物質理工学演習 BII (2006-12-20) M: 以下は宮本のコメント
05s2001: 
「今日の質問」を発表することについて授業の補足をすることについての 発表はいいのですが, 授業と関係のないことも発表するのは控えてくれませんか ? 昼休みの時間がけずられるので, お願いします。 M: 「冷蔵庫の法則」によると, 雑談をしてもしなくても, 必要な時間は少しだけ 足りなくって, すなわち昼休みにズレ込むと。 ていうか, この演習の第一の目的は, 論理的な思考力を身につけることなので, そのための題材は量子化学に限らないと思っています。 また, 目先の利害だけを優先するのも, ちょっとサビシイよね。 せっかく大学に来て勉強してるんだから, 専門を深めるだけじゃなくて, 幅広い教養の涵養が肝要かと思われます。

05s2009: 
量子化学の問題でたびたび「直交していることを示せ」というものが あります。(演算子の直交性や, 球面調和関数の直交性など) これは, どういうことを 表しているのでしょうか ? また, 何か計算する上で便利なのでしょうか ? M: あっ, イイトコ突いているね〜。基礎部分としては, 例えば波動関数の直交性が 異なる固有値を持つことと密接に関係しているし, 基底関数系として用いることで 任意の波動関数を構成する元にしたりということもある。演算子の場合には可換か どうかだけど, これは同時固有関数(同時に不確定さゼロで測定できる物理量か)という 問題に関係している。応用編としては, 例えば今週話をした遷移確率のような積分で, ゼロかゼロでないか(禁制か許容か)に関係している。分子軌道の波動関数に重なりが あれば(すなわち重なり積分がゼロでない, 直交していないならば), 分子内/分子間で 電子やエネルギーが移動することができ, 種々の化学反応が進行するということです。

05s2015: 
相対性理論によって, 宇宙の大きさをはかることができますか。 M: えっと, 今のところそれ以外の測り方は無いと思いますが、っていうか具体的に どうするのかな ? まずは測定対象の``宇宙の大きさ''を定義しないといけませんね ;-p

05s2017: 
特になし M: 

05s2023: 
プリントの問題は, 先生が解いてみても, ちょっと難しいと思ったり するんですか ? M: あんまり難しくはないつもりです。中にはメンドクサイものもあるけど。 まぁ出題者なので, ある程度の解答の方向性や概要は, 初めから想定しています。

05s2025: 
レオナルド・ダヴィンチはある意味科学者だと思うのですが, 先生はどう 思いますか ? あと スレーターの規則が, どういうものかよくわかりませんでした。 教えてくれませんか ?? M: 近代的な科学者とは異なるとは思いますが, 知の巨人だったことは間違いないで しょう。その意味では哲学者・賢人(philosopher; フィロ=好む, ソフィア=知)と 言えると思います。// Slaterの規則は, 例えばEyringの``Quantum Chemistry''の第9章第9k節や, 原田の ``量子化学''の第10章第10.2節に書いてある(水素類似原子に限らない)一般の原子の 原子軌道に対する近似のための規則です。Slaterは動径部分を水素類似原子の 波動関数と似てはいるが節を持たない形 Rnl(r) = N r^{n*-1} exp{-[(Z-s) r]/(n* a0)} を提案しました。 ここでは規格化定数, は水素類似原子の主量子数に対応する定数, は核電荷に対する遮蔽定数でが有効核電荷に相当します。

05s2028: 
今回の質問の(05s2060の質問)解答で``四つの力を統合する''とあったの ですが, ``四つの力''とは何ですか ? M: もちろん``電磁気力'', ``弱い力'', ``強い力'', ``重力''ですけど。 これら以外に物理的な力っていうのは無いと思いますが ...

05s2038: 
講義の中で, 少し映画の話が出ていたのですけれども, 自分はこの 冬休みに本と映画をいっぱい見たいなぁと思っていました。 なので, 先生が``僕たち''におススメする映画を何本かおしえて下さい。 あと, この質問(12/20)の先生のコメントは冬休み中に更しんしてもらえると映画を 見るときの参こうになるのでたすかります。 M: 映画に求めるものは, 人それそれだと思われます。したがって, おススメできる ものはありません。ていうか, この冬の新作の映画って, 何やってるのかも知らな かったりして。あ, ぴあぴあ。

05s2039: 
私たちは分からない(理解できない)事があれば, 理解を助けるために 様々な質問をできるが, 研究職についた人たちは誰に質問をするのか ? 特に専門的なものの第一人者になった時, 単純な計算間違いでも自分で気づくしか ないのだろうか。人間では, プライドという概念も関わってくるのだろうか。 [先々週の自分の質問に返答がきていないのですが....。] M: 初めの時間にも言いましたが, そういうレベルになればこそ, ``何が分からないかが 分かれば, ほとんど解けたと同じ''ということで, 問うことと答えることの差が 無くなってくるのものなのです。よって``どう答えるかよりも, 何を問うかがだいじ'' ということなわけです。 んで, 前の質問には後で答えを考えるつもりでいて, 忘れて書かないままでした。 波動力学と行列力学は等価なので, 場合によって便利な方を使います。 経路積分は, 射影演算子と似てるような気もしますが, ちゃんと勉強していないので わかりません。 はじめて Schrödinger 方程式に出会った時のことは...そんな昔のことは忘れ ちゃいましたが, たぶん五文字で書けない形の方だったので, 両辺のψを共通因子として消すようなことは, しなかったと思います。

05s2047: 
粒子にとって``球''であること, 又``球''を描くことはどういう意味を 持つのでしょうか。 M: どの粒子のことでしょうか, というか量子化学であつかうような量子(電子や光子)は 大きさや形という概念が意識されていないようなのですが... もしかして極座標のことを言っているのなら, 球対称なのはポテンシャルの方で, 原子の電子状態は核によるクーロンポテンシャルがまさに中心力場の問題です。

05s2054: 
特にありません M: 

05s2060: 
大学の教員になる方法はどういったものがあるのでしょうか ? M: 採用されなければなれませんが, 普通の民間企業と異なり毎年定期的に一定数が 募集・採用されるわけではありません。非常に特殊な業界ですね。

05s2061: 
特になし M: 

05s2063: 
先生はレオナルド・ダ・ヴィンチを, どう思いますか ? 私はダヴィンチ・コードの印象が強いので「謎」な人だと思ったのが第一印象でした。 タイムスリップできるならぜひこの年代に行って, ダヴィンチと話をしてみたいです。 M: 05s2025 参照。

05s2067: 
世の中の統計にはいいかげんなものが多すぎます。特にニュースで そういったデータが扱われている時は憤りを感じます。 統計に大切なポイントというのはありますか。 M: いい加減な統計が多いのではなくて, マスコミ報道などで, 見せかけのわかった つもりを優先するがために, 前提条件などの限界を無視して極端に目立つ結論だけを とりあげることが良くないのだと思います。分かりやすさを求めるために, yes/noの 二分法的な思考を求める``思考停止''が最もダメなことです。統計に限らず, 自分の 脳みそで考えることが大切なポイントと思われます。

05s2069: 
量子力学は粒子の挙動を確実に予測することができるとききましたが, 例外などは本当にないのでしょうか。 M: その言明はどういう状況で言われたのでしょうか。不確定性原理との矛盾を感じ ませんでしたか ? でも原子や分子中の電子のエネルギーや遷移エネルギー(分光学的 スペクトル)は, 確定値が求まりますね。どう考えれば良いでしょうね。

05s2072: 
特にありません。 M: 

05s2077: 
先生の学生時代で一番楽しかったことは何ですか ? M: ハードボイルドに``そんな昔のことは忘れた''ということにしておきます。

05s2079: 
前回の質問で「ひらめき」が必要とありますが, それを身につける 具体的な方法はありますか ? やはり問題をたくさん解くことでしょうか ? M: ある決められた手順にしたがって進んでいってたどり着くのとは異なり, 前後の脈略なしに思いつくのが``ひらめき''ですから, 問題をたくさん解くことで 得られる``習熟''とは方向性が違います。そうかといって何もやらないでいては 脳が退化してしまいますから, 何らかの脳を使う行為は必要だと思われます。 まあシャーロック・ホームズも, あて推量はダメだけど, 訓練によって論理的な思考を 一瞬のうちに行うことができるようになると言ってるから, そうなれば外からは ``ひらめき''に見えるかもしれません。 案外``ひらめき''って, そういう非常に短い時間に大量の思考活動を経てたどり着いた 結果だけが頭に残ったものなのかもしれませんね。

04s2011: 
法則や定理に名前がついているものをよく見ますが, 日本人の名前の ついたものをあまり見ないです。これは自分の勉強不足なのか, 日本人は名前を つけたがらなのか[原文ママ], それとも日本人は法則を発見してないのか, どうなんでしょう ? M: そういうものは, 提唱者は, 必要があれば(例えば``(化学)平衡移動の法則''などの ような)内容に応じた名前をつけ, それに対して他人が発見者に敬意を表して人名を 用いた(例えば``ルシャトリエの法則''のような)名前を付けるのだと思います。 日本人の名前がついた法則は, 例えば素粒子物理では``小林-益川理論''などが 最近では有名かと思われますが, 化学では確かにあまり聞きませんね。 あ, 数学の方面では色々ありそうです。



Ryo MIYAMOTO, 2007-01-09