質問と回答 (2002-01-29, M が宮本による回答)
- 00s2004:
- 単原子分子を二原子分子にできないのですか ?
- M:
- ここでの ``できる'' の意味が良くわかりません。二原子分子を形成するよりも
単原子分子でいた方が安定だから, 希ガスの Xe などは単原子分子でいるのでしょう。
しかし Xe でも励起状態にしてやれば, XeCl などの *分子* を形成することが
あります。なおこの XeCl は, エネルギーを失って基底状態に戻れば, ただちに
解離してしまいます。
- 00s2014:
- 人体の中での量子力学的現象にはどのようなものがありますか。
- M:
- 世の中の物質の構成要素である原子・分子が量子論的存在であることを
考えれば, 分子でできている人体も, そこで営まれている多くの生命活動・化学
反応も, 量子論と切り放して考えることはできないと思われます。
- 00s2015:
- 量子化学の分野は, やはり, 有機化学との融合を考慮して勉強しなければ
いけないのですか。有機化学も勉強しないといけないのですか ?
- M:
- 上の 00s2014 での回答も参照してください。福井謙一先生は, 有機化合物の
反応性に関する (量子力学的な) 理論の研究 ``フロンティア軌道理論'' により,
ノーベル化学賞を授与されました。
- 00s2016:
- 波動関数は近似を使って求めていますが, 現在でもその近似の精度を
上げるとか完璧な波動関数を求めるとかということを研究している人はいるのですか ?
- M:
- たぶん居るでしょう。
- 00s2018:
- 原子軌道や分子軌道はどのような力から生じるものですか
- M:
- 軌道の存在論には立ち入らないとして, この物理界を支配するのは四つの力
(電磁気力・弱い相互作用・強い相互作用・重力) であるというのが現在の
標準理論ですね。原子・分子レベルでの物質界を支配するのは, このうちの
電磁気力でしょうか。
- 00s2025:
- 携帯電話で使われていた有機 EL とは, どういうものですか ? 又,
プラズマテレビはどういう仕組みでブラウン管テレビより薄くなっているのですか ?
- M:
- 有機 EL 素子もプラズマディスプレイも共に, 電気エネルギーを与えると
自発的に発光する素子ですね。従って発光セルを小さく薄く作ると共に,
薄い電極と薄い支持基板があれば良さそうです。一方 CRT は, 電子ビームを当てて
蛍光体を発光させているので, ビームが走る空間が必要です。
- 00s2035:
- 植物は特定の波長の光のみで光合成していますが, 太陽電池はどの
波長の光を吸収していますか。またすべての波長の光を吸収する太陽電波 (ママ) は
できますか。
- M:
- 市販の製品に使われている太陽電池は, 黒っぽい色をしていますね。これは
可視光の領域において, すべての色の光をまんべんなく吸収していることを示して
います。太陽光に含まれる紫外線や赤外線を利用している例もあるかもしれません,
調べてみてください。
- 00s2037:
- 高分子の分野においても量子力学はかなり使えるのですか ?
- M:
- ``高分子の分野'' とは対象物質の種類による分類です, 一方 ``量子力学'' は
方法論的な分類です。排他的な概念ではありません。また ``かなり'' というのは
主観的な評価なので, 人により判断はまちまちでしょう。
- 00s2046:
- 常温での核融合は可能でしょうか
- M:
- ミューオン核融合というのがあるそうです。
- 00s2053:
- 電子親和力とイオン化エネルギーの平均が電気陰性度と習ったが,
それでいいのか ?
- M:
- 電気陰性度と言っても, 定義はひとつではありません。Pauling の定義と
Mulliken の定義があるようです。
- 00s2055:
- 先生の研究は, 生活に密着している事ですか ?
- M:
- どのレベルをもって ``密着'' と言いますか ? 市販される製品に使われる
物質・部品を作成するという意味ですか ? それとも, 製品に応用可能という
意味ですか ? 後者のレベルならば, すべての学問がそうだとも言えるのでは ?
- 00s2060:
- 今回の発表の時に, 励起状態から基底状態への遷移の方法が 2 種類
あるところがあったが, 実際に実験をやるとどのくらいのエネルギーが
観測されるのか。
- M:
- ナトリウム原子のスペクトルですね。担当者が調べてきた数値を述べて
いましたが, 16960 cm^{-1} と 16978 cm^{-1} のエネルギーを持った光子が,
オレンジ色の光です。エネルギーの単位として J (ジュール) だけでなく,
光の波長や振動数, 温度, 磁場強度, 電位差などで表現する場合もありますので
慣れておきましょう。
- 00s2069:
- どうやって, 周期表の順番をきめたんですか。
- M:
- 現在一般に用いられている周期表は, 原子番号の順に元素が並んでいるはず
ですが, そういうことを聞いているのではない ?
- 00s2074:
- 電子数が多くなってくると, 原子が不安定になってくるけど,
数が多くなっても安定なままにしておくことができるのか ?
- M:
- その ``不安定になってくる'' とか ``安定なままにしておく'' とはどういう
事ですか ? また, 物質固有の性質であれば, 人為的にどうこうできるものでは
ないと思いますが ?
- 00s2079:
- 水以外でも双極子モーメントを持った分子であれば電子レンジで
温められるのでしょうか。
- M:
- 電子レンジに用いられている電磁波 (マイクロ波) を吸収することができれば
可能でしょう。吸収するための条件のひとつは, 物質 (分子) の持つエネルギー
準位の差が電磁波のエネルギーに等しいことですが。
- 00s2082:
- パウリ原理においてスピンは, 逆平行でなければいけないとなって
いますが, 同じ向きの平行では, だめなのですか。
- M:
- 通常は ``反平行'' というコトバを使うと思います。さて ``原理'' に逆らう
ことはできませんので, 同じ軌道にはいる電子であればスピンは反平行でなければ
いけません。違う軌道であれば, スピンの向きはどちらも可能になります。
- 99s2053:
- 電子レンジで食べ物はきちんと温まるのに, 銀紙を入れると火花が
散るのはどのような現象が起っているのですか ?
- M:
- マイクロ波は電磁波の一種で, 電場の振動を伴っています。導体の近傍で
電場が変化すると, 起電力が誘起されますね (電磁誘導)。生じた高電圧のために,
銀紙のシワの先端などから放電しているのが火花に見えるのでしょう。
- 99s2070:
- 分子軌道法とヒュッケル法とのちがいはなんですか ?
- M:
- 分子軌道法にも近似のレベルによりいろいろな方法があります。
その中でも最も簡単な部類にはいるのが ヒュッケル法 です。
- 99s2082:
-
- M:
- (質問が書いてありません)
- 98s2052:
- 鏡にも可視吸収スペクトルはあるのですか。
- M:
- 日用品の鏡は, ガラス表面 (裏面 ?) に金属 (アルミなど) を蒸着させたもの
ですが, 金属表面を磨いて鏡として利用したと思われる銅鏡などが古代遺跡から
出土していますね。金属表面を磨くと光沢を持ちますが, 物質によってその
色調には差があります。これはすべての波長の光を均等に反射しているのでは
ないことを意味します。
- 98s2059:
- 車のフォグランプは視界の悪いときなどに使いますが, なぜ, 普通の
ライトよりも, 視界がよくみえるのですか ?
- M:
- フォグランプの方が本当によくみえますか ? 私は経験がないのでよく
わかりません。
- 98s2061:
- 無限遠まで電子の現われる確率があるみたいですが, これは光速を
超えるような出方も起りうるのでしょうか。できるのだったら, 通信に使えそう
ですが (確率が操れる様になれば)
- M:
- ``出方'' というのが何を意味しているのかわかりません。
``Einstein-Podolsky-Rosen のパラドックス'' について調べてみましょう。
また, 人為的に操れてしまっては, それは確率現象とは言いませんね。
Ryo MIYAMOTO
平成14年1月29日