シリコン上の銀薄膜

基板表面処理の影響

今度は基板をゲルマニウムからシリコンに変えてみましょう。さらに、シリコンの表面が水素で覆われている(水素終端表面)か、酸化物で覆われている(酸化表面)かによる違いも見てみましょう。この場合のシリコン基板の温度は室温(約25℃)です。

シリコンは最も多く使われている半導体です。トランジスタ・ICLSI等のほとんどがシリコンで作られていると言ってもいいでしょう。半導体としての性能がいいこと、および地球上に非常に多く存在していることがその理由です。(シリコンは地球上で酸素に次いで二番目に多く存在している元素です。そこら辺にある石ころにも沢山含まれています。)
シリコンは非常に活性なので、その表面はすぐに何か他の元素をくっつけたがります。ですから、邪魔になる変なモノがくっついてしまわないように水素で覆ったり酸化物の薄い膜を表面に作ったりしてガードします。
この表面が水素で覆われているか酸化物の膜があるかの違いを見てみることにします。

まず、銀薄膜の厚さが1 nmの場合を見て下さい。酸化表面ではころころと丸い島状になっているのに対し、水素終端表面では既に島がくっついて迷路の様になっています。酸化表面で銀薄膜の膜厚を4 nmにすると、やっと島同士がくっついて迷路の様になります。
たとえ同じ基板(シリコン)で同じ温度(室温),同じ作り方(真空蒸着法)であっても、こんなにできる薄膜の構造・性質が変わってしまいます。基板表面の処理の仕方によっても、薄膜の構造・性質をコントロールすることができるわけです。


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