物質理工学演習 BII (2007-01-24)
M: 以下は宮本のコメント
- 05s2001:
- ユニタリ変換の C はどこから出てきたのですか ?
M: 対称性適応線形結合 (symmetry-adapted linear combination) を利用した
だけです (コットンの``群論の化学への応用''より)。
本によっては別の用語を使っているかもしれませんが。
まあ今回のものは簡単ですから, 原理を理解していれば, 直観で出来ますよね。
ちなみに, ユニタリ行列なので逆行列はエルミート共役をとったものだし,
さらにうまく作れば, エルミート共役を取ると自分自身になる
;-)
- 05s2009:
- 電子顕微鏡は, 電子の波動性を最もうまく利用した装置ということを
最近, 知りました。レンズに相当するものを作るのが困難そうです。
電子のエネルギーをどんどん高くすると, 付随する波長は次第に短くなるのは
なぜなのでしょうか ?
現在は, どのような技術で, レンズに相当するものを作っているのですか ?
M: ``最もうまく''なのかどうかの評価は置いといて...(笑)。
光学顕微鏡における光束の代わりに電子流を用いているのですから,
その流れを広げたり絞ったりと操作するのは, もちろん磁石です。
運動する荷電粒子に対するローレンツ力はご存知ですよね ?
そして次に, 電子の加速電圧をあげて電子の運動エネルギーを増加させれば......
当然電子の持つ運動量も増加しますよね ?
だって
Ekinetic = p2/2 m
なのですから。
粒子の運動量と物質波の波長の関係は, 量子力学の入門時に出てきた話題ですね。
これらの知識のひとつひとつは, 基本的なことばかりだと思うのですが,
そしてそれらを組み合わせればわかると思うのですが......ダメですか ?
- 05s2015:
- 理系の学生にとって, これは常識として覚えておかないといけない
理論や法則 (例えば相対性理論など) は, 先生は何だと思いますか。
M: ここで例示するなら, 相対性理論じゃなくって``量子力学''でしょう (笑)。
いわゆる文系も含むのならば, 高校の理科 (物理, 化学, 生物, 地学) だと思います。
でもこの中には二十世紀物理の二本柱である相対論と量子論が含まれていないので,
それをも加えておきましょう。
文科省的には``理科基礎, 理科総合A, 及び理科総合B のうちから 1 科目以上''なの
でしょうけど (笑)。
んでっ, この演習の主旨からすると, 個別の知識の暗記よりも論理的な考え方や
持っている知識の使い方や不足している知識の補い方が重要だと答えておきます。
- 05s2017:
- 特になし
M:
- 05s2023:
- 先生はなぜ, 量子化学をけんきゅうしようと思ったのですか ?
M: 量子化学分野の研究をしているのは, 面白そうだったからなんですが......。
ていうか, 量子化学は研究対象ではなくて研究の道具なんですけど。
この様な質問には何度も答えているつもりなのですが, それでも何度もくりかえし
聞かれるということは, 答えに満足してもらえていないということでしょうか。
一体全体どんな答えを期待しているのでしょうか ?
- 05s2025:
- 講義時間の延長についてです。
講義をうけるすべての人が同等に講義をうける権利を有すると思います。
講義時間を延長するということは, この権利を認めていないということに
つながると思います。どうでしょう ?
M: 申し訳ありませんが, 質問の意味するところがわかりません。
何と何とが``同等''だというのでしょうか ?
字面から見ると, A という人と B という人とがある講義を受ける権利を同等に
有しているとの説に思われるのですが,
それと講義時間の延長との関係がわかりません。
それとも, 同じ科目名で複数開講される講義 (時間または担当者が異なる) の間で
同等の内容を教えるべきだとの説でしょうか ?
あるいは A という科目と B という科目とを同等に講義しろということでしょうか
(異なる講義科目を同等に, という意味が分かりませんが) ?
- 05s2028:
- 特にありません。
M:
- 05s2038:
- 今回の黒板の解説で自分も
x = (α - E)/β
と
おいたのですが, プリントのように
-x = (α - E)/β
と
おくメリットは, なんですか。
M: たいていの本がそうなっています。
また過去にこれを勉強した世界中の多くの人たちは後者の表記を用いていると
思われますし, 将来勉強する人たちもそうです。
そこでこれらの人たちと意思疏通するときに, わざわざ異なった表記を用いていると
変換操作をしなくてはならず, 誤解を生じる可能性があります。
では逆に, これらの圧倒的な歴史的な慣習に反して, あなたの独自の表記を
用いることのメリットは何なのでしょうか ?
- 05s2039:
- 最近の問題を解いていて, 良く思う事ですが, 定義や, それによる式が
理解, もしくは分かれば問題を解けるような気がします。つまり, 逆を言えば,
定義が分からなければこの問題は解けないので, 考える以前の前に考える要素が
不十分だと解けないのですが, それがこの演習が難しいと言われる由来だと
思いますがどーですか ?
M: 何度も言ってますが, この演習の第一の目的は``論理的に考えることの訓練''です。
その第一歩として``定義をハッキリ確認しましょう''と私は言っている,
他にも``何が分からないかが分かれば, ほとんど解けたと同じ''とか,
``何を問うかが重要である''などとも私は言っていて,
正にその通りなわけであることを, あなたの記述は示しているわけです。
そういう訳で, 難しいのって私のせいですか ? 誰が何をすればいいのでしょうか ?
というのが正直な感想です。
そして``量子化学の知識を身につける''は優先度の低い目的であって,
それに不足する人がいることは想定して許容していて,
何の定義を使えばいいのかのヒントとしてキーワードを挙げているわけです。
``「教わっていない・習っていない」は知らないことの言い訳にならない''と
言っているにも関わらず。
なんて親切なんだろう (自画自賛
:-p
)。
- 05s2047:
- 特にありません。
M:
- 05s2054:
- ありません
M:
- 05s2060:
- 学内図書館には量子化学の良書はいくつかおさめられていると思い
ますが, 出版年数が何十年も前で古い物が多く見られます。
量子化学のフレッシュな本でおすすめの良書
(和洋問わず) は何かありますか ? [下波線を普通の下線で代用]
M: 古典的な良書はいつまでたっても良書です。
最近の入門書には, 数式を少なくして見せかけを簡単にしているものが多い印象です。
特に, 数理科学と言われるものをきちんと理解するためには数式は必須であって,
省略したがためにかえって論理のつながりが見えずに理解の妨げになることも
あると思っています。
おすすめする良書は, サポート web ページに記載してありますので,
参照してください。
(もしそれらがあなたにとっては良書でないならば, その理由を教えていただければ
今後の参考書の紹介に役だつかもしれません。お願いします。)
- 05s2061:
- 特になし
M:
- 05s2063:
- たとえば, ある 1 つの定義があるとして, この定義の意味は理解
できても, 関連した定義への``つながり'' (関連性と言うのでしょうか ?) が
よくわかりません。どうすればわかるようになるでしょうか ?
M: そういう関連性は, 明示的に全部が教科書に書いてあるわけではありません。
むしろ書いていないわけですが, 個別に列挙して書くことが出来ないとも言える
かもしれません。
現代の科学は, かつての博物学のような個別の事項の羅列ではありません。
科学という学問をそういう風にとらえるのは, 間違っています。
したがって``化学(科学)の専門知識を学ぶ''ということは, 色々な法則の羅列された
リストを片っ端から暗記することではありません。
様々な事項が少数の基本的な法則から導かれ, そして各々の事項が互いに密接に
結び付いていて, 関連づけられています。
そういうつながりを自分のなかで構築することが, ``学問の体系を理解する''こと,
大学で勉強するべきことだと思います。
ちなみに, 大聖堂の煉瓦をひとつづつ積み上げていくようなものなので,
速効性のある修得術は無いと思います。
ひとつひとつ自分で構築していくわけで, それこそが大学で勉強する醍醐味,
専門的なことを学んで身につけていく醍醐味と言えるのではないでしょうか。
- 05s2067:
- 特にありません
M:
- 05s2069:
- 特にありません。
M:
- 05s2072:
- 特にありません。
M:
- 05s2077:
- ``スピン密度''について身のまわりの本で調べてみましたが,
``スピン密度''については書かれていませんでした。
``スピン密度''について書かれた本は少ないのでしょうか ?
M: サポート web ページで紹介している中島先生の本には出ていますよ。
かわりに ``不対電子密度'' の用語で出ているかもしれません。
分子軌道法の入門書をいろいろ見ると, 書いてあると思うんだけどなぁ。
- 05s2079:
- 特にありません。
M:
- 03s2050:
- 真偽は定かではないですが, 米国で 2001 年に, ラットを用いた
ごく短距離 (実験しつれベルでの) でのワープに成功したというのを聞いたことが
あります。その技術は量子の移動を応用したものだと聞きました。
果たしてそんなことが可能なのですか。
M: まず, 例によって, ニュース・ソースは何処ですか ?
次に, そのことについて, あなたはどう考えますか ?
クラークの法則があるので, 安易に将来の可能性までをも否定することはしませんが,
現段階では ガセ だと思われますが......
ちなみに量子状態の超光速伝達には, 実験的に成功しているそうです。
この場合は, 量子のからみ合いを利用して, 一個の原子の``状態''を
送るのだそうです。
Ryo MIYAMOTO, 2007-01-30