超伝導

液体窒素(77K)で冷やされた超伝導物質の上で浮き上がる永久磁石

超伝導は、ある温度(Tc) 以下で電気抵抗が完全に消失してしまう不思議な現象です。 今から20年程前に、銅酸化物高温超伝導体が発見され、Tcは 一気に100 K 程度にまで上昇しました。 しかし、「どうしてそんなに高温で超伝導になるのか?」が分かっていません。 そのしくみを解明し、さらに高いTc(できれば室温)を持つ 超伝導物質の開発を、実験と理論の両面から目指します。

高温超伝導材料と単結晶育成

物質の性質を詳しく調べるためには、水晶のように一つの塊で一つの結晶になっているもの(単結晶と呼びます)が必要です。 高温超伝導物質の場合は、下に示した装置を用いてランプの光を一点に集め原料棒の一部分だけを融かし、全体をゆっくり移動させていくことによってきれいな 単結晶を育てることができます。

赤外線集中加熱単結晶育成装置
単結晶育成の概念図

さて、高温超伝導物質の結晶構造には、必ず銅と酸素から成る平面構造(CuO2面) が含まれています。 一まとまりとなったCuO2面の枚数は、物質によって1枚、 2枚、3枚、・・・と様々ですが、興味深いことにTcはCuO2面 の枚数を増加させるにつれ増加し、CuO2面が3枚のところ で最大値をとることが知られています。 しかし、その理由についてはよく分かっていません。 最近になって私達は、初めて3枚のCuO2面を有するBi2Sr2Ca2Cu3O10(Bi-2223) 相の大型で高品質な単結晶の育成に成功しました(結晶の写真と結晶構造は下図)。

この系列の様々な単結晶を育成し、「なぜ、CuO2面が多層 になるとTcが上昇するのか?」を調べています。

Bi2Sr2Ca2Cu3O10単 結晶
Bi2Sr2Ca2Cu3O10の 結晶構造
渡辺 孝夫
超伝導理論

実験で得られた貴重なデータを元に、上に述べてある銅酸化物高温超伝導体など新しいタイプの超伝導体で発生する興味深い様々な現象の謎を、理論的に解明し ようとしています。 理論の研究では、紙と鉛筆の計算や、パソコンを用いた数値計算が武器です。

また、トポロジーなどの数学が多いに威力を発揮する場合もあります。

トポロジーでは珈琲カップとバウムクーヘンを同じ図形とみなします。 バウムクーヘンをかじってしまうと珈琲カップと同じではなくなりますが、リンゴと同じになります。 こういった図形のとらえ方は、a)超伝導体に磁場をかけると発生する渦や、b)超伝導体の表面に張り付いた不思議な粒子の存在を理解する上で、大変重要に なってきます。

御領 潤