分子構造論 (20100428) M: 以下は宮本のコメント
08s3002: 
分子間力はなぜ起こるのでしょうか ? 電子同士はお互い反発するのに, なぜ分子同士が引き合うのでしょう ? M: はい, 前提に誤りがあるから謎が解決しないんですね. すなわち, 分子は電子だけからできている訳ではない, と. まあ分子間力の具体例として, 極性分子であれば静電気力で引き合っているし, 中性分子間の分散力も結局は瞬間的に誘起された双極子相互作用だし, 何がそんなに問題なのだろうかという気がします.

08s3011: 
核を高速に回転させて, 電子も同じように回転させて, 反発をなくして衝突させるとどうなりますか ? 電子を複数ぶつけたらどうなりますか ? M: ``核 (や電子) を高速に回転させる'' って, どういうことですか ? 核スピンや電子電子スピンとは違う話ですよね. さらに ``反発をなくして'' ってどういうことだろう ? 同符号の電荷を持っていたらクーロン力で反発するのは必定だし. うむぅ, 謎だ.

08s3017: 
分子は, どのくらい大きくなると人間のように意志を持ったりできそうですか ? (例えば, こういう形になりたい, 等) M: これはもう, 分子に聞いてみるしかないのではないでしょうか :-p まあでも, 人間であっても意志を持っているのかどうかわからないような人もいますからねぇ (苦笑).

08s3021: 
今日扱った, $ \rm d^2sp^3$ 混成オービタルの $ \psi_1$ についてです. なぜ, 「対称でない原子オービタルは, 混成に参加しない」という論理が成り立つのか. M: ちょびっと答えるのに困る質問だなあっと. 普通は対称性適応軌道 (symmetry adapted orbital) として点群の規約表現に属するように原子軌道の線形結合を作るけど. でも混成軌道は点群の規約表現に属していなくって, ここではむしろ, それは原子軌道の方だしぃ... と思ってコットンの群論の本を見たら, ちゃんと書いてあるじゃん. 私の誤解でした, スミマセン m(__)m   それによると, 一組の混成軌道 (可約表現の指標) を考え, それを構成するのに必要な原子軌道を探す (規約表現に簡約), という手順だ. なるほどね.

08s3028: 
BeH$ _2$: 直線形, H$ _2$O: 折れ線形 というのは実験的にはどのような方法で求められるのか. M: 色々考えてみてはいかがでしょうか. 固体で結晶が得られる物質であれば, X 線結晶構造解析が, わかりやすそうです (08s3040 参照). もちろんそれ以外にもあり, 分光学的手段では例えば振動スペクトルで分子の対称性が推察できるし (08s3032 のコメント参照) 回転スペクトルからは原子の質量は既知とすれば結合距離 (原子間距離) に関する情報, 他にも原子の動径分布を得る方法がいくつかあります. あ, もちろん, 小さくなって分子の姿を見に行くというのもアリかもしれませんネ :-p

08s3032: 
水, 二酸化炭素の赤外線吸収スペクトルはなぜ 3 つ存在するのだろうか. 水は O-H 結合, 二酸化炭素は C=O 結合しか無いのだから, バネ運動の伸縮以外に励起等の別の要因が考えられるのでしょうか. M: 変角振動を忘れていますヨ. 詳細は教科書 p.555 なのですが, どういう対称性の振動がいくつあるか, という問題を考えるときにも, やっぱり分子の対称性が鍵です. ちなみに, 水分子は非直線形なので基準振動 (振動モード) の数は $ 3 N -6$$ N=3$ とおいて 3 個 (対称伸縮振動, 逆対称伸縮振動, 変角振動), 二酸化炭素は直線形なので $ 3 N - 5$ の 4 個 (対称伸縮振動, 逆対称伸縮振動, 変角振動 (二重縮重)) です.

08s3040: 
水は他の分子とちがって固体になったときの方が密度が小さくなるのはなぜですか ? M: 氷の結晶構造って, 見たこと無いんですか ? 某図録にも載ってますけどぉ ;-) その意味では, 結晶構造から液体または気体状態の分子の結合角を測るわけにはいかないですね (08s3028 参照).

08s3043: 
5 配位型の錯体がころころ形を変えていましたが, メタンなどのように固定されないのですか ? M: どういう文脈の話なのか, 見えません. 化合物によっては, 三方両錐形と四角錐形との間でエネルギー差が小さいために, 容易に構造を変えるものがあるかもしれません. しかし例えば, 比較的リジッドな配位子を用いれば, このような構造変化を抑えることも可能でしょう.

08s3045: 
「フラーレンは非常に対称性がいい分子」といいますが, この対称性というのは, 具体的な指標があるのでしょうか ? また, それはいかにして求まるのですか ? M: フラーレン分子の構造はサッカーボール型または切頭二十面体と表現されて, 対称性は Ih ですね. このように, 分子の対称性について述べるときには, 点群の言葉を使うと, 非常に便利です. んで, 対称性の高低は, むぅ, 対称要素の数でも数えますか.

08s3049: 
H$ _2$O が折れ線形になるという点で VSEPR によって角度が 109.5$ ^\circ$ より小さくなるというのは分かったのですが, 実際の角度である 104.5$ ^\circ$ という値は計算によって求めることはできないのでしょうか. M: まぁ, VSEPR にしても Walsh diagram にしても, 所詮は定性的な議論です. 結合角の定量的な見積もりのためには, きちんと全エネルギーを計算して, それが最小になる構造を求めるという手続きが必要とされるでしょう. そのエネルギーの計算を正しく行うこと自体が, 一筋縄ではいかないのですけれどもね.

07s3032: 
波動関数の二乗が, 粒子の存在する確率と仮定されていますが, これはなぜですか ? ニュートンの法則のように導くことのできない, 基本仮説なのでしょうか. M: 教科書第 4 章をよーく読んで考え, 復習してください. p.87 あたりも参考になるでしょう.



Ryo MIYAMOTO, 2010-05-11