プログレス物理化学 II (20121102) M: 以下は宮本のコメント
10s3003: 
NTO の数値データはどのようにして求めたのですか. M: それぞれの分子軌道法によって異なると思いますが, 例えば ``与えられた化学的環境のもとでの動径部のシュレーディンガー方程式の解として, 数値関数 (数表) の形で求める'' だそうです (DV-X$ \alpha$ 法).

10s3008: 
$ \displaystyle \chi_r$ を積分で表わすようなことはしないのですか. // 全部まじめに計算するの「全部」とは具体的に何ですか. M:  $ \displaystyle \chi_r$ は AO ですから, 積分を含むようなものではありませんが? 何を聞きたかったのでしょうか. // その話の項目の題名は, ``分子積分をどうあつかうか?'' でした. 物理化学実験でやった HMO では, $ \displaystyle H_{ii} = \int \chi_i^* \hat{h} \chi_i$   d$ \tau = \alpha$, $ \displaystyle H_{ij} = \int \chi_i^* \hat{h} \chi_j$   d$ \tau = \beta$ (ただし i と j は隣接) などとパラメータにしていました. 後者 $ \displaystyle H_{ij}$ は, 二中心一電子積分ですが, ハートリー-フォック-ローターン (HFR) 法で分子の問題を扱うときには, 最大で四中心二電子積分の $ \displaystyle \iint\chi_a(1)\chi_b(\frac{1}{r_{12}})\chi_c\chi_d$d$ \tau_1$d$ \tau_2$ (a,b,c,d は原子の index) まで出てくる.

10s3010: 
テキスト p.446-447 にあるオービタル指数とは何ですか. またどのような計算で求められるのでしょうか. M: 式 (11.2) やその近辺に書いてある文章の説明を, 読んでいないのでしょうか? p.304 も見てね.

10s3018: 
ファンデルワールスの状態方程式のファンデルワールス定数はどのようにして求められたのですか? これは実験的にではなく, 計算で求められますか? M: vdW の状態方程式は, ``実在気体の状態方程式'' のひとつとして提案されているものでしたね. 具体的な実在気体を記述しているかどうかは, どうやって確かめればいいのでしょう?

10s3020: 
光電子分光法は分子オービタルの研究にも使われるとタイトルにありますが (p.420, (10.4)) 現在分子オービタルの研究をしている化学者は, どんなことに役立てようと研究を進めているのですか? M: 分子の性質 (物性・反応性 他) についての理解・予測. ひいては, 必要な性質を持つ分子の設計, 合成方法の立案, 他. すなわち, 分子 (物質) について, われわれが知りたいことややりたいことの, 全て.

10s3023: 
マッカーリ・サイモンの上巻の式 (11.8) の $ \displaystyle \phi_$1sGF の前の係数はどうやって決めているのでしょうか? M: p.447 の記述では, STO と GF の指数を, 両者の重なり積分が最大になるように決めたと書いてある. GTO が STO の近似ということを考えると, 最も良く合うように決めるのではないか. で, 問題の係数はその次の段階で, ハートリー-フォック法で変分計算によって求めるのではないでしょうか. 正確な詳細については, 成書を参照されたし (サポート web ページに記載の参考書).

10s3026: 
三次元のグラフをかけるソフトでおすすめのものはありますか. M: よく利用しているソフトは, あります. しかしそれが他人にもお薦めかと言われると, 必ずしもそうではない.

10s3028: 
4.33 で $ \displaystyle e^{ikx}$ は右に $ \displaystyle e^{-ikx}$ は左に進む粒子とありますが, なぜ進行方向がわかるんですか. M: ``4.33'' の数字が何を意味するのか, すぐには分かりませんでした. しかし, もしもこれが章末問題の番号を意味しているのであれば, 該当する問題の問題文をじっくり読めば, そこにヒント (答え(?)) が既に書かれているのですけど. いったいそれのどこが分からないのでしょうか?

10s3029: 
分子積分で重要なものと無視するものは どうやって区別するんですか? M: ``重要'' か否かは, 価値判断をともないます. すなわち数学的には決めることができません. そのため, 何を重要と考えるかの違いにより, 各種の分子軌道法が提唱されています. 最も広く用いられたのは, 10s3008 に示した二電子積分などのうちで, 微分重なり $ \chi_a(i)\chi_(i)$d$ \tau_i$ ($ a \neq b$) を含むものがあれば, それをゼロと置く zero differential overlap (ZDO) 近似であり, また $ \chi_a$$ \chi_b$ が異なる原子に属する場合に限って微分重なりを無視する neglect of diatomic differential overlap (NDDO) 近似です.

10s3036: 
固有値方程式の, 「ある関数に演算子を作用させると, その演算子に対応する定数とある関数の積が得られる」という事実をうまくイメージできないのですが, どのように捉えたら良いですか. M: 線形代数として, ベクトルと行列で考えてはいかがでしょうか. $ \mat{A} \vec{x} = \lambda \vec{x}$ ベクトルならば, 有向線分 (矢印) をイメージできるでしょう.

09s3040: 
図 10.12 は 90〜180の範囲の図ですが, 分子の結合角が 90より鋭角になったり, 180より広くなることはないのですか. M: えっと, どれくらい本気ですか? 例えば水分子は, 実は結合角が 180よりも大きくて, 255.5だったのです(!) // 閑話休題, エポキシ環部分の結合角は, 90よりも大きいことはありえないでしょう. また, 配位数が 6 よりも大きな金属錯体 ML$ _n$ ($ n \gt 6$) では, 結合角が 90よりも小さくなる所があるでしょう.



Ryo MIYAMOTO, 2013-01-15