分子構造論 (20100414) M: 以下は宮本のコメント
08s3002: 
異核二原子分子の電子軌道エネルギー準位で, だいたいのものは 1s は 1s と, 2s は 2s, 2p は 2p というように同じ軌道同士が結合しますが, ときどき, 2s は 2p など別の軌道とも結合をつくったりします. 結合するときは 2s と 2p のエネルギー準位が近い値だというのは発見したのですが, 近ければ全てが 2s と 2p で結合をつくるというわけでもないようです. では, どういうときに別の軌道と結合するのですか ? M: まず, この質問文において, 「軌道 (AO) 同士が結合する」という言い方が見られますが, これは「軌道同士が相互作用する」との言い方がふさわしいです. 「二つの軌道 (AO) で結合をつくる」は, まあ良いです. さて, エネルギー準位が近い軌道間で相互作用が大きいことは, よく見つけましたね (パチパチパチ). 例えば一次の摂動波動関数などをイメージするとわかりやすいですが, 補正項の係数にはエネルギー差が分母に含まれます. すなわちエネルギー差が大きくなると, そのような補正項の寄与は小さくなる. また, 仮にエネルギー差が小さくても, 今度は (補正項の係数の分子の) 行列要素が小さければ, そのような寄与は小さいことになります. 量子化学ででてくる色々な行列要素が, ゼロかゼロでないかの判定には, 対称性を考えると容易にできる場合が多くあります.

08s3011: 
光をあてた時, エネルギーが高い電子が励起しますが, エネルギーが低い電子にも少なからず, あたっていると思うのですが, そのエネルギーの低い電子は何も変化はおこらないのですか ? 軌道がかわるとかおこらないのですか ? 電子は区別ができないのに分子軌道エネルギー準位図などでエネルギーが高い低いという表現というか考えはまちがっているのでしょうか ? M: もちろん内殻の電子が励起されることはあります. 教科書のあちこちにある XPS スペクトルなんかは, まさにそれですね. 当てられた光のエネルギーを吸収して状態が変わるかどうかは, ボーアの振動数条件に支配されているだけです. また, エネルギーが高い電子というものは, それは考えることができ, したがってエネルギーが低い電子と区別することは, その時点ではできるかもしれません. しかしそれら二つが衝突でもしたら......

08s3012: 
本日学んだ考え方は, どのような種類の結合にも あてはめられるのですか ? M: できるかどうか, 自分で考えてみればいいんじゃないでしょうか. ちなみに, 他にどのような種類の結合がありましたっけか ?

08s3016: 
エネルギー保存則はとてもミクロな視点でもなりたつのか. M: 時間とエネルギーとの間にも不確定性関係が成り立ちます. 章末問題 1.37 近辺を参照して考えてみてください.

08s3017: 
分子を圧力をかけてつぶすと 分子軌道は変化しますか ? M: 軌道が変化するほど押しつぶせば, そりゃ変化するわナ. 通常, 分子軌道を考えるとき, 分子は自由空間すなわち真空中に孤立しているものとしています. しかし実際には, 溶媒があったり, 外場 (電場や磁場) がかかっていたりするわけで, それによる影響は当然ありますネ.

08s3020: 
[白紙] M: 提出物が要件を満足していません. 残念.

08s3021: 
N と O のイオン化エネルギーの大小ですが, O は電子を 1 つ放出して, 2p オービタルが半閉殻になって安定化するため, O の方が小さいと習ったのですが, これは間違っているのでしょうか. M: 「間違っているかどうか」を問われれば, 現実が正しいとしか言いようがないです. そういう測定値があるなら, それを否定することはできません. もちろんわかって言ってるのだと思いますけど, 講義のときに話したのは一般的な傾向であり, ある種の近似です. 個別に不規則なところは, そりゃあるでしょう.

08s3028: 
AO のエネルギーレベルは何らかの方法で逆転したりすることってありますか. M: 何が正順で何が逆順なのか, 謎ですけど. いずれにしても, 何を測定しているか, どんな仮定に基づいた理論なのか, などで変わってくることでしょう.

08s3030: 
電気陰性度は, 今回の授業でやったようなこと各原子についてして求められたのでしょうか M: ポーリングの定義とマリケンの定義がありますので, それぞれ内容を確認されたらよいと思います.

08s3032: 
今までに実験の器具はどのくらい進化してきたでしょうか. またこの進化は化学界がどの程度貢献したでしょうか. M: 進化の程度, 貢献の程度は, どうやって見積もりますか ? ちなみに「進化」の意味が, 生物学的な本来の意味とは異なる使い方ですね.

08s3034: 
光の粒子性を考えると, 太陽の内部のように, 発せられる光子の量がとても多い空間では, 発せられた光子同士の衝突により, 光が外部に放出されず, 「渋滞」することはないのでしょうか ? M: 光の「衝突」という現象は, 粒子的な現象か波動的な現象か ? 確かに太陽内部で発せられた光は「渋滞」し, 現在表面から放出され我々の眼に見えている光は, その (He 生成の核融合にともなう) 発生時から相当の時間が経過しているとの事です. しかしその「渋滞」の理由は別にあります (太陽は光だけからできている訳ではないので).

08s3040: 
電子は三次元的な運動をしないそうですが, 三次元的でない運動とはどのような運動ですか ? M: そのように主張している人に聞くべきだとは思います. が...... たぶん古典的な意味での運動のことを言ってるんじゃないでしょうか.

08s3043: 
電子密度の話で |CA|2 < |CB|2 というのがありましたが これは量子化学的な電子の存在確率を表しているのですか ? それとも空間的な電子の偏りを表しているのですか ? M: それらの二つの違いがわからないのですけど......

08s3045: 
原子崩壊の計算式と, 一次反応の計算式は形がそっくりなのですが, 原子崩壊は一次反応であると思っていいのでしょうか ? M: 一次反応の本質を何であると見ますか ? その要素を, 原子崩壊も備えているでしょうか ?

08s3046: 
分子の中で励起状態をもたない分子というのは存在するのですか ? M: ``状態 (state)'' とは何か ? いくつあるか ? その中で ``基底状態 (ground state)'' とはどのような状態か ? まあね, そうは言っても, 束縛状態が存在しないものはあるかもしれない. すなわち, 励起すると解離してしまう. また, 励起状態で大きく構造を変えてしまう分子などは, 考えようによっては基底状態とは違う分子とも見れるので, 元の分子にとっては, 励起状態はないことになるかも.

08s3049: 
分子軌道法において, σ結合とπ結合の上下はどのような理由で決まるのですか ? [例として窒素分子のエネルギー順位の図 は省略] M: エネルギー準位を決める要素は, ハミルトニアンに全て記載されているので, まあ計算してみたらそうなったとしか言いようがないかも. でも教科書の図 9.13 のように系統的な変化をしている所を見ると, なにがしかの解釈を試みたい気にさせられますね.

07s3016: 
光電子分光法におけるエネルギー測定で得られた光電子スペクトルのピークが, どの分子オービタルのエネルギーなのかを, どのようにして決定しているのか. M: はい, 帰属はだいじですね. 理論的なエネルギーの計算とかかなぁ.

07s3032: 
原子核との相ゴ作用以外に軌道のエネルギー準位を決める因子はありますか ? M: ハミルトニアンを見よ.



Ryo MIYAMOTO, 2010-04-14