物質理工学演習 BII (2007-01-31)
M: 以下は宮本のコメント
- 05s2001:
- 授業でおっしゃったこと以外に何か学生に望むものはありますか ?
M: いろいろありますが, ひとつの授業で望めることは限られていますから,
とりあえず言ったことだけにしておきます。
- 05s2009:
- 10 回にわたって量子化学分野をやってきたわけですが, はっきり言って
いまいち理解できませんでした。「理解した」と「分かった」とは違うわけですが…。
反復してやっていけば, 「理解した」っという時が訪れるのでしょうか ?
M: 今後何もせずにいては, 「理解した」っという時が訪れることはないと思われます。
99 % の努力をしてはじめて, 1 % のヒラメキを生かせるのですから。
- 05s2015:
- この講義でやった問題はどこの大学院の入試レベル位の問題なのですか。
M: 試験問題を検討していないので, わかりません。
- 05s2017:
- 特になし
M:
- 05s2023:
- この授業は出席点があるのですか ?
M: ふぅ, いまごろこんな質問をするなんて......。
最初の時間にも説明したし, その後の質問答えて何度も書いているように,
シラバスにも「授業態度・レポート・試験などの成績を総合的に判断します。」と
書いてありますヨ。
- 05s2025:
- 後期お疲れさまでした。前回の質問につけ足しです。
次の講義時間がある人とない人で, 差がでてくると思います。
この差というのは, 講義の内容が聞けなかった (チャイムが鳴り外に出たため) という
ことや焦りで集中できなかった等です。
M: 大学では授業が全てではありません。
授業時間中に触れることができることは, 伝えたいこと必要なことのホンの一部です。
したがって, 早めに退出した人が聞き漏らしたことは誤差程度でしょう。
- 05s2028:
- 特にありません。
M:
- 05s2038:
- ある講義で教授が「量子力学とはユニタリ変換である。」(←当ってる
かな?!) という言葉を聞いて, うまいこと言うなあと思ったらしいですが,
教授いわく, 量子力学を勉強した人のみきょうかんできるそうです。
先生もそのことについてどうおもいますか。
また, 先生の印象に残っている格言のようなものがあれば教えて下さい。
M: うんうん, うまいこと言うなあ, と共感します。
類似の言葉で, 量子力学のことを``ヒルベルト空間の線形作用素問題''と表現した
のを見て, やはりうまいこと言うなと思いました。
格言については, 授業中にいくつか言っています。
- 05s2039:
- 相対論と量子論の統合。すなわち統一理論はこの先必ず出てくると思う。
しかし, 果たして統一理論が出た暁には, 次に人は何を求めるようになるのだろうか ?
M: 例え統一理論が完成しても, それだけで種々の物質のバラエティに富んだ物性の
起源を明らかにしたとは言えないでしょう。
ていうか既に, 物性を記述するレベルでは理論はかなりの完成度を持っていますが,
しかしなお私たちは物質の性質や振る舞いを全て明らかにしているわけではない。
- 05s2047:
- アトキンス物理化学には点群の定義を ``少なくとも 1 個の共通の点を
不変に保つような いろいろな操作に対応する対称要素に従って物体を分類する
ことから 点群ができる'' としているんですが, ``少なくとも〜保つような'' の
くだりはどういう意味なんでしょうか。
M: あんまり分かりやすい和訳じゃないね。それはさておき, 例えば
Cn 群の
場合には, 主軸 (
Cn 軸) 上の無数の点は動かずにいます。
しかし例えば
Dn 群の場合には, 動かない点は反転 中心の
ただ一点です。
ところで該当する和文には, 引き続いて ``この種の対称操作は 5 種類ある
(したがって 5 種類の対称要素がある)。結晶を考えるときには ...... 空間群と
いう。'' で, その元々の英文は,
``There are five kinds of symmetry operation (and five kinds of symmetry
element) that leave at least a single point unchanged.
The classification of objects according to symmetry operations that leave
a single common point unchanged gives rise to the point groups.
When we consider crystals ...... are called space groups.'' ですね。
したがってここは, 点群と空間群というものを, それぞれが持つ対称操作 (対称要素)
をあげて比較しつつ併記して紹介している所ですね。
点群では 5 個の対称操作 (恒等操作, 回転軸, 回映軸, 鏡映, 反転の五つ) が
出てきて, 空間群ではさらに並進を伴う対称操作 (具体的には, (単純)並進と
ラセン軸と映進面, また回映軸の代わりに回反軸を使う) が付け加わるということ。
和文はあんまりそんな感じが出ていない (?)。
おまけに (5 個の) 対称操作のそれぞれで, 少なくとも一点が不変であることが
抜けてる。そうでなくちゃ ``a single common point'' と書く意味がない。
- 05s2054:
- [白紙]
M:
- 05s2060:
- 科学は, 定性的だけでなく, 定量的にまで考えてみなければ,
``本当の意味で理解できた''とは言えないのでしょうか。
量子化学について考えていて, そう思いました。
M: 大きさ関係を扱えなければ, ただの言葉遊びになってしまいます。
- 05s2061:
- 四次元は存在するのですか
M: 量子力学は無限次元ヒルベルト空間の線形作用素問題ですから, 当然その中には
四次元も含みますね。また相対論は, 四次元時空間の幾何学と言えますから,
ここでも四次元は存在しますね。
- 05s2063:
- 勉強にかぎらずですが, 理解力を高めるにはどうしたらよいでしょうか ?
M: 一朝一夕には出来そうにない問題ですね。
- 05s2067:
- 先生は着眼点を重要としていますが, ある程度採点側の好みにも
寄る[原文ママ]と思います。
今までで最も興味を持った質問を教えてください。
M: もともとどんな試験問題でも, 採点側の主観に左右される要素はあります。
しかし充分な公正さを確保することは可能だと思いますし,
基本的な科目においては教員の個性によるぶれ幅は結構小さいものです。
- 05s2069:
- 4N+2 則に関して, なぜ π電子が 4N 個だと不安定で 4N+2 個
だと安定なのですか ?
M: これは主として (環状の) 芳香族炭化水素に関しての規則ですね。例えばベンゼンや
シクロペンタジエン (π共役系を仮定) のヒュッケル分子軌道を考えてください。
エネルギー準位はどうなりますか ? 一定のポテンシャルの円環上を走る電子でも
同じですが。
さてできましたか ? では図 1 を参照してください。
π電子が 4N 個である左は縮重している軌道に電子が不完全充填ですが,
4N+2 個である右は完全充填されています。
さらにここで, 縮重した軌道に電子が不完全充填の場合には分子構造が歪んで
対称性が低下することで安定化するという Jahn-Teller 効果というものが
効いてきて, 分子は正方形から歪むと考えられます。
すなわちこれが環状の π共役系 (芳香環) の 4N+2 則が成り立つ理由です。
- 05s2072:
- 量子化学の問題を解く上で重要なのは, 定義を覚えているというより,
定義の意味が大切だということがわかりました。
毎回出される問題も定義に戻って考えれば, 解けない問題はないということですよね ?
M: 意味を説明できてはじめて, ``理解した''と言えるのだと思います。
- 05s2077:
- 今年度の物質理工学演習 BII・量子化学分野で出題された問題 (宿題
として出題された問題) の中で一番難しく設定したもの (あるいは計算が面倒な
問題) はどれですか ?
M: 最も無味乾燥な問題は, ラプラシアンの座標系を変換する問題だと思います。
あの分野で面白い問題を思いつきませんでした。すみません。
- 05s2079:
- 特にありません
M:
- 04s2011:
- 前回の 03s2050 の質問に対する先生のコメントで「ガセだと思われます」
とあるのですが, 何でですか ?
M: あなたは何故ガセじゃないと思うのですか ? どういう原理でワープが行なわれると
考えるのでしょうか ?
まず ``ワープ'' とは物質の超光速移動のことだとして, いいですか ?
これは相対論の基本原理に反しています。
では ``ワープ'' とはこっちの籠から途中の空間を通らないであっちの籠へ
直接移動することなのでしょうか ?
空間をそのように激しく歪ませるには大きな重力が必要で, そのためには大きな
質量または多くのエネルギーが必要とされるのは, 相対論の教えるところです。
現在そういう技術は無いでしょう。
もしあったら, 密かにワープしているどころじゃない大騒ぎになってるはずです。
あるいは量子力学的なトンネル効果を利用しているというのであれば,
ラットの体を構成している (原子・分子レベルでの) 粒子の数は, 1023 の
オーダーの膨大な数であって, これらを全てそろってトンネル効果を起こさせなければ
いけないわけです。
量子力学によれば, 個々の粒子のトンでもなく低い透過確率 p を求めることが
できると思いますが, ラットのトンネル確率はそれの粒子数乗
p1023 ですヨ。
これはもう, アリエネーの世界だと思いますけどね。
Ryo MIYAMOTO, 2007-01-31