分子構造論 (20100421) M: 以下は宮本のコメント
08s3002: 
粒子が消滅するのはどのようなときですか ? エネルギーが大きすぎると消滅するのでしょうか ? M: 粒子の種類とエネルギーとによるような気が… ただしエネルギーと質量は等価なので ($ E = mc^2$), 質問のように高エネルギーの時に消滅するというわけではないと思う. しかし素粒子など, 高エネルギーで衝突させて, 色々な事が起こるわけで… 詳細は素粒子物理の本でも読んでみてはいかがでしょうか.

08s3011: 
光や X 線は波と量子性がありますが, 量子性があるのに光など X 線などの結晶は存在しないのですか ? それとも作ることは可能ですか ? どのような方法を用いたら可能にできますか ? M: ``光の結晶'' なんて, とっても詩的で何か素敵ですね :-) でも光子は光速度で運動しているので, 捕まえて結晶に固定するのは難しそうですネ. できた結晶も光速度で飛んでいってしまう ?!

08s3017: 
混成軌道の結合角は, 教科書に載っていません. 混成軌道によって, 結合角は固有の値を持ちますか ? 持つなら, 角度から形を推定できたりもできそうですが…. M: 例題 10.4 など, まさに混成の程度 (s 性) を評価することによって, 結合角がわかると言っています !
// [紙幅に余裕があるのでオマケ] 電子常磁性共鳴法 (EPR) では, 電子スピンと核スピンとの相互作用の程度を超微細結合定数 (hyperfine coupling constant) として測定します. これを詳細に解析すると, s 軌道にあるスピンの寄与と p 軌道にあるスピンの寄与とに分けることができます. 即ち, 混成軌道における s 性を見積もることができ, これは分子構造に関する有用な情報となります (!)

08s3021: 
分子オービタルを行列で表現することの, 一番オイシイ点は何ですか. M: 量子力学の表現の一方の雄であるのが ``行列力学'' です. 多数の数値の並びというものを, まとめて一つのベクトルや行列として表現できると, 概念の把握が楽になると思います. そして線形代数という強力なツールを利用できます. そこで解くべき問題は, 線形代数レベルで成分や要素の値を求めることに還元されます. このような行列計算は, 数値計算法の一大分野であって, その成果を存分に活用できます.

08s3032: 
量子化したとき変化が連続的ではなく離散的であることは, 関数が時間と距離について表すとき, 時間が連続的なとき, 量子化している物は瞬間移動できると考えられませんか. M: ミクロな粒子は古典的な意味での軌跡はとらない訳だが, じゃあ瞬間移動しながらぴょんぴょんと移動していくのも, ある種の確定した軌跡と言えるのではないかなぁ. ある瞬間にどこに居て, 次の瞬間にどこに居るかを予言できるのだから.

08s3040: 
もし, 素粒子であるクオークやレプトンを陽子から取り出すことができるとしたら, どのようなことに利用できますか ? M: 利用法について, いくらでも好きなだけ, 自分で新たに開発すれば良いのではないでしょうか ?

08s3043: 
無機で「共有結合と非共有電子対」や「共有結合同士」, 「非共有電子対同士」が互いを遠ざける話がありましたが, これらの遠ざける力が違うのはなぜですか ? M: VSEPR (Valence-Shell Electron Pair Repulsion model, 原子価殻電子対反発モデル)の話ですね. シュライバーの無機化学によると, 基本の修正として, 反発力の大小は次の通りとなっています.

孤立電子対と孤立電子対$\displaystyle >$   孤立電子対と結合領域$\displaystyle >$   結合領域と結合領域    

その理由として, ``初等的な本では, 孤立電子対間の反発が強い理由として, 孤立電子対の方が結合電子対よりも平均して核の近くにあるから, 他の電子対を強く反発するのだろうと説かれているが, 本当の理由ははっきりしない'' と述べています. 正直ですね. 一方, コットン&ウィルキンソンの無機化学では, 非共有電子対は共有電子対よりも空間的に広がっていることから, 反発が大きいと説明しているようです. このあたり, もともと定性的な説明なので, しょうがないのではないでしょうか. マッカーリ&サイモンの物理化学では, 10.3 節で Walsh の相関図を用いて, もう少し定量的な話をしています.

08s3045: 
二種類の成分 A と B の濃度が等しい混合物では, A と B の各々の沸点の他に共沸点が現れるそうです. これは, 各々の沸点より高い「最高共沸点」と, 各々の沸点より低い「最低共沸点」が存在します. これは成分によってどちらかになるそうですが, 何故高いものと低いものの 2 種類があるのでしょうか ? M: ``共沸'' とは, どういう現象ですか ? そのとき分子間の相互作用はどうなっているでしょうか ?

08s3046: 
BeH$ _2$ は直線形の構造を持つが, H$ _2$O は折れ線形の構造を持っているのは, なぜなんでしょうか. M: このあとの 10.2 節 (混成オービタル), 10.3 節 (Walsh の相関図) を参照. 他に VSEPR モデルでも説明可能.

08s3049: 
混成オービタルは誰がどのようなきっかけで発見した (思いついた) のですか ? M: ライナス・ポーリング (Linus Pauling) に聞いてみたらいかがでしょうか ;-)

07s3032: 
粒子が $ 0 \geq x \geq a$ の領域に閉じこめられているとき, $ \displaystyle \int_0^a \psi^*(x)\psi(x) \, dx = 1$ と規格化できますが, x の領域を $ 0 \geq x \geq a/2$ と半分にしたら $ \displaystyle \int_0^\frac{a}{2} \psi^*(x)\psi(x) \, dx = \frac{1}{2}$ と単純に 1/2 倍できますか ? M: 状況が漠然としていてサッパリわかりません. 領域内のポテンシャルはどうなっているのでしょうか. さらに ``半分にする'' とは, どういうことですか ? 粒子の動ける範囲を半分にするのか, 粒子があるかどうか探す領域を半分にするのか ? 前者であれば, 当然, 当該領域内に必ず粒子は存在するので, 波動関数はその範囲内で規格化されなければならない. 一方後者であれば, ポテンシャルに応じた波動関数によって, 粒子の存在確率は求められることになる (必ずしも 1/2 になるとは限らない).



Ryo MIYAMOTO, 2010-05-11