率などを知ることは出来ますか. M: 意味不明. ``まだ発見されていない原子の軌道'' とは, 何のことか?

12s3041: 
望みの試行関数とは どのように決定されるのですか? どの要素? M: 原書では ``any trial function'' なので ``任意の試行関数'' ということ. すなわち訳文は ``あなたが用いることを望んだいかなる試行関数であっても'' というつもりか. // 12s3011 および 12s3016 参照

12s3042: 
多体問題で核を原点においたが, 核内部の陽子や中性子の振動は考えなくてよいのか. M: 何をやりたいのですか?

12s3043: 
主量子数や角運動量子数, 磁気量子数の他にスピン量子数もあったが, 水素原子ではどのように作用しているのか. M: 20131023 の 12s3047 参照

12s3044: 
水素原子の一つの電子がエネルギー準位が同じの例えば 5 つの 3d 軌道のどの軌道にあるのか知ることはできるのか. M: 私は知りません. 調べて分かったら, 教えてくださいネ.

12s3045: 
多体問題を近似的に解く時に変分法は系の基底エネルギーの上限を与えるとありますが他の方法でも求めることは可能ですか. M: よく用いられる近似法には二つの方法があると講義で述べたし, 教科書にも書いてあるのだが.

12s3046: 
宿題では動径部分に付随する確率密度を考えましたが, ここで角度 ($ \theta$, $ \phi$) も導入して考えた場合, 確率密度のグラフは, どのように表わせばよいのか. M: 唯一絶対の方法はなく, 様々な方法があること. そもそも 4 次元で表現しなければならないこと. などを講義で説明したのに, 伝わっていなくて残念.

12s3047: 
有機化学などでよく見られる sp, sp$ ^2$, sp$ ^3$ 混成軌道では, オービタルはどのようになっているのですか? M: 教科書の §10.1 参照

11s3001: 
変分法の試行関数 $ \phi$ を決定するための決まりや定石はありますか? M: 12s3011 および 12s3016 参照

11s3014: 
軌道は電子の存在確率なのに, 描く際には節面で符号を逆にする必要があるのは何故ですか? M: 誤解だから. 本当に ``軌道は電子の存在確率'' なのか?

11s3015: 
宇宙の元というのはトンネル効果といわれるエネルギーの壁をわずかな確立[原文ママ]で素粒子が偶然通り抜け, 出現したという仮説がありますが, この仮説に矛盾する現象というものはありますか? もし矛盾しないのであれば, それはなぜでしょうか? M: 私は知りません, 調べて分かったら教えてくださいネ // 最後の, 矛盾しない理由を聞く質問の意味が分からない.

11s3022: 
多体問題を近似を用いないで解くことは可能でしょうか? やはりコンピュータ等を用いないと不可能なのでしょうか? M: 完璧な多重の誤解. 多体問題の問題点の内容を理解していないし, 厳密解を得るのにコンピュータを用いる必要があるという考えもオカシイ.

11s3025: 
酸化チタン触媒では, 有機物である細菌を酸化・分解することで殺菌できます. これを医療器具に用いれば, 病気の干染[原文ママ]を防ぐことができると思いますが, 紫外線を含んでいない室内の蛍光灯の光と光触媒で殺菌をすることは可能なのでしょうか. M: 蛍光灯が発光する仕組みは?

11s3026: 
水素の基底状態を求めるとき, 変分法や摂動法以外に求める方法はあるか. M: 普通に厳密解 (解析解) が得られるでしょ :-)

11s3027: 
試行関数の良い近似とは, 何をもって良い近似と言えるのでしょうか. M: 講義で説明したのに, 伝わっていなくて残念. 教科書 p.264 の始めの方をよく読んだか?

11s3028: 
オービタルの形と, 反応における関係性はあるか? M: 例えば, フロンティア軌道論とは, 何か?

11s3031: 
変分法と摂動論はどちらの方がよりすぐれた近似ですか? M: 優れているかどうかの基準は, 何か?

11s3034: 
先週の宿題についてなのですが, 動径関数や波動関数などの複雑な式の正しい形を作図するには具体的にどうすればいいのかわかりません. なにか参考図書とかないでしょうか. M: 別に, 普通にやればいいのでは?

11s3035: 
$ \displaystyle E_\phi = \frac{\int \phi^* \hat{H} \phi \text{d}\tau}{\int \phi^* \phi \text{d}\tau}$ により計算すると $ \displaystyle E_\phi$ は基底状態エネルギー $ \displaystyle E_0$ より大きくなるのは どうしてですか? M: 定義により, 基底状態は最低エネルギーの状態だから. 講義でそういう説明をしたのだが, 伝わらなくて残念.

11s3039: 
他の講義でちょうど摂動論についても学んだのですが, 変分法よりも精度が悪いように感じました. 実際, どちらが多く使われるのですか? M: 必要に応じて, それぞれ適所適材.

11s3044: 
試行関数としてガウス関数が用いられていましたが, その他にはどのような関数が使えるのですか. M: 12s3011 および 12s3016 参照

10s3021: 
3 体問題は一般には解けないということだが, 解ける問題としては何があるのだろうか? M: 12s3019 参照

10s3026: 
近似的に解を求めるとき, 摂動法と変分法どちらを使った方が簡単に解けそうか判断する基準はあるのか? M: 私は知りません. 何か基準を見つけたら教えてくださいネ.

10s3039: 
近似的に解いて厳密解とどのくらい近似すれば最良と言えるか. M: 12s3032 参照

10s3044: 
量子数 m に対して軌道が同じ数であるのは なぜそこまで重要なのか? M: もしも数が異なっていたら, どうなる?

09s3043: 
ヘリウム原子を変分法を用いてエネルギーを求めると 約$ -2.85$ au となり実験値から見積もれるエネルギー $ -2.90$ au よりも高い値をとるのですが どうしてですか? M: 変分原理をよくよく復習する必要がありそう.

07s3042: 
sp3 混成等も実際に物理科学的に軌道を求める事ができるのか? M: 12s3047 参照



Ryo MIYAMOTO, 2013-11-20