質問と答(後半)
今年度(2010年度)は回答に十分な時間が取れなかったので,
昨年度以前のものに今年度の質問の一部を追記したものを掲載します。
同一ではなくとも類似した質問もあるので,参考にして下さい。
[10/07/28]
口頭,メール,出席表での質問のうちの,
いくつかに対する答です。
また,意見で回答が必要と思ったものも
含みます。
実際のやりとりそのままとは限りません。
架空の質問もあるかもしれません。
答えにくいものは多少回答が遅くなることもありますので,
少し待ってみてください。
6月17日の授業から
- [質問]
- 教科書131ページの問4の考え方がよくわかりませんでした。
- [答]
- ある高さでの気圧は,その場所よりも上にある大気の重さだ
ということに注目すればわかると思います。地表での気圧の
50%になる高さでは,大気の半分がその地点と地表との間に,残りの半分が
そこよりも上に存在しています。
- [質問]
- 外気圏の高度はどれくらいまでですか。
- [答]
- 外気圏の上限はおおむね大気圏の上限になりますが,
大気は徐々に希薄になるので正確に決めるのは困難です。
定義により800km〜10000km程度になるようです。
- [質問]
- 熱圏は“熱く”ない,ということは気温は高くないということですか。
- [答]
- 「温度」は,基本的に,個々の気体分子のもつ運動エネルギー(の平均値)により定義されます。
しかし我々が体で感じる「熱さ」は,気体分子の運動エネルギーを直接感じているわけではなく,
気体分子の衝突によって与えられるエネルギーを熱さとして感じていると考えられます。
個々の気体分子の運動エネルギーは多くても,大気が希薄であれば衝突する分子数は少なくなり,
結果として与えられるエネルギーの総量は少なく,「熱くない」ことになります。
- [要望]
- スクリーンの文字を大きくしてほしい。
- [答]
- 全体に大きくすることは物理的に困難です。
見えにくい場合は前の席に来る,という解決方法があります
(今年の場合はかなり空いています)。
なお,一部については参考のための記述で,意図的に字を小さくしています
(ウェブページに掲載されたもので見てもらえればよい,という場合)。
以下は,過去の「質問と答より」
- [質問]
- 熱圏になるとなぜ気温が上昇するのでしょうか。
- [答]
- 熱圏では波長が0.1μm以下の比較的波長の短い紫外線が吸収されています。
波長が0.1μm以下の紫外線のエネルギーはごく弱いのですが,熱圏では大気の量が
少ないので,わずかなエネルギーでも温度が上昇します。
- [質問]
- 期末テストも中間試験のような出題形式と難易度なんですか。
- [答]
- 基本的には同様です。
- [質問]
- ミリバール[mbar]とヘクトパスカル[hPa]はどう違うのでしょうか。
- [答]
- ミリバール[mbar]は,バール[bar]の1000分の1で,ヘクトパスカル[hPa]は,
パスカル[Pa]の100分の1です。バールとパスカルはそれぞれCGS単位系と国際単位系における
圧力の基本単位です。ミリバールとヘクトパスカルを単位とすることで,両者で
表示した気圧の数値が等しくなります。
- [意見]
- トリチェリの実験でわざわざ真空部分を作ってその上の部分の重さを無視しているがそれはなぜでしょうか。
試験管の上の部分の空気は何故関係なくなるのでしょう。
- [答]
- 試験管の上部が真空であるということは,その部分にある水銀には,
試験管のガラスにさえぎられて,空気の重さが加わっていないということです。
「気圧2」のスライド
を参考にして下さい。
- [質問]
- 月面でのトリチェリの実験で,月面では気圧は減少,Hgに働く重力は減,
なので重力を加味すればそんなに水銀も下がらないと考えたのですが,どうでしょうか。
- [答]
- 月面では気圧は0なので,試験管の中と外で水銀の表面に働く圧力はいずれも0になります。
よって重力がいくら小さくても,試験管の中と外の水銀の高さは等しくなります。
- [質問]
- かなり勉強したのにだめでした。記述式試験のコツを教えてください。
- [答]
- テキストのまとまりごとに,そこに書かれている内容を問うような記述式の問題を自分で考えて,
自分で解答を書いてみましょう。本を読むときに,そのようにして自分が内容を理解しているかを
常に自問自答しながら読むようにすれば,内容が本当に理解できているか確認できるはずです。
6月24日の授業から
- [質問]
- 太陽放射エネルギー=太陽定数[kW/m^2]×面積[m^2]なので,太陽放射エネルギーの次元は[kW]なのではないですか。
- [答]
- はい,それはそのとおりです。なお,授業であつかったのは「(地球の)単位表面積あたりの日射エネルギー」で,この場合は太陽定数と同じ次元になります。
- [質問]
- 教科書146ページの図7を見て思ったのですが,ゆっくりボールを投げた場合はたしかに転向力を受けることが考えられるのですが,速いボールを投げた場合でも転向力を受けるのですか。また,受ける場合はどのくらいの速さまで受けるのですか。
- [答]
- 教科書の図や今回やってもらった「実験」の結果を見ると,一見そのような
印象を受けるのですが,実際には転向力は速度に比例して働きます(速度が大きくなるほど大きい)。これらのモデルではその点を誤解しやすいのが欠点です。回転する円盤が十分に大きいとして,
「単位時間当たりどれだけ曲がるか」をイメージすれば理解できるかもしれません。
- [質問]
- 戦争の時,コリオリの力を考慮して銃をうっていた兵士が射ると聞きましたが本当ですか。
- [答]
- 銃の射程距離では無視できる大きさですので,フィクションでしょう。大砲の場合は考慮する必要があり,実際考慮されています。
- [質問]
- コリオリの力は,回転が時計回りになると,軌跡の向きは変わりますか。
- [答]
- 授業時間にやってもらった「コリオリの力の実験」で,逆にして作図してみて下さい。
- [質問]
- 転向力,遠心力,慣性力の関係がよくわかりません。
- [答]
- 転向力と遠心力はともに回転している物体の上で他の物体の運動を
観察する時に見られる見かけの力(慣性力)ですが,両者は独立に働く別の力です。
詳しくは物理学の授業で扱われると思いますが,現象だけ見ても,遠心力は観察される
物体が運動していても静止していても働くのに対して,転向力は運動している物体のみに
働く,また,遠心力は回転軸の反対向きに働くのに対して転向力は運動方向に垂直に
働くという違いがあるので,別な力であることは理解できると思います。
- [質問]
- (大気圏が)紫外線をカットしてくれるのはよく聞きますが,赤外線はどのくらいカットしてどのくらい入ってきてるんですか。
- [答]
- 波長によって異なります。教科書140ページの図1を見て下さい。
Aの線とCの線の差が大気圏での吸収を表します。
この図で波長が0.8μmより長い領域はすべて「赤外線」になります。
- [質問]
- もし北極点に立ったら,目を向けている方向もその真後ろも南ということになるんですか。
- [答]
- 地球上で北極点の方向を北,南極点の方向を南,
北に向かって右と左(あるいは南に向かって左と右)を東と西と定義すれば,
北極点上では南以外の方向は決められなくなりますので,そうなります。
7月1日の授業から
- [質問]
- オホーツク海高気圧,北太平洋洋高気圧とかありますが,
それぞれについての違いを大まかでいいので教えて下さい。
- [答]
- 発生する場所と季節の違いで,それぞれの名称で呼ばれています。
具体的な詳しいことは私もよく知りませんので,興味があったら自分で調べてみて下さい。
- [質問]
- 北海道に梅雨が無いのは,梅雨前線が北海道に来ないからですか。それとも弱ったのが来るからあまり影響しないためですか。
- [答]
- 北海道まで北上する頃には弱くなってしまってはっきりしない,ということのようです。
検索するといろいろと説明が見つかります。
- [質問]
- 死海の塩分はどのくらいなのですか。
- [答]
- 手元の資料(「新版 地学事典」)では,31.5%(すなわち315%%)となっています。
- [質問]
- 地球温暖化と地球寒冷化,影響が大きいのはどっちですか。僕は寒冷化の方が対策がなさそうできついと思います。
- [答]
- 影響はどちらも大きいですが,地球の過去の歴史を見る限りでは,生物全体の活動や
多様性が大きくなるのは温暖期で,逆になるのが寒冷期であるのは確かです。
- [質問]
- 地学の勉強の仕方が,よく分かりません。
- [答]
- ガイダンス時の説明のようにしてみましたか。
それでもだめなら個別に相談に来て下さい。
7月8日の授業から
- [質問]
- 惑星,衛星,(太陽系内)小天体の位置付けの違いは何ですか。
- [答]
- 惑星,太陽系内小天体については,
「惑星」の定義についてを参照して下さい。衛星は大まかに言えば
「惑星,準惑星,小惑星の周りを公転している天体」ですが,
正確な定義はまだ定まっていないようです。
- [質問]
- なぜ地球型惑星は太陽に近い位置に集まっているのでしょうか。
- [答]
- 一般的には「太陽の近くではガスが吹き飛ばされて,岩石の惑星ができ,
太陽から遠いところでは原始惑星がガスをとらえて木星型惑星ができた」(教科書196ページ)
と考えられています。近年太陽系外で惑星を持つ恒星が多数発見されていて,
今後それらの研究から新しい考えが提唱されるかもしれません。
- [質問]
- 授業で使用したプラネタリウムのソフトは何ですか?
- [答]
- 授業で使用したのは,
ステラナビゲーター8です。
私は使用したことはありませんが,フリーのものもいろいろあるようです。
参考リンク
- [質問]
- 教科書には彗星の写真でガスと塵が分かれていると書いてあるのですが,なぜはっきりと色が見えるのですか。
- [答]
- 白く見える尾は,「ダストテイル」とよばれる塵の部分で,青く見えるのは「イオンテイル」と呼ばれる
ガスがイオン化した部分です。イオンテイルの青い色は,有機物の輝線スペクトルによるとされています。
- [質問]
- 北極,南極でフーコー振り子を行なうとどうなりますか。また,赤道上ではどうですか。
- [答]
- 教科書183ページの図2の通りです。極では1日1回転し,赤道上では回転しません。
- [質問]
- 木星,土星のしま模様の正体は何ですか。
- [答]
- 木星型惑星は表面は水素とヘリウムを主成分とする厚い大気に覆われているので,
表面の模様は大気上層の流れを反映しています。地球の場合と同じように緯度方向に
複数の帯に分かれた流れを形成しているので,しま模様に見えると考えられます。
- [質問]
- 月-月,火-火星,水-水星,木-木星,金-金星,土-土星,日-太陽(?)…何か関係あるんですか。
- [答]
- 「七曜」で検索してみて下さい。
- [質問]
- 187ページの円の方の点の書き方がイマイチよく分らなかったです。
- [答]
- トレース紙の地球の位置を,図IIIの地球の1月1日,2月1日,…の位置において,
それぞれの月での火星の「方向」を円周上に記入していきます。
トレース紙の向きが同じになるように動かす(平行移動する)ことに注意して下さい。
7月15日の授業から
- [質問]
- ベガ,アルタイルと地球の距離はどのくらいですか(大体何光年ですか)。
- [答]
- ベガは25光年,アルタイルは17光年とされています(「理科年表」国立天文台編)。
- [質問]
- 天の川とは何ですか。
- [答]
- 月のない晴れた夜に「白い雲の帯のように見える」ものです
(季節と時間によっては高度が低くて見えにくい場合があります)。
実際に見たことがないとイメージしにくいかもしれません。
- [質問]
- 見かけの等級と絶対等級の違いはどういったところなのでしょうか。
- [質問]
- (部末問題4の)(2)は何で10パーセクなんですか。
- [答]
- 絶対等級はその星を10パーセクの距離に
おいたと仮定したときの(見かけの)等級です。
見かけの等級はその星の本来の明るさと距離によって決まります。
距離が大きければ本来明るい星でも見かけの等級は暗くなります。
10パーセクの距離にある星は,見かけの等級と絶対等級が等しくなります。
- [質問]
- 太陽級のスケールの恒星はどのくらいあるんですか。
- [答]
- 「太陽級のスケールの恒星」を,スペクトル型がG型の星とすると,
G型の星の頻度は全体の14%とされている((「理科年表」国立天文台編))ことと,
銀河系内の恒星が約2000億個(教科書223ページ)であることから,
銀河系内に約280億個存在することになります。
7月22日の授業から
- [質問]
- 太陽の265倍の質量の星が発見されたというニュースを見たのですが,
その寿命はどのくらいになりますか。
- [答]
- 7月21日に発表されたようですね。私は授業の翌日(23日)に知りました。
発表もとのサイト(European Souther Observatrory)
によれば,
“Being a little over a million years old, the … star … is already ‘middle-aged’… "
とのことですから,2〜3百万年ということになるでしょうか。
- [質問]
- 散開星団でプレヤデスはおうし座,プレセペはかに座など,
よく聞くような星座は,散開星団を持っているものなのですか。
- [答]
- 固有名を持っている肉眼ではっきりわかる散開星団は,
上記のほかヒヤデス(おうし座),二重星団(ペルセウス座)ぐらいですが,
ペルセウス座以外が「よく聞くような星座」(おそらく黄道十二星座のこと)に
属しているのは,たぶん偶然です。散開星団は天の川(銀河面)に沿って
分布していますが,銀河面と黄道は斜交しているので,黄道十二星座は
かならずしも銀河の近くにあるわけではありません。
なお,肉眼で見えるような近距離の散開星団は天の川
からややはなれて見えることもあります(プレセペの場合)。
- [質問]
- 教科書222ページで,若い恒星のほうが重い元素を多く含むと書いてありますが,
核融合は時間とともに進み,重い元素が生成されていくように思いますが,どうしてでしょう。
- [答]
- 222ページの続く部分にあるように,若い恒星は,種族Iの恒星,すなわち
いったん恒星を形成した物質が爆発などの過程で星間物質となり,その星間物質から
再び誕生した恒星であるためです。宇宙の年齢(教科書では137億年)と恒星の寿命
(太陽質量で100億年,もっと小さい恒星ではより長い)を考えると,
古い恒星は宇宙の初期で,まだ重い元素が含まれていない星間物質から誕生したと
考えられるので,重い元素は少なくなります。
- [質問]
- 水素の分布で,銀河系の外側ではなく内側の形しかわからないのですか。
- [答]
- 227ページの図6にあるように,少なくとも太陽よりも外側の部分
(銀河中心から5万光年)までの
観測結果が示されていますので,そこまではわかります。
水素ガス(や他の星間物質)は円盤部とバルジに集中しているので,
さらに外側のハローでは直接の観測は困難かもしれません。
- [質問]
- 授業中に回って来たライトの表示で[蛍](蛍光灯)と[白](白熱灯)の表示が
逆のような気がするのですが,気のせいですか。
- [答]
- 確認しましたが,2台とも正しく表示されていました。
ただ,質問者を含めて数名は問題の解答も逆になっているのですが,
なぜかはよくわかりません。
- [質問]
- 波長が長いほうにずれる,というのはどういう意味でしょうか。
- [答]
- 天体から出たときには波長の短い光(たとえば波長0.45μmの青い光)が,
観測されるときにはもっと波長の短い光(たとえば波長0.5μmの)緑色の光に
変わっている,ということです。
実際には多くの天体は連続したさまざまな波長の光を出しているので,
全体として波長がずれる結果,本来の色よりも赤みがかった色に観察されることになります。
どのくらいずれているかを測定するためには,特定の暗線のパターンを見つけて
その波長の本来の波長とのずれを測定します。
- [質問]
- 宇宙は膨張しているといいますが,その膨張面の更に外側には一体何があると考えられるのでしょうか。
何もないのですか。
- [質問]
- 高校のときから気になっていたことがあります。
宇宙は膨張しているというけれども,宇宙の外側にはなにがあるんですか??大きくなるには,
そのまわりにそれなりにスペースが必要だと思うのですが…。
いまいち宇宙の膨張についてピンと来ません。
- [答]
- 私も十分に理解しているわけではないのですが,
「原理的に観測不可能なので,考える意味がない」というのがわりと一般的な考え方と思います。
私はそれで納得しています。専門家の方はもう少し別な考えを持っているのかもしれませんが,
詳しいことは知りません。
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